第56回日本作業療法学会

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ポスター

運動器疾患

[PD-6] ポスター:運動器疾患 6

Sat. Sep 17, 2022 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (イベントホール)

[PD-6-3] ポスター:運動器疾患 6手根管症候群術後の手指機能予後に対する訓練期間の検討

柳川 明義1田丸 佳希2松木 明好2藤野 悦路1 (1社会医療法人信愛会 畷生会脳神経外科病院リハビリテーション科,2四條畷学園大学リハビリテーション学部)

【はじめに】手根管症候群(以下CTS)は手関節の正中神経が圧迫されることで生じ,症状として正中神経支配の疼痛,知覚異常,しびれ,筋力低下などが出現する.重度になると睡眠障害なども起こるため生活に支障を来すことから,手術適応となることが多い.神経の回復は軸索再生が1日3mmと言われているが(Forman1978),臨床経験上4~6ヶ月の治療期間を要することがある.また,作業療法(以下OT)終了時に症状が残存した例も散見され,リハビリ期間を予測することは難しい.そこで今回我々は, CTSに対する手根管開放術後の患者にNerve Gliding exercise(以下NGE)を実施し,手指機能の改善までの期間を調査し,その結果を報告する.
【倫理的配慮】倫理的配慮では,本研究の目的や内容を説明し,同意を得た者のみを対象とした.なお当院倫理審査委員会の承認を得て実施した.
【対象】当院でCTSと診断受け,手根管開放術を受けた外来患者86例(男性31名,女性55名,平均年齢66.8±14.1歳),右手48例,左手38例を対象とした.
対象は全例術後4日目よりOT外来にて週1回2単位で開始.終了の基準は症状が改善した,もしくは術後6ヶ月を目処に前月と比較して症状の改善が認められなかった症例を終了とした.
【検査項目・作業療法内容】握力,ピンチ力は術後9週より測定.Semmes-Weinstein Monofilament test(以下SWMT),2点弁別(2PD),しびれの数値評価スケールスコア(以下Numb),痛みの数値評価スケールスコア(以下Pain),Phalen testは初回より毎週測定した.OTは週1回40分,NazariehらによるNGEを実施し,自宅でも自主トレとして行うように指導した.
【結果】OT開始(術後4日目)より各検査項目の最大値(改善)に到達した平均週数をみると,握力13.3週,ピンチ力10.0週,SWMT7.9週,2PD5.6週,Numb8.2週,Pain3.0週,Phalen test2.3週であった.左右(右/左)で比較すると,握力15.2/11.0週,ピンチ力10.3/9.8週,SWMT8.8/6.8週,2PD6.5/4.4週,Numb8.7/7.5週,Pain3.5/2.3週,Phalen test2.4/2.2週であった.いずれも右に比べ左の方が改善は早い結果となった.
【考察】絞扼性神経障害であるCTSは,手根管への圧迫を外科的に開放することで大きく改善する.しかし,症状改善の効果は,術後ケアの方法によって大きく異なり,改善までの期間に関する報告は少ない.リハビリ内容に関して,Cookら(1995)は,手術後に手関節をスプリントで固定すると変形が生じるため,指や手関節の早期の運動が重要であると報告しており,Steyersら(2002)は,腱や神経の滑走を促すために,術後早期にモビライゼーションを行うべきであると報告している.今回,手根管開放術後にNGEを開始した結果,比較的早期に改善したものと考えられる.左右差に関しては右手の罹患率が高いことから右手の過度な使用や圧迫が示唆され,症状も左手に比べ重度で術後も早期に使用していたのではないかと考えられる.
【終わりに】CTSの改善は軸索再生の期間に一致しないことも多く,経過期間が長くなることから,患者からも「いつ頃よくなるのか?」という質問をよく受ける.統計分析を使用していないため,あくまで参考数値となるが,今回の結果を踏まえて今後も検討を深めていきたい.