第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

運動器疾患

[PD-10] ポスター:運動器疾患 10

2022年9月17日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PD-10-2] ポスター:運動器疾患 10橈骨遠位端骨折術後の外固定期間~関節内骨折と関節外骨折の術後成績について~

長谷川 夏美1加藤 知行3斎藤 和夫2山中 美季1 (1医療法人財団 荻窪病院リハビリテーション室,2東京家政大学健康科学部 リハビリテーション学科,3医療法人財団 荻窪病院 整形外科 手外科センター)

緒言:橈骨遠位端骨折(distal radius fracture :DRF)に対する,掌側ロッキングプレート(volar locking plate : VLP)の固定力は良好で,術後の疼痛の緩和,尺骨茎状突起骨折,三角繊維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex :TFCC)損傷などの合併症がある場合やプレートの固定性に不安のある症例には,短期間の外固定は有効であり,DRF診療ガイドライン2017改定第2版(2017)では,推奨度は2である.しかし外固定期間を検討した論文は少ない.本研究では,VLP術後に対して,関節内骨折と関節外骨折の経過を調査し,今後の外固定期間の資料とすることを目的とした.対象者には,すべて調査の同意を得て,カルテより後方視的に調査した.
対象・方法:2020年7月1日~2020年8月31日の期間内に当院でDRFに対してVLP固定術を施行し,その後ハンドセラピィを実施した20例のうち,術後12週まで経過を追うことができた15例(関節内骨折群11例 関節外骨折群4例)とした.当院のハンドセラピィは,術前から介入し,術翌日より患部外運動より行い,術後2~3週で外固定を外し自動運動開始,術後12週握力練習を実施している.外固定は,術翌日からシュガートングシーネ固定を2週間実施し,その後掌側カックアップスプリントを作業療法士が作製し,外出時や夜間時に装着している.
調査項目は,2群間について,関節可動域(range of motion:ROM)について,手関節掌屈・背屈・橈屈・尺屈,前腕回内・回外を術後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月時点で測定し比較した.また握力健側比,disability of the arm shoulder and hand:DASHの評価を術後3ヶ月,6カ月時点で測定し比較した.
結果:関節内骨折群/関節外骨折群の比較において,術後1ヶ月では,手関節掌屈18.2±11.3°/31.3±7.5°,橈屈5.0±4.1°/12.5±8.7°と有意な差があった(p<0.05).その他の項目では有意差はみられなかった.術後3ヶ月では,握力健側比は, 66.6±21.7% / 74.9±11.4 %(p=0.35),DASHは,19.3±13.5点/15.3±14.9点(p=0.50)と有意差はみられなかった.術後6ヶ月では,92.5±20.2/86.0±20.7%(p=0.61),6.7±6.1/11.7±4.4点(p=0.19)といずれも有意差を認めなかった.
考察:今回の調査では,従来からの報告通り関節外骨折の方が,関節内骨折より術後1ヶ月の手関節掌屈,橈屈のROMに関しては有意に良好であった.しかし,術後2ヶ月,術後3ヶ月のROM,握力やDASHの項目では両群間で有意差はみられなかった.関節外骨折においても疼痛や腫脹が長期間継続した症例もみられた.
VPL術後は,5週間の固定とその後のハンドセラピィを提唱している(Quadlbauer,2020)が,DRFの50%以上は職業を持っているため,早期の職場復帰は重要であるが,運動強度や影響については未だ議論されている(Bruder,2017).当院では,シュガートングシーネ固定後にカックアップスプリントを作製している.カックアップスプリントは,軽量で脱着が容易であるため,自主トレーニングや復職において疼痛コントロールも可能となる.今後は,疼痛がコントロールできている症例に対しては,固定期間を短縮し早期の社会復帰を検討していきたいと考える.