[PF-6-4] ポスター:がん 6WHO Grade分類によるグリオーマ患者の高次脳機能の特徴
【目的】
グリオーマ患者では,治療前から高次脳機能障害を合併していることが少なくない.高次脳機能障害は,患者のquality of lifeに直結するため,早期にその症状を把握することが患者支援に重要である.グリオーマはWHO Gradeの違いによって進行速度や生命予後が異なるが,高次脳機能の特徴については不明な点が多い.我々は以前WAIS-Ⅲ,WMS-Rといった詳細な神経心理検査を行い,GradeⅣの患者がGradeⅢの患者と比較して高次脳機能が低下していることを報告した.しかし,検査に時間を要するために治療緊急度の高い症例は対象から除外されていた.そこで,本研究ではグリオーマ患者をWHO Gradeに基づいて群分けし,ベッドサイドでも実施可能な神経心理検査を用いて,それぞれの群の高次脳機能の特徴について検討した.
【対象】
2018年4月1日〜2021年12月31日に当院に手術前の精査目的で入院した右利きのグリオーマ患者30名を対象とした.GradeⅡは10名(平均年齢45.6歳,左半球病巣6名,右半球病巣4名),GradeⅢは8名(平均年齢48歳,左半球病巣5名,右半球病巣3名),GradeⅣは12名(平均年齢52歳,左半球病巣6名,右半球病巣6名)であった.患者には研究の目的を説明し,書面で同意を得た.
【方法】
認知機能低下の鑑別は日本語版Montreal Cognitive Assessment(MOCA-J)を用いて行った.言語性記憶,視覚性記憶,遂行機能はそれぞれ日本語版Hopkins Verbal Learning Test–Revised(HTVL-R)の再生合計のT-score,Reyの複雑図形(ROCFT)3分後再生のT-score,Trail Making Test 日本版バージョンB(TMT-B-J)を用いて評価した.全ての検査の所要時間は約30分であった.MOCA-Jはcut-off point(26点)以下の人数の割合,その他の評価項目は-1SD以下および-2SD以下(TMT-J-Bの場合のみ1SD以上および2SD以上)の人数の割合をそれぞれGrade別に算出した.
【結果】
<MOCA-J>GradeⅡ:平均26±3.4点(cut-off point以下 40%),GradeⅢ:平均26.8±1.8点(cut-off point以下12.5%),GradeⅣ:平均23.3±6.4点(cut-off point以下66.7%)であった.
<HVLT-R 再生合計>GradeⅡ:T-score 平均47.3±11.7 ( -1SD 以下30 % , -2SD 以下0 % ) ,GradeⅢ:T-score平均45±13.3(-1SD以下37.5%,-2SD以下12.5%),GradeⅣ: T-score平均40.3±16(-1SD以下58.3%,-2SD以下25.5%)であった.
<ROCFT 3分後再生>GradeⅡ:T-score:平均57.1±15.9(-1SD以下30%,-2SD以下0%),GradeⅢ: T-score平均54.4±13.1(-1SD以下14.3%,-2SD以下0%),GradeⅣ:T-score平均45.3±22.8(-1SD以下50%,-2SD以下33.3%)であった.
<TMT-J-B>GradeⅡ:到達秒数平均60.5±22.2秒(1SD以上30%,2SD以上30%),GradeⅢ:到達秒数平均62.4±24秒(1SD以上50%,2SD以上12.5%),GradeⅣ:到達秒数平均133.7±106.3秒(1SD以上66.7%,2SD以上58.3%)であった.
【考察】
Low-grade 患者に比べてHigh-grade 患者は術前から高次脳機能が低下する傾向がある(Kasselら 2019).Yamawakiら(2021)やLiuら(2016)も,GradeⅣがGradeⅢよりも高次脳機能低下があると報告している.本研究結果はこれらの報告と同様であり,ベッドサイドでも行える簡便な神経心理検査でグリオーマ患者の高次脳機能を把握できた.本検査法は,治療緊急度の高い患者であっても短時間で患者の高次脳機能低下を適切に評価し得るという点で臨床的に有用である.
グリオーマ患者では,治療前から高次脳機能障害を合併していることが少なくない.高次脳機能障害は,患者のquality of lifeに直結するため,早期にその症状を把握することが患者支援に重要である.グリオーマはWHO Gradeの違いによって進行速度や生命予後が異なるが,高次脳機能の特徴については不明な点が多い.我々は以前WAIS-Ⅲ,WMS-Rといった詳細な神経心理検査を行い,GradeⅣの患者がGradeⅢの患者と比較して高次脳機能が低下していることを報告した.しかし,検査に時間を要するために治療緊急度の高い症例は対象から除外されていた.そこで,本研究ではグリオーマ患者をWHO Gradeに基づいて群分けし,ベッドサイドでも実施可能な神経心理検査を用いて,それぞれの群の高次脳機能の特徴について検討した.
【対象】
2018年4月1日〜2021年12月31日に当院に手術前の精査目的で入院した右利きのグリオーマ患者30名を対象とした.GradeⅡは10名(平均年齢45.6歳,左半球病巣6名,右半球病巣4名),GradeⅢは8名(平均年齢48歳,左半球病巣5名,右半球病巣3名),GradeⅣは12名(平均年齢52歳,左半球病巣6名,右半球病巣6名)であった.患者には研究の目的を説明し,書面で同意を得た.
【方法】
認知機能低下の鑑別は日本語版Montreal Cognitive Assessment(MOCA-J)を用いて行った.言語性記憶,視覚性記憶,遂行機能はそれぞれ日本語版Hopkins Verbal Learning Test–Revised(HTVL-R)の再生合計のT-score,Reyの複雑図形(ROCFT)3分後再生のT-score,Trail Making Test 日本版バージョンB(TMT-B-J)を用いて評価した.全ての検査の所要時間は約30分であった.MOCA-Jはcut-off point(26点)以下の人数の割合,その他の評価項目は-1SD以下および-2SD以下(TMT-J-Bの場合のみ1SD以上および2SD以上)の人数の割合をそれぞれGrade別に算出した.
【結果】
<MOCA-J>GradeⅡ:平均26±3.4点(cut-off point以下 40%),GradeⅢ:平均26.8±1.8点(cut-off point以下12.5%),GradeⅣ:平均23.3±6.4点(cut-off point以下66.7%)であった.
<HVLT-R 再生合計>GradeⅡ:T-score 平均47.3±11.7 ( -1SD 以下30 % , -2SD 以下0 % ) ,GradeⅢ:T-score平均45±13.3(-1SD以下37.5%,-2SD以下12.5%),GradeⅣ: T-score平均40.3±16(-1SD以下58.3%,-2SD以下25.5%)であった.
<ROCFT 3分後再生>GradeⅡ:T-score:平均57.1±15.9(-1SD以下30%,-2SD以下0%),GradeⅢ: T-score平均54.4±13.1(-1SD以下14.3%,-2SD以下0%),GradeⅣ:T-score平均45.3±22.8(-1SD以下50%,-2SD以下33.3%)であった.
<TMT-J-B>GradeⅡ:到達秒数平均60.5±22.2秒(1SD以上30%,2SD以上30%),GradeⅢ:到達秒数平均62.4±24秒(1SD以上50%,2SD以上12.5%),GradeⅣ:到達秒数平均133.7±106.3秒(1SD以上66.7%,2SD以上58.3%)であった.
【考察】
Low-grade 患者に比べてHigh-grade 患者は術前から高次脳機能が低下する傾向がある(Kasselら 2019).Yamawakiら(2021)やLiuら(2016)も,GradeⅣがGradeⅢよりも高次脳機能低下があると報告している.本研究結果はこれらの報告と同様であり,ベッドサイドでも行える簡便な神経心理検査でグリオーマ患者の高次脳機能を把握できた.本検査法は,治療緊急度の高い患者であっても短時間で患者の高次脳機能低下を適切に評価し得るという点で臨床的に有用である.