[PF-4-3] ポスター:がん 4がんサバイバーのケモブレイン評価に関する文献レビュー
【はじめに】
近年では,がんに関連した認知機能障害が問題視されている.その中でも,脳腫瘍や放射線治療に伴う認知機能障害とは別に,化学療法に伴う認知機能障害はchemotherapy-related cognitive impairmentまたはケモブレインと呼ばれる.その要因や影響が懸念される認知ドメインは多様であり,かつ軽微な症状であるため既存の評価では捉えにくい場合がある.これまでは神経心理学的検査が主な評価ツールとして用いられてきたが,がんの認知機能評価が十分に整理されていないこと,評価ツールの認知ドメインが共有されていないことが問題として挙げられる.本研究の目的は,ケモブレインの評価にどのような評価ツールが使用されているのか,どのような認知ドメインで捉えようとしてきたのかを文献レビューにより明らかにすることである.
【方法】
データベースはPubmed, CINAHL, Web of scienceを使用した.2021年10月までの期間でMedical subject heading(MeSH)とキーワードを用いて検索し,重複論文を除いた1141本の文献レコードが特定された.適格性と除外項目を基に2名の評価者によって独立して対象論文を選定した.神経心理学的評価は,国際生活機能分類(International classification of functioning, disability and health: ICF)のコードを使用し,論文著者らの適用意図に留意し7つの認知ドメインに分類した.各認知ドメインの件数,各ドメインの評価ツールの件数から比率を算出した.それ以外に,患者アウトカム型の質問紙を用いた主観的評価,脳構造的・機能的画像による評価の件数から比率を算出した.
【結果】
対象論文は65本であり,評価ツールは396件が使用されていた.神経心理学的評価の認知ドメインでは,「記憶機能」が76件で最も多く,「知覚機能」は15件で最も少なかった.各ドメインでの評価ツールの割合では,「記憶機能」の中ではRey auditory verbal learning test(RAVLT)が15.8%,「注意機能」ではDigit spanが33.3%,「高次認知機能」ではTrail making test(TMT)が33.8%であった.「知的機能」ではMini-mental state examination(MMSE)が48.9%,「言語に関する精神機能」ではBoston naming testとControlled oral word association(COWA)が21.7%,「精神運動機能」ではTMTが40.0%,「知覚機能」ではRey-Osterrieth Complex Figure Test(ROCFT)の模写が46.7%であった.主観的評価ではFunctional assessment of cancer therapy-cognitive function(FACT-Cog)が56.0%,脳画像評価ではMagnetic Resonance Imaging(MRI)のvoxel-based morphometry(VBM)が31.8%で最も使用されていた.
【まとめ】
ICFの認知ドメインに応じて評価ツールを整理したことで,主要な評価ツールが明らかになった.評価の際は単一の認知ドメインでは不十分な評価となりうる可能性があることを念頭に置いて,評価ツールを選択する必要がある.また,ケモブレインの評価では,神経心理学的評価以外にも脳画像評価や主観的評価が併行して使用されていることが特徴的であった.今後は,ケモブレインをより適切にとらえる評価ツールを明らかにし,リハビリテーション支援に繋げていく必要がある.
近年では,がんに関連した認知機能障害が問題視されている.その中でも,脳腫瘍や放射線治療に伴う認知機能障害とは別に,化学療法に伴う認知機能障害はchemotherapy-related cognitive impairmentまたはケモブレインと呼ばれる.その要因や影響が懸念される認知ドメインは多様であり,かつ軽微な症状であるため既存の評価では捉えにくい場合がある.これまでは神経心理学的検査が主な評価ツールとして用いられてきたが,がんの認知機能評価が十分に整理されていないこと,評価ツールの認知ドメインが共有されていないことが問題として挙げられる.本研究の目的は,ケモブレインの評価にどのような評価ツールが使用されているのか,どのような認知ドメインで捉えようとしてきたのかを文献レビューにより明らかにすることである.
【方法】
データベースはPubmed, CINAHL, Web of scienceを使用した.2021年10月までの期間でMedical subject heading(MeSH)とキーワードを用いて検索し,重複論文を除いた1141本の文献レコードが特定された.適格性と除外項目を基に2名の評価者によって独立して対象論文を選定した.神経心理学的評価は,国際生活機能分類(International classification of functioning, disability and health: ICF)のコードを使用し,論文著者らの適用意図に留意し7つの認知ドメインに分類した.各認知ドメインの件数,各ドメインの評価ツールの件数から比率を算出した.それ以外に,患者アウトカム型の質問紙を用いた主観的評価,脳構造的・機能的画像による評価の件数から比率を算出した.
【結果】
対象論文は65本であり,評価ツールは396件が使用されていた.神経心理学的評価の認知ドメインでは,「記憶機能」が76件で最も多く,「知覚機能」は15件で最も少なかった.各ドメインでの評価ツールの割合では,「記憶機能」の中ではRey auditory verbal learning test(RAVLT)が15.8%,「注意機能」ではDigit spanが33.3%,「高次認知機能」ではTrail making test(TMT)が33.8%であった.「知的機能」ではMini-mental state examination(MMSE)が48.9%,「言語に関する精神機能」ではBoston naming testとControlled oral word association(COWA)が21.7%,「精神運動機能」ではTMTが40.0%,「知覚機能」ではRey-Osterrieth Complex Figure Test(ROCFT)の模写が46.7%であった.主観的評価ではFunctional assessment of cancer therapy-cognitive function(FACT-Cog)が56.0%,脳画像評価ではMagnetic Resonance Imaging(MRI)のvoxel-based morphometry(VBM)が31.8%で最も使用されていた.
【まとめ】
ICFの認知ドメインに応じて評価ツールを整理したことで,主要な評価ツールが明らかになった.評価の際は単一の認知ドメインでは不十分な評価となりうる可能性があることを念頭に置いて,評価ツールを選択する必要がある.また,ケモブレインの評価では,神経心理学的評価以外にも脳画像評価や主観的評価が併行して使用されていることが特徴的であった.今後は,ケモブレインをより適切にとらえる評価ツールを明らかにし,リハビリテーション支援に繋げていく必要がある.