第56回日本作業療法学会

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ポスター

がん

[PF-6] ポスター:がん 6

Sat. Sep 17, 2022 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PF-6-3] ポスター:がん 6脳腫瘍患者の健康関連QOLとADLの調査~健康関連 QOL の経時的変化と退院時 ADL との関連~

渡邉 貴博12能登 真一3五十嵐 文枝1田畑 智1高野 真優子1 (1新潟大学医歯学総合病院総合リハビリテーションセンター,2新潟医療福祉大学大学院保健学専攻 作業療法学分野,3新潟医療福祉大学リハビリテーション学部 作業療法学科)

【はじめに】
脳腫瘍患者に対するリハビリテーション(以下,リハ)介入は,ADLの改善に有効とされているが,健康関連QOL(以下,HRQOL)とADLの関連性は十分に示されていない.さらに,脳腫瘍患者にHRQOLの評価尺度であるEuroQol-5Dimension-5Level(以下,EQ-5D-5L)を用いた報告は少なく,退院後の縦断的な調査報告は見当たらない.そこで,本研究の目的は,EQ-5D-5Lを用いて,HRQOLを調査し,退院時のADLとの関連を検討する.そして,リハ開始時から退院後2ヶ月(以下,退院後)のHRQOLの変化を縦断的に調査し比較することである.
【方法】
対象は,脳腫瘍の治療目的に入院し,リハを実施した脳腫瘍患者とした.除外基準は,MMSEが23点以下,高次脳機能障害および全身状態の不良により,質問の回答が困難な患者とした.基本属性として,年齢,性別,脳腫瘍分類をカルテより調査した.ADLはFIMを用いて,リハ開始時と退院時に評価した.HRQOLは,EQ-5D-5Lを用いて,リハ開始時,退院時,退院後の3時点で評価した.EQ-5D-5Lは,移動の程度,身の回りの管理,普段の生活,痛み/不快感,不安/ふさぎ込みの5つの健康領域に分けられ,それぞれ5水準の選択肢から回答し,換算表を用いてQOL値(1.00を完全な健康状態〜-0.025)を算出する.統計解析は,リハ開始時と退院時のFIM合計得点の比較にWilcoxon符号順位検定を実施し,QOL値の3時点の比較にはFriedman検定を実施した.退院時のQOL値とFIM合計得点の相関分析には,Spearmanの相関係数を用いた.解析ソフトはEZRを使用し,有意水準は5%未満とした.本研究は当該施設の倫理審査委員会の承認を得ており,紙面上で本人に説明し同意を得た.
【結果】
対象は,12名(男3名,女9名),平均年齢は58.3±12.3歳であった.脳腫瘍分類は,膠芽腫3名,神経膠腫(WHO grade II/III)2名,WHO grade Iの脳腫瘍6名,中枢神経系原発悪性リンパ腫1名であった.FIM合計得点の平均は,リハ開始時92.7±21.6,退院時115.6±8.6であり,有意差を認めた(p <0.001).QOL値は,リハ開始時0.611±0.19,退院時0.672±0.19,退院後0.689±0.21であり,3時点で有意差を認めなかった(p = 0.323).退院時のFIM合計得点と退院時のQOL値には,有意な相関を認めた(r = 0.652,p = 0.021).
【考察】
本研究結果では,リハ介入をした脳腫瘍患者において,退院時のADLとHRQOLには,有意な正の相関を認めており,ADLがHRQOLに寄与する因子である可能性が示唆された.また,ADLは,退院時に有意な改善を示した一方で,HRQOLは経時的に有意な変化は認められなかった.HRQOLは包括的な尺度であり,ADL以外の要素の影響を受けている可能性が考えられる.そのため,今後は症例数を増やし,脳腫瘍特有の症状についても経時的な調査を継続し,より詳細に脳腫瘍患者のHRQOLに関連する因子を分析する予定である.