第56回日本作業療法学会

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ポスター

神経難病

[PE-2] ポスター:神経難病 2

Fri. Sep 16, 2022 4:00 PM - 5:00 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PE-2-4] ポスター:神経難病 2パーキンソン病患者の在宅生活の実態調査

酒井 美幸1加藤 美樹1植村 亜沙美1景山 卓1 (1東海記念病院)

【序論】パーキンソン病(以下,PD)の進行予防には,薬物療法とリハビリテーション(以下,リハビリ)が重要とされている.しかし,在宅生活を送っている患者の多くで処方通りに服薬できない,患者・家族の病気に対する理解が不十分で適正なリハビリが行われていないといった問題が挙げられ,これらが日常生活動作の制限や社会参加の制約の一因となっているだけでなく,病状の進行に影響していると考えられている.また,これらの問題により,介護支援専門員(以下,CM)が患者の日常生活支援を適切に行えないといった課題も臨床現場で経験する.今回,当院でPD患者の教育とリハビリを目的とした入院プログラムを構築するにあたり,PD患者の生活実態を把握するためのアンケート調査を実施した.【目的】PD患者の生活機能障害の実態把握,医療機関に期待される役割を明確化し,PD患者リハビリ入院プログラムの構築に活かす.【方法】対象は,①近隣居宅介護支援事業所に勤務するCM83名のうち回答の得られた40名,②当院脳神経内科通院中のPD患者および,法人内の介護保険サービス利用中のPD患者のうち同意の得られた35名とした.アンケートの内容は在宅生活の実態,疾患に関する内容,各医療職種に期待する役割などについて質問紙票を作成した.CMに対しては質問紙票を郵送,当事者に対しては受診時や利用時に手渡し配布し,その後回収した.なお,本研究は東海記念病院倫理審査委員会による承認(承認番号:2020-05)を得た上で実施した.
【結果】アンケートの回収率は①48.1%,②100%であった.①CM:57%がPDに関する知識が不足していると感じていた.また約半数のCMが,危険行動(45%)や排泄障害(50%)に関して支援が困難であった経験をしていた.さらに,本人のサービス受け入れ不良により,家族の介護負担が増大する傾向もみられた.医療職種に期待する役割としては,医師,看護師,薬剤師からの医学的情報の提供を希望する回答が多く,日内変動の把握と対処法も期待が高かった.リハビリに対しては,運動症状へのリハビリと環境調整等を期待する回答が多かった.②PD患者:回答者のうち,日常生活が自立していない方が49%,自立している方が51%であった.日常生活が自立しているレベルでも日常的に80%の方が転倒している一方で,66%の方が運動する機会・習慣がなかった.日常生活上困っている症状については,リハビリでの介入効果が期待できる運動症状を挙げる患者が多い一方で,便秘,睡眠障害,認知・心理機能といった非運動症状に困っている対象者も存在した.医療職種に期待する役割としては,ストレッチやトレーニング方法の指導といったリハビリへの需要は高かったが,CMとは異なり,環境調整や病気の教育といった点に対する要望は少なかった.【結論】PD患者が安全に在宅生活を送る上で,本人,家族によるPDの知識や運動の重要性の理解を早期から促進する機会が必要である.また,入院プログラムを構築することで,多職種での包括的な関わりや日内変動等を含めた生活状況全体の把握が可能となる.これらの情報を患者やその家族,CMら在宅支援者と共有していくことでPD患者が安全な在宅生活を継続するための一助となると考える.