[PD-5-3] ポスター:運動器疾患 5Virtual Realityを用いた筋電義手操作プログラムの開発~筋電位情報を付加した運動観察の効果~
【はじめに】
筋電義手は,手関節屈筋群と伸筋群の筋収縮時の筋電位を用いてハンドを開閉する義手であり,近年,外観や機能面の向上から上肢切断者からのニーズは高まっている.しかしながら,筋電義手操作時の屈筋群と伸筋群の交互収縮やハンドの開閉速度の調整は,難易度が高く,操作獲得に長期間を要すことが,利用拡大を阻む一つの要因となっている.
我々はこれまで,能動義手の操作獲得の期間短縮を目的に,熟練者の操作場面を観察しながら心的に運動をイメージする運動観察が能動義手操作に与える影響を検討してきた.その結果,運動観察にVirtual Reality(VR)を用いることで,観察時の没入感を高め,即時的な効果として操作獲得を促進することを明らかにした.そこで,本研究では,筋電義手を用いて,VRによる没入体験に加え,VR空間上に操作時の筋電位を視覚提示することで,操作獲得がより促進されるのではないかと考えた.
本研究の目的は,VRを用いた運動観察時の筋電位の提示が筋電義手操作に与える影響を検討すること.さらには,VRを用いた運動観察による学習の持続効果を明らかにすることとした.
【対象と方法】
対象は,健常成人24名(平均年齢24.5±4.5歳,男女12名ずつ)とした.研究は,本学倫理委員会の承認(承認番号:21-001)を得て行い,対象者に紙面にて説明し,同意を得た.
課題は,利き手での模擬筋電義手(以下,義手)操作とし,対象者を8名ずつ動画の提示方法の異なる3条件に分類した.3条件は,①VREMG〔義手操作時の筋電位提示を加えたVR動画の観察〕,②VR〔義手操作時の筋電位提示なしのVR動画観察〕,③Control〔実験室風景(義手操作なし)のVR動画観察〕とした.筋電位提示にはOttobock社製のMyoboy®,VRにはLenovo社製のMirage Soloを用いた.①と②の対象者は,義手熟練者が実施する把持力調整課題(スポンジ課題)と両手協調課題(紐結び課題)の動画を2回のセッションで各10分間観察しながらイメージを行った.
義手操作の評価は,スポンジ課題と紐結び課題で行い,所要時間と誤操作数を測定した.各評価は,介入前・1回目介入後・2回目介入後・介入終了後1週間の計4回実施した.また,動画観察時の没入感をVisual analog scale (VAS) を用いて評価した.
統計解析は,課題の所要時間の変化率,誤操作数,没入感において,条件と時間を要因とする二元配置分散分析を行い,事後検定はHolm法による多重比較検定を行った (p<.05) .
【結果】
スポンジ課題の所要時間は,条件・時間ともに有意な主効果を認めた.事後検定では,VREMGとVR間には有意差を認めなかったが,介入終了後1週間の変化率が,Controlに比べVREMG (p<.05, d=1.32) とVR (p<.01, d=2.34) が有意に大きかった.紐結び課題の所要時間,各課題の誤操作数は,主効果を認めなかった.没入感は,条件・時間ともに有意な主効果を認め,事後検定では,ControlよりVREMG (p<.001, d=2.39) とVR (p<.001, d=2.49)が有意に高かった.
【考察】
本研究の結果,運動観察時の筋電位提示の有無は義手操作の学習に影響を与えなかった.しかしながら,VR(VREMG・VR)を用いた運動観察は,義手操作学習の持続効果があることが明らかとなった.以上より,運動観察時の筋電位の提示には,提示方法の工夫など,今後の検討が必要であるが,VRを用いた運動観察は,一度学習した義手操作能力を維持出来る可能性があり,今後の筋電義手操作訓練に利用できる可能性が示唆された.
筋電義手は,手関節屈筋群と伸筋群の筋収縮時の筋電位を用いてハンドを開閉する義手であり,近年,外観や機能面の向上から上肢切断者からのニーズは高まっている.しかしながら,筋電義手操作時の屈筋群と伸筋群の交互収縮やハンドの開閉速度の調整は,難易度が高く,操作獲得に長期間を要すことが,利用拡大を阻む一つの要因となっている.
我々はこれまで,能動義手の操作獲得の期間短縮を目的に,熟練者の操作場面を観察しながら心的に運動をイメージする運動観察が能動義手操作に与える影響を検討してきた.その結果,運動観察にVirtual Reality(VR)を用いることで,観察時の没入感を高め,即時的な効果として操作獲得を促進することを明らかにした.そこで,本研究では,筋電義手を用いて,VRによる没入体験に加え,VR空間上に操作時の筋電位を視覚提示することで,操作獲得がより促進されるのではないかと考えた.
本研究の目的は,VRを用いた運動観察時の筋電位の提示が筋電義手操作に与える影響を検討すること.さらには,VRを用いた運動観察による学習の持続効果を明らかにすることとした.
【対象と方法】
対象は,健常成人24名(平均年齢24.5±4.5歳,男女12名ずつ)とした.研究は,本学倫理委員会の承認(承認番号:21-001)を得て行い,対象者に紙面にて説明し,同意を得た.
課題は,利き手での模擬筋電義手(以下,義手)操作とし,対象者を8名ずつ動画の提示方法の異なる3条件に分類した.3条件は,①VREMG〔義手操作時の筋電位提示を加えたVR動画の観察〕,②VR〔義手操作時の筋電位提示なしのVR動画観察〕,③Control〔実験室風景(義手操作なし)のVR動画観察〕とした.筋電位提示にはOttobock社製のMyoboy®,VRにはLenovo社製のMirage Soloを用いた.①と②の対象者は,義手熟練者が実施する把持力調整課題(スポンジ課題)と両手協調課題(紐結び課題)の動画を2回のセッションで各10分間観察しながらイメージを行った.
義手操作の評価は,スポンジ課題と紐結び課題で行い,所要時間と誤操作数を測定した.各評価は,介入前・1回目介入後・2回目介入後・介入終了後1週間の計4回実施した.また,動画観察時の没入感をVisual analog scale (VAS) を用いて評価した.
統計解析は,課題の所要時間の変化率,誤操作数,没入感において,条件と時間を要因とする二元配置分散分析を行い,事後検定はHolm法による多重比較検定を行った (p<.05) .
【結果】
スポンジ課題の所要時間は,条件・時間ともに有意な主効果を認めた.事後検定では,VREMGとVR間には有意差を認めなかったが,介入終了後1週間の変化率が,Controlに比べVREMG (p<.05, d=1.32) とVR (p<.01, d=2.34) が有意に大きかった.紐結び課題の所要時間,各課題の誤操作数は,主効果を認めなかった.没入感は,条件・時間ともに有意な主効果を認め,事後検定では,ControlよりVREMG (p<.001, d=2.39) とVR (p<.001, d=2.49)が有意に高かった.
【考察】
本研究の結果,運動観察時の筋電位提示の有無は義手操作の学習に影響を与えなかった.しかしながら,VR(VREMG・VR)を用いた運動観察は,義手操作学習の持続効果があることが明らかとなった.以上より,運動観察時の筋電位の提示には,提示方法の工夫など,今後の検討が必要であるが,VRを用いた運動観察は,一度学習した義手操作能力を維持出来る可能性があり,今後の筋電義手操作訓練に利用できる可能性が示唆された.