第56回日本作業療法学会

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ポスター

がん

[PF-4] ポスター:がん 4

Sat. Sep 17, 2022 11:30 AM - 12:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PF-4-2] The influence of preoperative evaluation for vitality and disturbed on care skill acquisition in postoperative stoma

稲川 浩充1 (1独立行政法人国立病院機構栃木医療センターリハビリテーション科)

【症例紹介】60歳代男性.診断名は膵頭部癌.既往歴に関節リウマチ,脂質異常症.20XX年8月,膵頭部腫瘍切除術を施行し,TNM分類(Invasive ductal carcinoma pT3N1aM0,pSTageⅡB).その後,化学療法(TS-1)による当院通院を経て,同年12月に左背部痛を訴え再入院,膵癌の再発を認めた.疼痛は入院時Numerical Rating Scale(以下,NRS)で8/10.ADLはBarthel Indexで95点.Performance Statusグレード2,在宅生活内ではIADLを含めて家族の協力を得ながら生活が送れていた.余暇活動は読書,音楽鑑賞など多趣味の持ち主であった.告知後より心境の変化やその後の在宅生活の送り方に対する不安要素を挙げられていた.本人との会話を交えていく中で意思決定に基づいた支援の中に,気持ちの整理や余暇活動等の変化に影響が得られた事について,以下に報告する.本発表に関して,患者本人より同意を得て口頭説明及び書面にて了解を得た後,当院の倫理審査委員会への承認を得た.
【方法】がん告知後より,リハビリ介入時間に交わされた会話内容から経過による受容と否認(以下,波線モデル)の変化をまとめた.その中でリラクセーションを用いた技法(腹式呼吸,漸進性筋弛緩法,簡易型自律訓練法,イメージ療法)により本人の主訴や思いが引き出しやすい環境を整えながら聴取し,意思決定が行ない易い場を提供した.
【評価】波線モデルで会話内容より,言葉の変化を追っていく事で自身の身体状態と向き合える経過を確認した.その他に,リラクセーションを取り入れながら会話が行ない易い環境調整の方法を検討した.その他に病棟と連携し疼痛のモニタリングや化学療法中の副作用による影響を確認し合い,入院中のADL動作状況の情報共有化を行い,今後の在宅生活で起こりうる課題を整理した.余暇活動への影響にも配慮し興味関心チェックリストを活用し,本人の関心度を再確認した.
【結果】告知後より2週間程度,波線モデルにより言葉の変化を追っていく事で徐々に現状を受入れる様子も見られた.この間のOT時間の関わり方としてリラクセーションのプログラム内容を入れ替え,本人にとっての快適さを重要視した形を取った.主治医からの治療方針等についても前向きな姿勢で話し合いも行える様子が伺える様になっていた.疼痛の度合いはレスキューのタイミングや分量調整によりNRS5/10程度でコントロール出来ていた.緩和ケアチーム介入も含め,化学療法後の副作用への対処方法や生活の工夫点を伝え,主治医や病棟とのチーム連携により在宅生活レベルを維持出来ていた.本人の意思決定で,大事にした点は本人の気持ちが素直に表現できる環境を作ることが出来た事で,より具体的な内容が出来ていた.今後の在宅生活の中で,通院継続による化学療法の再開(GEM+nab-PTXへの変更),興味関心チェックリストで趣味活動を制限なく自分がやりたい事を精一杯,やり通す事が再確認できた.入院から34日目に自宅退院となった.退院後1週間後より外来通院が再開となり在宅生活も順調に送り始めることが出来たとの報告を受けた.
【考察】がん治療を継続していく中で,パラレルケアの考え方により在宅生活と入院生活を上手く活用しながら,再発後の告知において大きな心境の変化点を生じることになった.しかし,今後の余生の考え方や意思決定によるタイミングを作れる事によって,自分らしさを取り戻し再出発の気持ちとして,また治療に専念出来る準備にも繋がったと思われる.