[PD-6-2] ポスター:運動器疾患 6患手の疼痛恐怖を克服し着替えが可能になった症例~作業遂行 6 因子分析ツール (OPAT6) を用いて認識に焦点を当てて~
【はじめに】
今回,疼痛への恐怖から患手使用困難に陥った症例を経験した.症例は左橈骨遠位端骨折によって疼痛恐怖の回避状態となり,関節可動域は改善したがuseful handに至らずアプローチに難渋した.現状の作業療法には,対象者の生活・人生課題を作業への参加に関する課題に落とし込んでアプローチに繋げる事が十分ではないが,それに対し,我々は「対象者が意味のある作業にどの程度関われているか」という主体的な作業の実行状況を捉え,その状況への関連因子「健康状態」「心身機能」「活動能力」「情緒」「認識」「環境」の影響を分析する「作業遂行6因子分析ツール」(OPAT6)の開発を進めている.今回, OPAT6を用いて手が使えない「認識」を中心に介入を行い,更衣が獲得出来た症例について報告する.
【症例紹介】
自宅で転倒しX日左橈骨遠位端骨折を呈した70歳代女性.X+5日プレート固定術施行.X+28日外来作業療法開始.X+110日頃に左手指関節可動域が悪化.X+193日抜釘術,腱剥離術施行,X+223日左手部腫瘤切除術施行.元々内向的で不安が強い性格.介入当初から関節運動への恐怖心が強く,治らないのではと漠然とした不安があった.今回,X+110日〜X+195日に絞って報告する.発表に当たり,症例に書面による説明と同意を得ている.
【初期・中間評価】
X+28日掌背屈制限は重度.橈尺屈と回内外制限は中等度.フルグリップ可能,左手を使う事への恐怖はあるが生活全般での参加頻度は徐々に増えた.更衣はボタンやファスナーなどの巧緻動作に介助を要す程度. X+110日掌背屈制限は中等度.橈尺屈と回内外制限はほぼ消失もフルグリップ困難.左手指・手関節を動かすと痛みを誘発し,左手の生活での参加頻度は減少,更衣は伸縮性がある孫の服を代用.左手指の関節可動域の悪化から,訓練時に涙を見せる事もあり,落ち込んでいる様子が伺えた.
【介入】
外来での関節可動域訓練,自主訓練指導に加え,「着替えがうまくできない」という実行状態に対し,痛みが怖くて手が使えないという「認識」が「心身機能」,「活動能力」に影響を及ぼしていると仮説を立て,心理的アプローチを行った.病態理解を促し,傾聴とコーチングを行い,更衣の獲得を自覚できるようにした.
【最終評価】
X+195日掌背屈制限は中等度.橈尺屈と回内外制限はほぼ消失.フルグリップ困難だが改善あり.再手術や機能訓練の効果もあり関節可動域は改善した.更衣に困難さは残るが自分の服を使用して自立した.左手の使用や使用範囲の認識は促された.
【考察】
急性痛であっても,極度の恐怖心が過剰な行動回避,不活動,抑うつ,機能障害をもたらし,疼痛の悪循環を招く可能性があり,安心感を与える教育的サポートは重要とされる(松原,2013).また,たとえ高機能であっても,その手が対象者の生活動作において有効に活用されていなければ意味がない(齋藤,2014).それに関する精神心理的な障壁を取り払う為の取り組みを行っていく必要がある.今回,OPAT6を用いて関連因子間での相互作用を検討し,「認識」の重要に着目する事が可能となった.症例は,関節可動域は改善したが患手が使えないという認識になって更衣が困難となったが,心理的アプローチに重点をおいた事で更衣獲得が促されたと考えられた.
今回,疼痛への恐怖から患手使用困難に陥った症例を経験した.症例は左橈骨遠位端骨折によって疼痛恐怖の回避状態となり,関節可動域は改善したがuseful handに至らずアプローチに難渋した.現状の作業療法には,対象者の生活・人生課題を作業への参加に関する課題に落とし込んでアプローチに繋げる事が十分ではないが,それに対し,我々は「対象者が意味のある作業にどの程度関われているか」という主体的な作業の実行状況を捉え,その状況への関連因子「健康状態」「心身機能」「活動能力」「情緒」「認識」「環境」の影響を分析する「作業遂行6因子分析ツール」(OPAT6)の開発を進めている.今回, OPAT6を用いて手が使えない「認識」を中心に介入を行い,更衣が獲得出来た症例について報告する.
【症例紹介】
自宅で転倒しX日左橈骨遠位端骨折を呈した70歳代女性.X+5日プレート固定術施行.X+28日外来作業療法開始.X+110日頃に左手指関節可動域が悪化.X+193日抜釘術,腱剥離術施行,X+223日左手部腫瘤切除術施行.元々内向的で不安が強い性格.介入当初から関節運動への恐怖心が強く,治らないのではと漠然とした不安があった.今回,X+110日〜X+195日に絞って報告する.発表に当たり,症例に書面による説明と同意を得ている.
【初期・中間評価】
X+28日掌背屈制限は重度.橈尺屈と回内外制限は中等度.フルグリップ可能,左手を使う事への恐怖はあるが生活全般での参加頻度は徐々に増えた.更衣はボタンやファスナーなどの巧緻動作に介助を要す程度. X+110日掌背屈制限は中等度.橈尺屈と回内外制限はほぼ消失もフルグリップ困難.左手指・手関節を動かすと痛みを誘発し,左手の生活での参加頻度は減少,更衣は伸縮性がある孫の服を代用.左手指の関節可動域の悪化から,訓練時に涙を見せる事もあり,落ち込んでいる様子が伺えた.
【介入】
外来での関節可動域訓練,自主訓練指導に加え,「着替えがうまくできない」という実行状態に対し,痛みが怖くて手が使えないという「認識」が「心身機能」,「活動能力」に影響を及ぼしていると仮説を立て,心理的アプローチを行った.病態理解を促し,傾聴とコーチングを行い,更衣の獲得を自覚できるようにした.
【最終評価】
X+195日掌背屈制限は中等度.橈尺屈と回内外制限はほぼ消失.フルグリップ困難だが改善あり.再手術や機能訓練の効果もあり関節可動域は改善した.更衣に困難さは残るが自分の服を使用して自立した.左手の使用や使用範囲の認識は促された.
【考察】
急性痛であっても,極度の恐怖心が過剰な行動回避,不活動,抑うつ,機能障害をもたらし,疼痛の悪循環を招く可能性があり,安心感を与える教育的サポートは重要とされる(松原,2013).また,たとえ高機能であっても,その手が対象者の生活動作において有効に活用されていなければ意味がない(齋藤,2014).それに関する精神心理的な障壁を取り払う為の取り組みを行っていく必要がある.今回,OPAT6を用いて関連因子間での相互作用を検討し,「認識」の重要に着目する事が可能となった.症例は,関節可動域は改善したが患手が使えないという認識になって更衣が困難となったが,心理的アプローチに重点をおいた事で更衣獲得が促されたと考えられた.