第56回日本作業療法学会

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ポスター

運動器疾患

[PD-7] ポスター:運動器疾患 7

Sat. Sep 17, 2022 11:30 AM - 12:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PD-7-4] ポスター:運動器疾患 7介入に難渋した急性期四肢末梢虚血壊死患者に対するクリニカルリーズニングの変化~作業療法の振り返り~

佐野 雛子1,2山本 司2酒井 朋子3上出 杏里1 (1国立成育医療研究センターリハビリテーション科,2東京医科歯科大学病院リハビリテーション部,3東京医科歯科大学病院リハビリテーション科)

【緒言】切断とは,慣れ親しんできたボディイメージや自己イメージを喪失,障害受容の中で患者の内面にだけに展開される個人的な体験のみならず,リハビリテーションスタッフや家族との関係性の中で営まれていくきわめてダイナミックな体験であるとしている.(渡辺)今回介入に難渋した四肢末梢虚血壊死患者に対する作業療法介入について,クリニカルリーズニングの観点から検討することを目的とした.
【症例紹介】50歳代女性.診断名:敗血性ショック.既往:SLE,尿路感染症.現病歴:X日に自宅にて体動困難となり当院へ搬送.ICUでの開始後X +21日よりOT開始となった.四肢末梢虚血壊死に対して両側足部のピゴロフ切断,両側上肢は保存加療の方針となった.
【初期評価及び介入内容】コミュニケーション:理解・表出良好.左母指~小指IP遠位壊死,右示指,中指DIP関節より末端に黒色壊死あり.両側MP関節以外に制限あり.対立動作:両側可能.握力:両側不可.ピンチ両側側方つまみ可能.感覚:壊死部に感覚過敏あり.ADL :全介助. ICFの枠組で分類し,安静度や機能障害によりADLや余暇における作業遂行技能の障害が生じ,入院環境も相まって活動機会が制限され2次的な廃用性の心身機能低下が生じていると考えられた.以上のことから安静度に合わせADL介助量軽減を目的に機能訓練とADL訓練を中心に実施した.
【作業療法介入に対する自省】当初の仮説では,ADLの質の改善とともに活動機会と内容の拡大,更なる作業遂行技能の改善を期待したが,停滞した.改善を期待するあまりに体調の不安定さと本人の能力の変化にOTR自身が患者の本質を捉えきれない感覚があり,再評価する必要があると考えた.
【中間評価及び介入内容】本人と面接を実施.現在の状態を悲観し,先の見えない未来に不安を抱いていたが今後について過大評価傾向にあった.自身の身体機能に関して過小評価傾向にあり,作業遂行の耐久性が低下していた.一方で「お母さんを1人にさせてしまった」と2人暮らしの認知症の母を置いて自分が入院していることに対しての申し訳ない気持ちが強く,一緒に時間を共にすることに価値をおいていた.病棟では臥床傾向であるが,普段より日記代わりのメモをとる活動機会があった.以上より母と生活することを目標に患者自身とできることとできなければならないことを整理し明確化した.多職種と連携し,患者の思いを汲み取り,作業への動機付けを促し,日常生活へ汎化させることを目標とした.
【経過】数回の多職種カンファレンスを実施し情報を共有. 母に負担をかけたくないとの思いを尊重し,目標を明確化することにより,活動参加意欲も向上した.OTではトイレ動作介助量軽減を目標とし訓練を行い,日中排泄をトイレで監視~軽介助で行うことが可能となった.その後回復期病棟に転院し自宅退院へ至った.
【考察】本事例では,患者の揺れ動く言動によりOTRが本質を捉えることが困難であった.作業療法の振り返りを行うことにより,機能訓練とADL訓練中に加え患者の語りや意思を尊重するナラティブリーズニングを併用したも.丸山らは回復期病棟において実践のジレンマや苦悩をきっかけとした自省は,作業療法介入を修正し発展させる上で有用であるとしているが, 急性期においても実践のジレンマや苦悩をきっかけとした振り返りは有用であったことが示唆された.