[PD-4-4] ポスター:運動器疾患 4小指PIP関節掌側脱臼骨折例に対する作業療法実践
【はじめに】
手指PIP関節掌側脱臼骨折は,背側脱臼骨折と比較して頻度が遥かに少なく,稀な外傷である.保存的治療では整復位を保つことが困難であるため,観血的手術を必要とすることが多い.治療について,内固定法は種々の方法が報告されているが,後療法に関する報告は少ない.今回PIP関節掌側脱臼骨折に対して観血的手術を行われた症例に対して作業療法を行った.結果,良好な治療成績が得られたので報告する.尚,症例には口頭と書面で同意を得た.
【症例情報】
70歳代,女性.右利き.一人暮らし.趣味は卓球.現病歴は,帰宅途中にひったくりに遭い転倒され,左小指PIP関節掌側脱臼骨折を受傷された.受傷7日後に,観血的骨接合術を行われた.
【手術所見】
PIP関節背側に縦切開を加えて皮下を鈍的に展開した.PIP関節は掌側脱臼した状態であり,瘢痕様となった中央索付着部と中央索に付着した骨片が確認できた.脱臼を整復して,1.2mmK鋼線にて関節の一時的固定を行った後,ジャガーノット1.0×2で中央索を骨片ごと中節骨付着部にMason Allen sutureにて縫着した.
【作業療法および経過】
左小指に対しての作業療法は,術後10日より開始した.splintをMP関節屈曲30°PIP関節0°DIP関節0°で,作成・終日装着した.MP関節,DIP関節に対して,他動関節可動域(以下ROM)訓練,深指屈筋腱滑走訓練を行った.術後28日で,K鋼線を抜去され,PIP関節の運動を開始した.掌側組織の癒着予防のために,holding程度の軽度な自動伸展運動,屈筋腱の癒着予防程度の軽負荷での腱滑走訓練から開始した.訓練時以外はPIP関節伸展位でのsplintを着用した.術後56日,夜間splintに変更された.術後63日,自宅退院された.術後70日,外来作業療法開始した.骨癒合が得られたため,高負荷での屈曲運動を開始した.術後160日,訓練を終了した.
【結果】
骨癒合は得られ,関節不安定性は認めなかった.他動関節可動域(以下ROM)(伸展/屈曲)は,MP関節30°/90°PIP関節0°/70°DIP関節0°/80° .自動ROM は, MP関節20°/90°PIP 関節-10°/70°DIP関節0°/70°であった.%Total active motion(%TAM)は,84%であった.Numeric Rating Scale(NRS)は,安静時0,運動時2であった.上肢障害評価表(DASH)は,disability/symptom18,sports50であった.
【考察】
PIP関節掌側脱臼骨折は,20°~ 30°の軽度屈曲位で一側の側副靱帯が損傷し掌側に脱臼するものと,回旋要素がなく中央索付着部の裂離骨折を伴い,PIP関節の背側安定性が損なわれ脱臼するものがある.本症例は後者であったため,脱臼整復後にK鋼線を挿入し関節を安定させるとともに,中央索を縫合した.ここで問題となるのは,PIP関節仮固定中の癒着予防と,仮固定解除後の関節適合性の保持である.屈筋腱の運動容量は伸筋腱の3倍以上であるとされているため,高負荷での屈筋腱の滑走は,適合性の保持を困難にする可能性がある.そこで,軽負荷での腱滑走を行うとともに,訓練時以外は伸展位splintを着用した.結果,PIP関節屈曲70°を得られ,full gripが可能になり,満足度は高かった.今回の症例では,術後早期からの癒着予防訓練と,関節適合性の保持に留意したsplintの着用・ROM訓練により良好な治療成績が得られたと考えられる.
手指PIP関節掌側脱臼骨折は,背側脱臼骨折と比較して頻度が遥かに少なく,稀な外傷である.保存的治療では整復位を保つことが困難であるため,観血的手術を必要とすることが多い.治療について,内固定法は種々の方法が報告されているが,後療法に関する報告は少ない.今回PIP関節掌側脱臼骨折に対して観血的手術を行われた症例に対して作業療法を行った.結果,良好な治療成績が得られたので報告する.尚,症例には口頭と書面で同意を得た.
【症例情報】
70歳代,女性.右利き.一人暮らし.趣味は卓球.現病歴は,帰宅途中にひったくりに遭い転倒され,左小指PIP関節掌側脱臼骨折を受傷された.受傷7日後に,観血的骨接合術を行われた.
【手術所見】
PIP関節背側に縦切開を加えて皮下を鈍的に展開した.PIP関節は掌側脱臼した状態であり,瘢痕様となった中央索付着部と中央索に付着した骨片が確認できた.脱臼を整復して,1.2mmK鋼線にて関節の一時的固定を行った後,ジャガーノット1.0×2で中央索を骨片ごと中節骨付着部にMason Allen sutureにて縫着した.
【作業療法および経過】
左小指に対しての作業療法は,術後10日より開始した.splintをMP関節屈曲30°PIP関節0°DIP関節0°で,作成・終日装着した.MP関節,DIP関節に対して,他動関節可動域(以下ROM)訓練,深指屈筋腱滑走訓練を行った.術後28日で,K鋼線を抜去され,PIP関節の運動を開始した.掌側組織の癒着予防のために,holding程度の軽度な自動伸展運動,屈筋腱の癒着予防程度の軽負荷での腱滑走訓練から開始した.訓練時以外はPIP関節伸展位でのsplintを着用した.術後56日,夜間splintに変更された.術後63日,自宅退院された.術後70日,外来作業療法開始した.骨癒合が得られたため,高負荷での屈曲運動を開始した.術後160日,訓練を終了した.
【結果】
骨癒合は得られ,関節不安定性は認めなかった.他動関節可動域(以下ROM)(伸展/屈曲)は,MP関節30°/90°PIP関節0°/70°DIP関節0°/80° .自動ROM は, MP関節20°/90°PIP 関節-10°/70°DIP関節0°/70°であった.%Total active motion(%TAM)は,84%であった.Numeric Rating Scale(NRS)は,安静時0,運動時2であった.上肢障害評価表(DASH)は,disability/symptom18,sports50であった.
【考察】
PIP関節掌側脱臼骨折は,20°~ 30°の軽度屈曲位で一側の側副靱帯が損傷し掌側に脱臼するものと,回旋要素がなく中央索付着部の裂離骨折を伴い,PIP関節の背側安定性が損なわれ脱臼するものがある.本症例は後者であったため,脱臼整復後にK鋼線を挿入し関節を安定させるとともに,中央索を縫合した.ここで問題となるのは,PIP関節仮固定中の癒着予防と,仮固定解除後の関節適合性の保持である.屈筋腱の運動容量は伸筋腱の3倍以上であるとされているため,高負荷での屈筋腱の滑走は,適合性の保持を困難にする可能性がある.そこで,軽負荷での腱滑走を行うとともに,訓練時以外は伸展位splintを着用した.結果,PIP関節屈曲70°を得られ,full gripが可能になり,満足度は高かった.今回の症例では,術後早期からの癒着予防訓練と,関節適合性の保持に留意したsplintの着用・ROM訓練により良好な治療成績が得られたと考えられる.