第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

運動器疾患

[PD-6] ポスター:運動器疾患 6

2022年9月17日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PD-6-1] ポスター:運動器疾患 6腰椎圧迫骨折後の腰背部痛が遷延し難渋した一例~鎮痛薬と抗うつ薬~

佐藤 有眞1 (1新生会病院リハビリテーション科)

【はじめに】
圧迫骨折の多発は慢性疼痛を生じ高齢者の日常生活動作,生活の質を障害する.また高齢者の腰背部痛は慢性疼痛の要因は必ずしも骨折や骨変形によるものだけでなく精神状態にも左右されるため,鎮痛薬による疼痛管理だけでなくうつ状態や生活環境にも配慮したアプローチが求められる.今回身体機能訓練に加え疼痛管理の方法として抗鬱薬の有効を示唆する一例を経験したため報告する.
【症例紹介】
70代女性,夫と二人暮らし.要介護1.20XX年Y月Z日早朝.洗顔中に腰背部痛出現.翌日当院受診.XpにてL2.3椎体骨折の診断.病前は,屋外内ともに独歩・ADL自立.IADLは夫が主に実施.デイサービス週2回.
服薬は,ノイロトロピン錠4単位2/1d,(Z+54日)スルピリド50㎎1/1d,(Z+70日)
【作業療法評価】
Z+1日より作業療法開始.疼痛:Numeric Rating Scale(以下NRS):安静時:8/10,運動時:9/10,四肢MMT4レベル,6MD:155m,Physiorogical Cost Index(以下PCI),0.31 MMSE:22/30点,HDSR:20/30点.不安・抑うつの尺度(以下HADS):14/56点.基本動作は起き上がり,移乗に介助を要した.ADLはFIM:51/126点,腰背部痛により,入浴,更衣に介助を要している状態であった.
【経過】
Z+1~50日まで疼痛の訴えも減少し,基本動作やADL動作も見守り~自立レベルまで改善していた.FIM:111/126点の改善まで至っていた.Z+51日より,腰背部痛が増強し,腰部MRIでは,腰椎軽度圧壊は見られた.その時点で症例は,腰背部痛により体動困難となり,NRSは安静時/動作時:10/10,基本動作,ADLに全介助を要するようになった.Z+54日よりノイロトロピンを服用開始.腰背部痛の変化はなく離床への恐怖心や意欲低下,悲観的な発言もみられていた.Z+70日よりスルピリド内服開始され腰背部痛軽減傾向に伴い恐怖心軽減や意欲向上も徐々に見られ基本動作,ADLも軽介助~中等度介助にて可能となった.
【結果】
Z+81日,NRS:安静時3 /10,運動時:5/ 10,MMT四肢4レベル,6MD:180m, PCI,0.23,HADS:5/56点.ADLは,FIM:111/126点,基本動作は物的支持物把持し自立,ADL自立し日中歩行器自立となった.
【考察】
本症例は途中より腰背部痛が増悪し,基本動作やADLの殆どに介助を要す状態に至った.また,離床に対しての恐怖心や不安感も強く訓練に対しても意欲低下が見られていた.疼痛には,様々な要因が関与するが,うつ状態もその要因の一つとされており,ノイロトロピン処方後も疼痛は処方前と変化はなかった.圧迫骨折による腰背部痛を呈する患者に対し抗鬱薬が疼痛の管理として鎮痛補助として有効である(日比 2006)としており,症例に対してもうつ症状を軽減するスルピリドが内服として処方,内服後より疼痛は緩和され,動作上でも疼痛減少により再獲得が可能であったと考える.そのため,疼痛管理が困難な場合副作用に考慮しつつ治療に応用する価値は十分にあると推察された.