[PE-3-3] ポスター:神経難病 3パーキンソン病患者に対するVirtualRealityを活用したアプローチ―趣味活動の再開に向けて―
【はじめに】近年,Virtual Reality(以下VR)を使用したリハビリテーションの効果が多く報告されており,運動機能の回復に効果があると言われている.今回,パーキンソン病により右手の使いにくさを訴える症例に対し,趣味活動の再開を目標に入院作業療法を実施した.VRを用いた介入を試み,一定の効果を挙げたので,考察を加え,以下に報告する.本報告に際し,個人の尊厳や人権の尊重など倫理的配慮を十分に行い,当院倫理委員会の承認を得た.
【症例紹介】12年前にパーキンソン病の診断となった80代男性.趣味として書道を行っており,色紙に書いた作品をデイサービスの利用者に配ることを楽しみとしていた.今回,薬剤調整,リハビリテーション目的で入院となった.本人の希望は「書道がしたい」であった.第2病日より作業療法開始し,薬剤調整後,第18病日に自宅退院となった.
【介入経過】初期評価時,四肢の固縮,手指巧緻性低下を認めていた.趣味として書道を行っていたが筆先の動かしにくさを自覚しており,書字では小字症を認めていた.「もうできないから」とあきらめる様子がみられた. COPMを実施し,重要な活動の1つとして「字を書くこと」が挙がり,重要度10,遂行度2,満足度2であった.握力右25kgf,左24kgf,ピンチ力右12kgf,左9kgf,Box and Block Test(以下BBT)右40個,左37個.作業療法は週5回,1日40分施行.そのうち,VR介入には,RAPAEL社Smart Glove®を使用し,訓練は右手のみ週3回,1日30分間実施した.書字練習は段階を設定し①マス目,②縦罫,③白紙の順番で行った.白紙では文字が小さくなってしまうが,マス目を使用すると事前に全体像が捉えやすく文字が書きやすくなっていた.書字の変化を共有するため練習後に前回との比較を行った.筆記用具はマジックペンや筆ペンでの練習を行い,最終は毛筆にて,他療法士へのプレゼント作成を行った.最終評価は,COPMは遂行度3,満足度3であった.評価点については「もっとよくなりたい」との発言があった.握力右27kgf,左26kgf,ピンチ力右13kgf,左11kgf,BBT右54個,左46個.Jebsen-Taylor Hand Function Testでは,全ての課題において,時間短縮を認めた.自身でも書字練習を行っており,「小さい字も書きやすくなった」と笑顔で話す様子もみられた.
【考察】岡本らは,パーキンソン病では外部刺激に誘発される運動は障害されないと述べており,臨床的に視覚刺激や聴覚刺激が用いられることが多い.VR訓練では視覚刺激が多く,運動のきっかけになり,力強く握る,反応速度が速くなるなど改善がみられたことが考えられる.書字練習においてもマス目や縦罫などの視覚刺激を用いることにより,全体像が捉えやすくなった.段階を設定することにより状態に合わせて練習を進めることができ,小字症の改善を認めた.COPMの遂行スコア,満足スコアについて,明らかな改善は認められなかったが,発言より,現状に満足することなく,更なる向上を求めていることが窺えた.介入初期にあきらめていた書字は,訓練時に変化を共有する場を提供したことにより,症例のモチベーションになったのではないかと考える.訓練以外の時間も自身で書字を行っており,日々の成功体験が,再び書字を行うきっかけになったと考える.実際に作品作りも行い,他者へプレゼントすることで元々行っていた楽しみを再開することに繋がった.以上の点より,本症例にVRを活用した作業療法は右手の握力やスピードを改善させるきっかけとなり,マス目を用いた段階的な書字練習で自信をつけ,プレゼントなど役割提供による成功体験が趣味活動を再開する一助になったと考える.
【症例紹介】12年前にパーキンソン病の診断となった80代男性.趣味として書道を行っており,色紙に書いた作品をデイサービスの利用者に配ることを楽しみとしていた.今回,薬剤調整,リハビリテーション目的で入院となった.本人の希望は「書道がしたい」であった.第2病日より作業療法開始し,薬剤調整後,第18病日に自宅退院となった.
【介入経過】初期評価時,四肢の固縮,手指巧緻性低下を認めていた.趣味として書道を行っていたが筆先の動かしにくさを自覚しており,書字では小字症を認めていた.「もうできないから」とあきらめる様子がみられた. COPMを実施し,重要な活動の1つとして「字を書くこと」が挙がり,重要度10,遂行度2,満足度2であった.握力右25kgf,左24kgf,ピンチ力右12kgf,左9kgf,Box and Block Test(以下BBT)右40個,左37個.作業療法は週5回,1日40分施行.そのうち,VR介入には,RAPAEL社Smart Glove®を使用し,訓練は右手のみ週3回,1日30分間実施した.書字練習は段階を設定し①マス目,②縦罫,③白紙の順番で行った.白紙では文字が小さくなってしまうが,マス目を使用すると事前に全体像が捉えやすく文字が書きやすくなっていた.書字の変化を共有するため練習後に前回との比較を行った.筆記用具はマジックペンや筆ペンでの練習を行い,最終は毛筆にて,他療法士へのプレゼント作成を行った.最終評価は,COPMは遂行度3,満足度3であった.評価点については「もっとよくなりたい」との発言があった.握力右27kgf,左26kgf,ピンチ力右13kgf,左11kgf,BBT右54個,左46個.Jebsen-Taylor Hand Function Testでは,全ての課題において,時間短縮を認めた.自身でも書字練習を行っており,「小さい字も書きやすくなった」と笑顔で話す様子もみられた.
【考察】岡本らは,パーキンソン病では外部刺激に誘発される運動は障害されないと述べており,臨床的に視覚刺激や聴覚刺激が用いられることが多い.VR訓練では視覚刺激が多く,運動のきっかけになり,力強く握る,反応速度が速くなるなど改善がみられたことが考えられる.書字練習においてもマス目や縦罫などの視覚刺激を用いることにより,全体像が捉えやすくなった.段階を設定することにより状態に合わせて練習を進めることができ,小字症の改善を認めた.COPMの遂行スコア,満足スコアについて,明らかな改善は認められなかったが,発言より,現状に満足することなく,更なる向上を求めていることが窺えた.介入初期にあきらめていた書字は,訓練時に変化を共有する場を提供したことにより,症例のモチベーションになったのではないかと考える.訓練以外の時間も自身で書字を行っており,日々の成功体験が,再び書字を行うきっかけになったと考える.実際に作品作りも行い,他者へプレゼントすることで元々行っていた楽しみを再開することに繋がった.以上の点より,本症例にVRを活用した作業療法は右手の握力やスピードを改善させるきっかけとなり,マス目を用いた段階的な書字練習で自信をつけ,プレゼントなど役割提供による成功体験が趣味活動を再開する一助になったと考える.