第56回日本作業療法学会

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ポスター

運動器疾患

[PD-3] ポスター:運動器疾患 3

Fri. Sep 16, 2022 2:00 PM - 3:00 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PD-3-5] ポスター:運動器疾患 3回復期リハビリテーション病棟から在宅退院後にADL能力が向上する運動器疾患患者の特徴

山浦 卓哉1今井 卓也1小林 壮太1長谷川 智1 (1富岡地域医療企業団 公立七日市病院リハビリテーション部)

【目的】回復期リハビリテーション病棟(リハ病棟)の役割として,退院後の生活を見据えたリハビリテーション(リハ)介入を行うことは重要である.退院後にADL・IADL(ADL)能力が維持に留まることや低下する患者が多いが,一方で退院後にADL能力が向上する患者も臨床上認めており,それらに関わる対象を明らかにすることは入院中の介入に対して必要と考えられるが,現状では報告が不十分である.そこで今回,ADL能力が向上する患者の特徴について,退院後の生活状況の聞き取り調査(アンケート)より得られた結果から明らかにすることとした.
【対象と方法】リハ病棟に運動器疾患の算定にて入院し,令和2年11月から令和3年12月までに在宅へ退院した66名の内,アンケートを実施し入院中のデータに欠如がない58名を対象とした.アンケートは患者または同居家族,担当ケアマネジャーに対して,担当していた作業療法士が電話等で口頭質問にて退院後2週間と3ヶ月の2回実施した.調査項目は,退院時データとして年齢,性別,入院期間,実績指数,退院時FIM,退院時Berg Balance Scale(BBS),退院時MMSE,入院時BBSと退院時BBSの変化量(BBS利得),入院時MMSEと退院時MMSEの変化量(MMSE利得)を収集した.退院後データはアンケート内容として,介護サービス利用や退院後転倒歴,家屋改修について有り/無しの2段階法,退院後の生活状況やADLの様子について自由回答にて収集した.退院時ADLは診療録よりFIMやリハ評価で情報収集し,退院後2週間時および3ヶ月時のADLはアンケート結果より情報収集した.収集した情報から退院時と比較して退院後3ヶ月までの期間においてADL能力が向上した群(向上群),維持もしくは低下した群(非向上群)に群分けした.2群間比較を2標本t検定とMann-Whitney U検定,さらに群間比較における有意差のある項目に対して二項ロジスティック回帰分析を用いた.有意水準は5%とした.本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】向上群26名(年齢77.7±6.7歳,男性6名,女性20名),非向上群32名(年齢81.6±8.2歳,男性7名,女性25名)であり,群間比較の結果,年齢は向上群で有意に低かった.実績指数は向上群64.3±32.5,非向上群57.0±49.7,退院時MMSEは向上群27.6±2.5,非向上群23.9±6.0,BBS利得は向上群23.8±14.6,非向上群11.7±12.1と3つの項目が向上群で有意に高かった.性別,入院期間,退院時FIM,退院時BBS,MMSE利得,介護サービス利用の有無,退院後転倒歴の有無,家屋改修の有無に有意差はなかった.二項ロジスティック回帰分析を行った結果,ADLの向上とBBS利得に関連性が認められた(adjusted odds ratio 1.07, 95% CI 1.02-1.13)が,年齢や退院時MMSE,実績指数には関連性が認められなかった.
【考察】退院後のADLが向上する患者の特徴として,バランス能力向上の程度が大きいことが一つの要因であると示唆された.また,BBSとADLの関連性は強いことが多く報告されていることから,リハ病棟退院後の生活を予測する際に,入院中のADLに関わるバランス能力の経過を含めて多職種で共有する必要もあると考える.本研究の限界は,アンケート結果として患者や家族の主観的なデータを含めて群分けを行っていること,退院後のADL能力の推移の影響因子として併存疾患を考慮していない点である.今後はアンケート項目として客観的なデータを活用することや多面的なデータに基づいて比較し更なる検討が必要である.