[PD-1-3] ポスター:運動器疾患 1鎖骨骨折患者に対してADOC-Hを使用した作業を基盤とした実践報告
【はじめに】ADOC-H(Aid for Decision-making in Occupation Choice for Hand)は,日常生活の具体的な動作工程のイラストが搭載されており,患側上肢の日常使用の促進を目的としている(Ohno et al. 2016).ADOC-Hは,脳卒中後上肢運動麻痺に対する行動変容に着想を得て開発されているが,橈骨遠位端骨折患者に適応した報告もあり(Ohno et al. 2020),整形外科領域の応用的使用も検討されている.そこで,本報告では鎖骨骨折を呈した患者にADOC-Hを使用したことで,患側上肢の日常使用に関する患者との協業が促進された事例について報告する.発表に際して事例から同意を得ている.
【事例紹介】診断名:左鎖骨骨折,骨盤骨折.70代女性.生活歴:専業主婦で夫と二人暮らし.現病歴:X月Y日交通事故で受傷.Y+1日に理学療法開始.主治医より疼痛に応じて上下肢の運動は可能,生活内は上肢三角巾固定,下肢の荷重はつま先接地のみに制限.Y+13日に作業療法開始.Y+14日よりADOC-Hを導入.Y+18日に回復期病棟転棟.
【初回評価・介入方針】ROM:肩関節自動屈曲50°,外転60°.MMT:肩屈曲2(Poor),外転2(Poor).NRS: 8/10(肩運動時).DASH score38点.病棟生活における患側上肢の使用頻度は極めて少なく,疼痛発生や症状悪化に対する恐怖心が強かったため,ADOC-Hを使用して患側上肢の使用行動の強化を図ることとした.
【作業療法介入経過】第1期(Y+14~20日):患側上肢の使用に過度な不安を抱いていたため,患部の疼痛を発生せずに手指操作のみで容易に遂行可能な「ジャムパックの開封」を療法士から提案した.Y+18日に自ら患側を使用する場面が見られ,Y+20日には「ジャムパックの開封」,「お椀を持つ」が遂行可能となり「安心して使えます」と不安が解消した発言も聞かれた.その後「冷蔵庫のお菓子をとってみたい」と挑戦的な発言も聞かれた.
第2期(Y+21~41日):依然として受傷後未経験の動作は不安が先行しやすい傾向にあったため,ADOC-Hを提示しながら現状の能力から遂行可能と推測された「シャツの袖通し」や「洗顔」,「朝の清拭」を提案した.提案した作業は実際の作業環境で動作確認や動作指導を行い,事例が困難さを感じた動作は反復練習を実施した.Y+34日に三角巾が解除となり患側上肢の使用に関する恐怖心も軽減した.
第3期(Y+42~72日):自宅退院にあたり入浴の自立が必須だったため,ADOC-Hを使用して「洗髪」,「背中を洗う」,「タオルで体を拭く」において患側上肢を使用することを提案したが,恐怖心から病棟スタッフに洗体や洗髪を依頼することが多いことが明らかとなった.そこで,実際に模擬動作の反復練習を実施して,病棟スタッフに実際の作業環境で事例自身の動作遂行を促すことや,安心できる声かけの方法について共有した.Y+47日には入浴時の各動作が遂行可能となった.さらに「食器洗い」,「フライパンを持つ」など退院後に実施する作業についてもADOC-Hのイラスト選択と実際の作業練習を通して確認を行い,Y+72日に自宅退院となった.
【最終評価】ROM:肩関節自動屈曲130°,外転100°.MMT:肩屈曲3(Fair),外転3(Fair).NRS:2/10(肩運動時).DASH score19点.ADOC-Hのイラストを確認しながら,退院後の生活で患側上肢の使用に関する恐怖心や不安の訴えは聞かれなくなった.
【考察】患側上肢の使用に関して不安感が強かった事例に対して,介入早期よりADOC-Hを適応し,特定した作業に基づいた実践を行った結果,患側上肢の使用が促進された.本報告は単一事例報告ではあるものの,ADOC-Hが鎖骨骨折患者の上肢使用の行動変容に有用であることが示唆された.
【事例紹介】診断名:左鎖骨骨折,骨盤骨折.70代女性.生活歴:専業主婦で夫と二人暮らし.現病歴:X月Y日交通事故で受傷.Y+1日に理学療法開始.主治医より疼痛に応じて上下肢の運動は可能,生活内は上肢三角巾固定,下肢の荷重はつま先接地のみに制限.Y+13日に作業療法開始.Y+14日よりADOC-Hを導入.Y+18日に回復期病棟転棟.
【初回評価・介入方針】ROM:肩関節自動屈曲50°,外転60°.MMT:肩屈曲2(Poor),外転2(Poor).NRS: 8/10(肩運動時).DASH score38点.病棟生活における患側上肢の使用頻度は極めて少なく,疼痛発生や症状悪化に対する恐怖心が強かったため,ADOC-Hを使用して患側上肢の使用行動の強化を図ることとした.
【作業療法介入経過】第1期(Y+14~20日):患側上肢の使用に過度な不安を抱いていたため,患部の疼痛を発生せずに手指操作のみで容易に遂行可能な「ジャムパックの開封」を療法士から提案した.Y+18日に自ら患側を使用する場面が見られ,Y+20日には「ジャムパックの開封」,「お椀を持つ」が遂行可能となり「安心して使えます」と不安が解消した発言も聞かれた.その後「冷蔵庫のお菓子をとってみたい」と挑戦的な発言も聞かれた.
第2期(Y+21~41日):依然として受傷後未経験の動作は不安が先行しやすい傾向にあったため,ADOC-Hを提示しながら現状の能力から遂行可能と推測された「シャツの袖通し」や「洗顔」,「朝の清拭」を提案した.提案した作業は実際の作業環境で動作確認や動作指導を行い,事例が困難さを感じた動作は反復練習を実施した.Y+34日に三角巾が解除となり患側上肢の使用に関する恐怖心も軽減した.
第3期(Y+42~72日):自宅退院にあたり入浴の自立が必須だったため,ADOC-Hを使用して「洗髪」,「背中を洗う」,「タオルで体を拭く」において患側上肢を使用することを提案したが,恐怖心から病棟スタッフに洗体や洗髪を依頼することが多いことが明らかとなった.そこで,実際に模擬動作の反復練習を実施して,病棟スタッフに実際の作業環境で事例自身の動作遂行を促すことや,安心できる声かけの方法について共有した.Y+47日には入浴時の各動作が遂行可能となった.さらに「食器洗い」,「フライパンを持つ」など退院後に実施する作業についてもADOC-Hのイラスト選択と実際の作業練習を通して確認を行い,Y+72日に自宅退院となった.
【最終評価】ROM:肩関節自動屈曲130°,外転100°.MMT:肩屈曲3(Fair),外転3(Fair).NRS:2/10(肩運動時).DASH score19点.ADOC-Hのイラストを確認しながら,退院後の生活で患側上肢の使用に関する恐怖心や不安の訴えは聞かれなくなった.
【考察】患側上肢の使用に関して不安感が強かった事例に対して,介入早期よりADOC-Hを適応し,特定した作業に基づいた実践を行った結果,患側上肢の使用が促進された.本報告は単一事例報告ではあるものの,ADOC-Hが鎖骨骨折患者の上肢使用の行動変容に有用であることが示唆された.