[PD-7-5] ポスター:運動器疾患 7腰部脊椎疾患における痛みと精神・心理面に関連する要因の検討
【はじめに】
疼痛の頻出部位として腰65%,頸・肩55%,膝26%と報告されている.当院一般病棟入院患者データにおいても,腰部疾患で58%もの患者が疼痛を有していた.退院後の主体的な生活を目指す上で,入院中の疼痛管理能力の獲得は重要な課題である.疼痛管理が可能となるまでの行動変容において,気づきや自己効力感などの精神・心理面の重要性は示されているが,「気づき」に着目した報告は少ない.本研究は痛みと精神・心理面への関連因子を明らかにすることを目的とした.
【対象】
当院の一般病棟に入院している腰部脊椎疾患の中で,研究内容に同意が得られた22名を対象とした.年齢は,76.6±8.38歳.性別は,男性8名,女性が14名.診断名は,腰部脊柱管狭窄症11名,腰椎圧迫骨折4名,腰髄損傷2名,脊柱後湾症1名,脊柱側弯症1名,脊柱変性後側弯症1名,腰椎すべり症1名,腰椎椎体骨折1名だった.手術の有無は,手術後が18名,保存療法が4名だった.本研究は,当院倫理審査委員会の承認(No.25)を得て実施した.
【方法】
入院時と退院時に疼痛強度の評価としてNumerical Rating Scale(以下,NRS),疼痛破局的思考尺度としてPain Catastrophizing Scale(以下,PCS),認知面の評価としてMini-Mental State Examination(以下,MMSE),日常生活活動の評価としてFunctional Independence Measure(以下,FIM),気づきの評価として独自で作成したFIM運動項目の自己評価(FIMギャップ=患者自己評価とセラピスト評価の差),不安・抑うつの評価はHospital Anxiety and Depression Scale(以下,HADS),自己効力感尺度はGeneral Self-Efficacy Scale(以下,GSES)を評価した.各評価間の関連性について,Spearmanの順位相関係数を用いて検討した.統計解析にはSPSS ver.26を用いて,有意水準は5%未満とした.
【結果】
入院時:HADS(不安・抑うつ)とGSESが強い負の相関(p−0.57,p−0.61)を認めた.FIMギャップとFIMは強い負の相関(p−0.55)を認めた.中等度の負の相関としては,PCSと認知FIMおよび,FIMギャップと運動FIM,認知FIMとの間で認められた.退院時:PCSとHADS(不安)が強い正の相関(p0.70)を認めた.HADS(不安)とFIM,運動FIMの間に強い負の相関(p−0.58,p−0.55)を認めた.さらに,FIMギャップと運動FIMにも強い負の相関(p−0.56)を認めた.中等度の正の相関はPCSとHADS(抑うつ)の間に認め,中等度の負の相関としては,PCSとFIM,運動FIM,認知FIMとの間に,また,GSESとHADS(不安・抑うつ),PCSとの間にも認めた.入院時−退院時:PCSとHADS(不安・抑うつ)に強い正の相関(p0.72,p0.54)を認め,FIMギャップとFIM,運動FIMの間には強い負の相関を認めた.中等度の負の相関としては,GSESとPCSやHADS(不安),FIMギャップとの間に認めた.
【考察】
本研究は痛みと精神・心理面の関連性について検討した.結果より,痛みの強度に精神・心理面の指標は相関を認めなかった.今回は,破局的思考や不安・抑うつ,自己効力感,気づき,FIM等の指標間に相関を認めた.これより,痛みの強度よりも痛みの捉え方や不安・抑うつ,気づきが自己効力感やFIM等に関連している事が明らかとなった.行動変容の促進因子として,「気づき」と「自己効力感」が重要だとされている.本研究より,気づきと自己効力感においては相互作用の関係にあることが示唆された.疼痛管理能力獲得にあたり,入院時から痛みの感覚的側面や情動的側面,認知的側面の評価の視点に加え,「気づき」への評価や介入の重要性が再認できた.
疼痛の頻出部位として腰65%,頸・肩55%,膝26%と報告されている.当院一般病棟入院患者データにおいても,腰部疾患で58%もの患者が疼痛を有していた.退院後の主体的な生活を目指す上で,入院中の疼痛管理能力の獲得は重要な課題である.疼痛管理が可能となるまでの行動変容において,気づきや自己効力感などの精神・心理面の重要性は示されているが,「気づき」に着目した報告は少ない.本研究は痛みと精神・心理面への関連因子を明らかにすることを目的とした.
【対象】
当院の一般病棟に入院している腰部脊椎疾患の中で,研究内容に同意が得られた22名を対象とした.年齢は,76.6±8.38歳.性別は,男性8名,女性が14名.診断名は,腰部脊柱管狭窄症11名,腰椎圧迫骨折4名,腰髄損傷2名,脊柱後湾症1名,脊柱側弯症1名,脊柱変性後側弯症1名,腰椎すべり症1名,腰椎椎体骨折1名だった.手術の有無は,手術後が18名,保存療法が4名だった.本研究は,当院倫理審査委員会の承認(No.25)を得て実施した.
【方法】
入院時と退院時に疼痛強度の評価としてNumerical Rating Scale(以下,NRS),疼痛破局的思考尺度としてPain Catastrophizing Scale(以下,PCS),認知面の評価としてMini-Mental State Examination(以下,MMSE),日常生活活動の評価としてFunctional Independence Measure(以下,FIM),気づきの評価として独自で作成したFIM運動項目の自己評価(FIMギャップ=患者自己評価とセラピスト評価の差),不安・抑うつの評価はHospital Anxiety and Depression Scale(以下,HADS),自己効力感尺度はGeneral Self-Efficacy Scale(以下,GSES)を評価した.各評価間の関連性について,Spearmanの順位相関係数を用いて検討した.統計解析にはSPSS ver.26を用いて,有意水準は5%未満とした.
【結果】
入院時:HADS(不安・抑うつ)とGSESが強い負の相関(p−0.57,p−0.61)を認めた.FIMギャップとFIMは強い負の相関(p−0.55)を認めた.中等度の負の相関としては,PCSと認知FIMおよび,FIMギャップと運動FIM,認知FIMとの間で認められた.退院時:PCSとHADS(不安)が強い正の相関(p0.70)を認めた.HADS(不安)とFIM,運動FIMの間に強い負の相関(p−0.58,p−0.55)を認めた.さらに,FIMギャップと運動FIMにも強い負の相関(p−0.56)を認めた.中等度の正の相関はPCSとHADS(抑うつ)の間に認め,中等度の負の相関としては,PCSとFIM,運動FIM,認知FIMとの間に,また,GSESとHADS(不安・抑うつ),PCSとの間にも認めた.入院時−退院時:PCSとHADS(不安・抑うつ)に強い正の相関(p0.72,p0.54)を認め,FIMギャップとFIM,運動FIMの間には強い負の相関を認めた.中等度の負の相関としては,GSESとPCSやHADS(不安),FIMギャップとの間に認めた.
【考察】
本研究は痛みと精神・心理面の関連性について検討した.結果より,痛みの強度に精神・心理面の指標は相関を認めなかった.今回は,破局的思考や不安・抑うつ,自己効力感,気づき,FIM等の指標間に相関を認めた.これより,痛みの強度よりも痛みの捉え方や不安・抑うつ,気づきが自己効力感やFIM等に関連している事が明らかとなった.行動変容の促進因子として,「気づき」と「自己効力感」が重要だとされている.本研究より,気づきと自己効力感においては相互作用の関係にあることが示唆された.疼痛管理能力獲得にあたり,入院時から痛みの感覚的側面や情動的側面,認知的側面の評価の視点に加え,「気づき」への評価や介入の重要性が再認できた.