第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

運動器疾患

[PD-2] ポスター:運動器疾患 2

2022年9月16日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PD-2-6] ポスター:運動器疾患 2作業を通した精神機能の安定から離床促進が促せた症例~興味の拡大に向けた関わり~

佐藤 駿伍1 (1蒲田リハビリテーション病院リハビリテーション科)

【はじめに】
今回,度重なる入院により心身ともに疲労を呈し,持続的な活動量の確保が図れず自宅復帰に難渋した症例を担当した.そこでARCSモデルを基に精神機能への関わりを行い,モチベーションの向上を図っていった.結果,モチベーションの向上から離床意欲の拡大が図れ,持続的な活動量の確保から自宅復帰が可能となった為,ここに報告する.
【介入モデル】ARCSモデル
【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に基づき説明と同意を行い,個人情報の取り扱いには配慮した.
【症例紹介】
A氏:90歳代(女性) 診断名:左大腿骨転子部骨折 既往歴:腰椎圧迫骨折,肺結核,アルツハイマー型認知症 家族構成:息子と2人暮らし(土日のみ独居) 主訴:家に帰りたい
【初期評価】
MMSE:25点 連続座位保持時間:約40分 基本動作:起居・移乗中等度介助,移動車椅子全介助FIM:45点(運動:35点,認知:10点)
【経過】
1,知的好奇心・探求心を引き出すための関わり(入院~3週間)
モデル段階:Attention(注意喚起の側面)
A氏の言動:「頑張らないといけないのは分かってるけど,(疲れて)起きれないの」
目標:知識向上から作業課題への意欲増やす 介入:作品の情報提供,1単位で完成できる作品作り
2,作業へのやりがいを実感して頂くための関わり(3週間~1か月半)
モデル段階:Relevance(関連性の側面)
A氏の言動:「起きてみようかな」「お部屋の入口に飾りたいから作り方を教えて下さい」
目標:周辺環境の変化から作業へのやりがい向上 介入:作品の掲示,2単位で完成できる作品作り
3,自己効力感の向上のための関わり(1か月半~2ヵ月)
モデル段階:Confidence(自信の側面)
A氏の言動:「作っているときは座ってる時間を忘れちゃうの」「すごいねって声かけてくれるの」
目標:第3者からの正のFBに伴う自己効力感の向上 介入:2週間程で完成できる作品作り
4,やりがいの拡大を図るための関わり(2ヵ月~退院)
モデル段階:Satisfaction(満足感の側面)
A氏の言動:「疲れてるけど,作りたいから頑張って起きる」「みんなに作って渡したいの」
目標:他者への作品提供から満足感の獲得及び意欲の拡大 介入:2~3週間で完成できる作品作り
【最終評価】
MMSE:27点 連続座位保持時間:約3時間30分 転帰先:自宅 基本動作:起居・移乗見守り,移動シルバーカー見守り FIM:84点(運動:60点,認知:24点)
【考察】
今回,作業療法による意欲・モチベーションの向上の促しが,結果的に入院生活全体の安定化に繋がる可能性が示唆された.受傷により「動きたくても動けない」など心身のギャップから,入院中に意欲が低下する患者は少なくはない.また超高齢化社会とも呼ばれている現在,認知機能障害や抑うつ等を合併し入院する患者の増加も今後予想される.回復期病棟においても,対象者のQOL向上を目的とした精神的観点からの関わりは重要となるため,今後も継続が必要と考える.