[PD-5-4] ポスター:運動器疾患 5肩腱板修復術後患者に対してHand20を使用しての検討
【はじめに】
肩関節疾患において,患者立脚型評価としてSholder36や上肢障害評価のDASH,Quick DASH(以下qDASH)を用いた報告が多く散見する.当院では,肩腱板修復術後患者に対して,qDASHとHand20(以下H20)を患者満足度の視点から施行している.H20は手関節や手指の疾患に対しての報告は多くあるが,肩関節疾患での報告は散見できない.上肢動作において肩関節は手関節や手指を安定的に使用する為の土台であり,肩関節の状態によって影響を受ける事はあきらかである事や評価項目が具体的である事が臨床場面での治療プログラムの一助となる.今回は治療成績と患者立脚型評価2種類の関係性と性別間での差異について調査したので報告する.
【対象】
当院で肩腱板修復術を施行した45件47肩で,平均年齢63.4±8.7歳,男性26肩,女性21肩,内訳は小断裂8肩(男性4 女性4),中断裂30肩(男性15 女性15),大断裂7肩(男性5 女性2),広範囲断裂2肩(男性2).術式は一次修復40肩,パッチ縫合2肩,大胸筋移行術2肩,上方関節包再建術2肩,大胸筋移行術+上方関節包再建術1肩である.全例ともに16~18週まで作業療法(以下OT)を施行し,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下JOA score),qDASHの Disability/symptom(以下DS),H20を追跡調査できた症例である.期間は2015年3月~2021年3月である.対象者には今発表の同意を得ており,当院倫理委員会の承諾と対象者には同意を得ている.尚開示すべきCOI関係にある企業はない .
【方法】
術前の評価・装具仮合わせ時と術後16週にJOA score,DS,H20の各評価を実施した.統計学手法としてSpearmanの順位相関係数,2群間をMann-WhitneyのU検定を実施し,有意水準は5%とした.
【OT経過】
術直後から外転装具を装着し術後プロトコールに沿って各週で外転角度を降下させながら,他動運動,自動介助運動,自動運動とADLでの指導を実施した.また8週過ぎから抵抗運動の関節可動域訓練と筋力訓練及びADL訓練をすすめた.大胸筋移行術と術中所見で筋退縮が強い症例は装具降下時期と運動時期を1~2週遅らせて行った.自動介助運動開始時から食事等一部ADLでの上肢使用を追加し,自動運動開始時から肩甲帯周囲筋群の運動と腱板機能訓練を追加し,ADLでの上肢使用範囲の拡大と挙上肢位での自主訓練も実施した.
【結果】
1)術前後での比較は,JOA score(術前/最終)全体65.4±14.3/83.2±15.3,男性69.4±14.0/83.0±19.0,女性60.5±13.3/85.7±9.0. DS全体41.7±26.3/15.1±14.0,男性35.8±28.0/13.1±14.6,女性49.1±22.5/17.4±13.1. H20全体40.8±26.9/11.1±10.9,男性36.5±28.9±/8.0±9.8,女性46.2±23.8/14.9±11.3でった.各評価において全て有意な差を認めた(p<0.01).2)評価間での比較は,JOAとDS・H20の各評価で負の相関(DS:r= -0.61・H20:r=-0.48 p<0.01),DSとH20に正の相関を認めた(r=0.73 p<0.01).最終JOAとDSは男女間に有意な差を認めなかったが,H20において有意な差を認めた(p<0.01).
【考察】
患者立脚型評価のDSとH20において,相関関係を認める事から,H20は肩腱板修復術後患者の評価としてDSと同様に使用可能であると考える.しかし,男女間においては,DSは有意差を認めなかったが,H20においては有意差を認めた.これは,男性が女性より大断裂や広範囲断裂が多い事と,H20はより評価項目が多く具体的で,点数を細かく評価する事から,差が生じたと考える.今後断裂程度の群での対象者を増やし,断裂程度と術式との関係を検討していく予定である.
肩関節疾患において,患者立脚型評価としてSholder36や上肢障害評価のDASH,Quick DASH(以下qDASH)を用いた報告が多く散見する.当院では,肩腱板修復術後患者に対して,qDASHとHand20(以下H20)を患者満足度の視点から施行している.H20は手関節や手指の疾患に対しての報告は多くあるが,肩関節疾患での報告は散見できない.上肢動作において肩関節は手関節や手指を安定的に使用する為の土台であり,肩関節の状態によって影響を受ける事はあきらかである事や評価項目が具体的である事が臨床場面での治療プログラムの一助となる.今回は治療成績と患者立脚型評価2種類の関係性と性別間での差異について調査したので報告する.
【対象】
当院で肩腱板修復術を施行した45件47肩で,平均年齢63.4±8.7歳,男性26肩,女性21肩,内訳は小断裂8肩(男性4 女性4),中断裂30肩(男性15 女性15),大断裂7肩(男性5 女性2),広範囲断裂2肩(男性2).術式は一次修復40肩,パッチ縫合2肩,大胸筋移行術2肩,上方関節包再建術2肩,大胸筋移行術+上方関節包再建術1肩である.全例ともに16~18週まで作業療法(以下OT)を施行し,日本整形外科学会肩関節疾患治療成績判定基準(以下JOA score),qDASHの Disability/symptom(以下DS),H20を追跡調査できた症例である.期間は2015年3月~2021年3月である.対象者には今発表の同意を得ており,当院倫理委員会の承諾と対象者には同意を得ている.尚開示すべきCOI関係にある企業はない .
【方法】
術前の評価・装具仮合わせ時と術後16週にJOA score,DS,H20の各評価を実施した.統計学手法としてSpearmanの順位相関係数,2群間をMann-WhitneyのU検定を実施し,有意水準は5%とした.
【OT経過】
術直後から外転装具を装着し術後プロトコールに沿って各週で外転角度を降下させながら,他動運動,自動介助運動,自動運動とADLでの指導を実施した.また8週過ぎから抵抗運動の関節可動域訓練と筋力訓練及びADL訓練をすすめた.大胸筋移行術と術中所見で筋退縮が強い症例は装具降下時期と運動時期を1~2週遅らせて行った.自動介助運動開始時から食事等一部ADLでの上肢使用を追加し,自動運動開始時から肩甲帯周囲筋群の運動と腱板機能訓練を追加し,ADLでの上肢使用範囲の拡大と挙上肢位での自主訓練も実施した.
【結果】
1)術前後での比較は,JOA score(術前/最終)全体65.4±14.3/83.2±15.3,男性69.4±14.0/83.0±19.0,女性60.5±13.3/85.7±9.0. DS全体41.7±26.3/15.1±14.0,男性35.8±28.0/13.1±14.6,女性49.1±22.5/17.4±13.1. H20全体40.8±26.9/11.1±10.9,男性36.5±28.9±/8.0±9.8,女性46.2±23.8/14.9±11.3でった.各評価において全て有意な差を認めた(p<0.01).2)評価間での比較は,JOAとDS・H20の各評価で負の相関(DS:r= -0.61・H20:r=-0.48 p<0.01),DSとH20に正の相関を認めた(r=0.73 p<0.01).最終JOAとDSは男女間に有意な差を認めなかったが,H20において有意な差を認めた(p<0.01).
【考察】
患者立脚型評価のDSとH20において,相関関係を認める事から,H20は肩腱板修復術後患者の評価としてDSと同様に使用可能であると考える.しかし,男女間においては,DSは有意差を認めなかったが,H20においては有意差を認めた.これは,男性が女性より大断裂や広範囲断裂が多い事と,H20はより評価項目が多く具体的で,点数を細かく評価する事から,差が生じたと考える.今後断裂程度の群での対象者を増やし,断裂程度と術式との関係を検討していく予定である.