[PE-2-1] ポスター:神経難病 2重度の機能障害が残存したギラン・バレー症候群に対し,靴と装具の着脱方法の工夫でトイレ動作が自立に至った一例
【はじめに】ギラン・バレー症候群(GBS)は一般的に予後が良好な疾患だが,予後不良な回復遷延型GBSの場合,長期的なリハビリテーション(リハ)が必要となる.回復遷延型GBSは重度の機能障害が残存しやすいため,対象者の状況や意向に合わせながら装具や自助具を活用して生活行為を改善していく必要がある.今回,重度の機能障害が残存したGBSの症例に対して,上下肢装具と動作方法の工夫により希望するトイレ動作が自立できたので報告する.なお,本発表に関する同意は書面にて得ている.
【症例紹介】60代,女性.診断名はGBS.四肢麻痺だけでなく呼吸筋麻痺まで症状が進行したため,他院へ緊急入院となった.人工呼吸器管理による入院加療とリハ後,回復期リハ目的で511病日に当院へ入院となった,入院時のMMTは上肢近位2〜3,上肢遠位と下肢1〜3,全身に重度の関節拘縮があった.手部は手外在筋優位の状態で拘縮していたため一部の握り動作しかできず,STEFは右11/左8だった.ADLはFIM 70/126点(運動35点:トイレ1点,移乗・トイレ移乗2点,認知35点)であった.入院前生活では,夫を支えながら専業主婦として4人の子育てに励み,努力家で自立心が強い性格であった.そのため,病棟でも看護師のサポートを受けず自立した生活を送りたい希望があり,ニーズは「好きな時に一人でトイレに行けるようになりたい」であった.
【経過】介入前期(512病日〜):ADL自立の意欲は強かったが,重度の関節拘縮と筋力低下のためADL全般に介助を要していた.しかし,機能訓練と並行して上下肢装具や自助具,トランスファーボードの活用により,食事や移乗が自立,歩行器歩行が見守りで可能となっていった.しかし,希望するトイレ動作の自立には,自室からトイレへの移動・移乗に必要なオルトップAFO(下肢装具)と靴の着脱,下衣着脱に必要な母指対立バンド(手指装具)の装着が必要であったが,つまみ動作が困難なため介助が必要であった.介入後期(615病日〜):トイレまでの移動およびトイレ動作の自立に向けて,手指装具と靴は自己着脱ができるように,ストラップやループを付けて手指を引っ掛けることができるように工夫した.下肢装具も同様にベルクロテープにループを取り付けたが,股関節拘縮(両股関節外転30°,内外旋20°)と動作手順の未学習により,介助が必要だった.そこで,股関節拘縮を除去しつつ,足台の活用やベッド上で片側割座・片側長座の肢位で足部にリーチができるように動作方法を変更して下肢装具の着脱を練習した.
【結果】658病日,MMTは上肢近位3〜4,上肢遠位1〜3,下肢 2〜3,両手指の変形拘縮は部分的に改善し,部分的に横つまみや握り動作が可能となった.STEFは右23/左28点,装具を装着すると右61/左56点と改善した.ADLはFIM 99/126点(運動64点:トイレ6点,移乗・トイレ移乗7点,認知35点),手指装具と下肢装具,靴の着脱が自立となり,介助なくトイレ動作と移動が可能となった.「装具や靴も自分で出来るようになったので,トイレは誰かに頼らずできるわ」と前向きな発言が聞かれた.
【考察】本症例は,装具の着脱方法や動作方法の工夫によって,トイレ動作および移動に必要な装具の着脱が可能となり,ADLの自立度が改善した.装具療法は介助量の軽減や動作の質の向上を図ることができる有効な手段であるが,着脱まで自身で行えるかはリハを進める上で重要なポイントである.特に重度機能障害が残存した症例においては,残存機能を考慮した装具着脱の工夫が必要であると考えられた.
【症例紹介】60代,女性.診断名はGBS.四肢麻痺だけでなく呼吸筋麻痺まで症状が進行したため,他院へ緊急入院となった.人工呼吸器管理による入院加療とリハ後,回復期リハ目的で511病日に当院へ入院となった,入院時のMMTは上肢近位2〜3,上肢遠位と下肢1〜3,全身に重度の関節拘縮があった.手部は手外在筋優位の状態で拘縮していたため一部の握り動作しかできず,STEFは右11/左8だった.ADLはFIM 70/126点(運動35点:トイレ1点,移乗・トイレ移乗2点,認知35点)であった.入院前生活では,夫を支えながら専業主婦として4人の子育てに励み,努力家で自立心が強い性格であった.そのため,病棟でも看護師のサポートを受けず自立した生活を送りたい希望があり,ニーズは「好きな時に一人でトイレに行けるようになりたい」であった.
【経過】介入前期(512病日〜):ADL自立の意欲は強かったが,重度の関節拘縮と筋力低下のためADL全般に介助を要していた.しかし,機能訓練と並行して上下肢装具や自助具,トランスファーボードの活用により,食事や移乗が自立,歩行器歩行が見守りで可能となっていった.しかし,希望するトイレ動作の自立には,自室からトイレへの移動・移乗に必要なオルトップAFO(下肢装具)と靴の着脱,下衣着脱に必要な母指対立バンド(手指装具)の装着が必要であったが,つまみ動作が困難なため介助が必要であった.介入後期(615病日〜):トイレまでの移動およびトイレ動作の自立に向けて,手指装具と靴は自己着脱ができるように,ストラップやループを付けて手指を引っ掛けることができるように工夫した.下肢装具も同様にベルクロテープにループを取り付けたが,股関節拘縮(両股関節外転30°,内外旋20°)と動作手順の未学習により,介助が必要だった.そこで,股関節拘縮を除去しつつ,足台の活用やベッド上で片側割座・片側長座の肢位で足部にリーチができるように動作方法を変更して下肢装具の着脱を練習した.
【結果】658病日,MMTは上肢近位3〜4,上肢遠位1〜3,下肢 2〜3,両手指の変形拘縮は部分的に改善し,部分的に横つまみや握り動作が可能となった.STEFは右23/左28点,装具を装着すると右61/左56点と改善した.ADLはFIM 99/126点(運動64点:トイレ6点,移乗・トイレ移乗7点,認知35点),手指装具と下肢装具,靴の着脱が自立となり,介助なくトイレ動作と移動が可能となった.「装具や靴も自分で出来るようになったので,トイレは誰かに頼らずできるわ」と前向きな発言が聞かれた.
【考察】本症例は,装具の着脱方法や動作方法の工夫によって,トイレ動作および移動に必要な装具の着脱が可能となり,ADLの自立度が改善した.装具療法は介助量の軽減や動作の質の向上を図ることができる有効な手段であるが,着脱まで自身で行えるかはリハを進める上で重要なポイントである.特に重度機能障害が残存した症例においては,残存機能を考慮した装具着脱の工夫が必要であると考えられた.