[PD-3-3] ポスター:運動器疾患 3脊椎圧迫骨折患者の在院日数長期化に関わる要因
【はじめに】
骨折の発症率は加齢と共に増加し,その好発部位に脊椎圧迫骨折がある.脊椎圧迫骨折は疼痛や身体的な制限を引き起こす.そのために,リハビリテーション(リハ)の進行の遅延やActivity of daily living(ADL)の能力が低下し,在院日数が長期化することも少なくない.長期入院は呼吸不全や院内感染などの合併症,生命予後やQOLに悪影響をもたらすとの報告もある.しかし,脊椎圧迫骨折患者の在院日数長期化に関連する要因の報告は少なく,この関連を明らかにすることは退院支援や在院日数の短縮に役立つと考えられる.
【目的】
本研究は当院回復期リハ病棟にリハ目的で入院した脊椎圧迫骨折患者のうち,在院日数の長期化に関わる要因を検討することを目的とした.
【方法】
本研究は単施設後向き観察研究とした.対象は,2018年7月から2021年5月に回復期リハ病棟に入院した脊椎圧迫骨折患者である.救急搬送となり転院となった者,在院日数が14日に満たない者,データの欠損がある者は除外した.本研究は,当院の倫理審査委員会の承認を受け,オプトアウトを実施した.調査項目は,年齢,性別,治療法(保存,手術),受傷から入院までの日数,入退院時Functional Independence Measure(FIM),入退院時疼痛の有無,個人因子および社会資源情報(受傷前ADL自立の有無,入院中の病棟内移動自立の有無など),在院日数とした.各項目を単変量解析で分析したのちに,重回帰分析を用いて在院日数の長期化に関わる要因を検討した.説明変数の選択は単変量解析でP値が>0.1の項目とした.統計解析はEZRを使用した.
【結果】
研究期間中の脊椎圧迫骨折患者は154名であり,除外基準に該当しなかった122名を本研究の対象とした.平均年齢は83.7±8.0歳,女性97名(79.5%),男性25名(20.5%),保存療法120名(98.4%),手術療法2名(1.6%),受傷から入院までの日数は14.2±16.5日,入院時FIMは55.8±17.8点であった.入院時に疼痛を認めた者は111名(91%)だった.受傷前のADL自立者は71名(58.2%),要介護度認定者は75名(61.5%),入院時点で退院先が未定であった者は14名(11.5%)であった.入院中の病棟内移動自立者は58名(47.5%),退院面談調整回数は6.1±5.0回であった.在院日数は66.5±22.5日,1日あたりの平均リハ量は119.8±21.9分,退院時に疼痛を認めた者は76名(62.3%),退院時FIMは94.5±24.1点だった.在院日数を目的変数とした重回帰分析の結果,受傷から入院までの日数(非標準化係数:-9.181,95%信頼区間:-0.479 to -0.016,P=0.037),入院中の病棟内移動自立(非標準化係数:-9.181,95%信頼区間:-18.141 to -0.222,P=0.045)と在院日数の間に独立した関連性を認めた.
【考察】
脊椎圧迫骨折患者において,受傷から早期に入院した患者は在院日数が長かった.脊椎圧迫骨折後は保存療法が選択され,椎体の変形や偽関節などの予防で安静を要することが多い.さらに,腰部痛の持続や精神的不安から安静期間が延長される場合もある.受傷後の長期安静による心身機能の低下からADL能力低下を引き起こし,在院日数の増加に影響を及ぼした可能性があり,合併症の予防や疼痛コントロールを行なった上での早期治療や精神的支援が必要と考える.また,入院中に病棟内移動が自立していない患者は在院日数が長かった.これは,移動が自立していないことで退院後の継続した支援が必要となり,支援者側の準備や環境設定などの退院調整に遅れが生じた可能性が考えられる.このことから,脊椎圧迫骨折受傷から当院入院までの期間や入院中の移動手段の獲得を意識した計画的な支援が必要かもしれない.
骨折の発症率は加齢と共に増加し,その好発部位に脊椎圧迫骨折がある.脊椎圧迫骨折は疼痛や身体的な制限を引き起こす.そのために,リハビリテーション(リハ)の進行の遅延やActivity of daily living(ADL)の能力が低下し,在院日数が長期化することも少なくない.長期入院は呼吸不全や院内感染などの合併症,生命予後やQOLに悪影響をもたらすとの報告もある.しかし,脊椎圧迫骨折患者の在院日数長期化に関連する要因の報告は少なく,この関連を明らかにすることは退院支援や在院日数の短縮に役立つと考えられる.
【目的】
本研究は当院回復期リハ病棟にリハ目的で入院した脊椎圧迫骨折患者のうち,在院日数の長期化に関わる要因を検討することを目的とした.
【方法】
本研究は単施設後向き観察研究とした.対象は,2018年7月から2021年5月に回復期リハ病棟に入院した脊椎圧迫骨折患者である.救急搬送となり転院となった者,在院日数が14日に満たない者,データの欠損がある者は除外した.本研究は,当院の倫理審査委員会の承認を受け,オプトアウトを実施した.調査項目は,年齢,性別,治療法(保存,手術),受傷から入院までの日数,入退院時Functional Independence Measure(FIM),入退院時疼痛の有無,個人因子および社会資源情報(受傷前ADL自立の有無,入院中の病棟内移動自立の有無など),在院日数とした.各項目を単変量解析で分析したのちに,重回帰分析を用いて在院日数の長期化に関わる要因を検討した.説明変数の選択は単変量解析でP値が>0.1の項目とした.統計解析はEZRを使用した.
【結果】
研究期間中の脊椎圧迫骨折患者は154名であり,除外基準に該当しなかった122名を本研究の対象とした.平均年齢は83.7±8.0歳,女性97名(79.5%),男性25名(20.5%),保存療法120名(98.4%),手術療法2名(1.6%),受傷から入院までの日数は14.2±16.5日,入院時FIMは55.8±17.8点であった.入院時に疼痛を認めた者は111名(91%)だった.受傷前のADL自立者は71名(58.2%),要介護度認定者は75名(61.5%),入院時点で退院先が未定であった者は14名(11.5%)であった.入院中の病棟内移動自立者は58名(47.5%),退院面談調整回数は6.1±5.0回であった.在院日数は66.5±22.5日,1日あたりの平均リハ量は119.8±21.9分,退院時に疼痛を認めた者は76名(62.3%),退院時FIMは94.5±24.1点だった.在院日数を目的変数とした重回帰分析の結果,受傷から入院までの日数(非標準化係数:-9.181,95%信頼区間:-0.479 to -0.016,P=0.037),入院中の病棟内移動自立(非標準化係数:-9.181,95%信頼区間:-18.141 to -0.222,P=0.045)と在院日数の間に独立した関連性を認めた.
【考察】
脊椎圧迫骨折患者において,受傷から早期に入院した患者は在院日数が長かった.脊椎圧迫骨折後は保存療法が選択され,椎体の変形や偽関節などの予防で安静を要することが多い.さらに,腰部痛の持続や精神的不安から安静期間が延長される場合もある.受傷後の長期安静による心身機能の低下からADL能力低下を引き起こし,在院日数の増加に影響を及ぼした可能性があり,合併症の予防や疼痛コントロールを行なった上での早期治療や精神的支援が必要と考える.また,入院中に病棟内移動が自立していない患者は在院日数が長かった.これは,移動が自立していないことで退院後の継続した支援が必要となり,支援者側の準備や環境設定などの退院調整に遅れが生じた可能性が考えられる.このことから,脊椎圧迫骨折受傷から当院入院までの期間や入院中の移動手段の獲得を意識した計画的な支援が必要かもしれない.