第56回日本作業療法学会

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ポスター

内科疾患

[PG-2] ポスター:内科疾患 2

Sat. Sep 17, 2022 12:30 PM - 1:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PG-2-2] ポスター:内科疾患 2地域生活事例に対してTranstheoretical Modelを用いた介入をし運動習慣の改善に至った事例

小沼 裕紀1 (1光陽会関東病院リハビリテーション科)

【序論】脳卒中・循環器病対策基本法では,内部障害へのリスク因子に対する予防的介入の重要性が述べられている.今回Transtheoretical Model(以下TTM)を用いた介入を実施し運動習慣の改善に至ったので報告する.
【症例】70代女性,身長:157.8㎝.体重:46.0㎏.疾患名: SAPHO症候群,高血圧,両股関節人工股関節術後.現病歴:当院入院X-20年に左大腿骨頸部骨折,X-18年前にSAPHO症候群の診断,X-14年前に右大腿骨頸部骨折,X年-2ヵ月前に低Na血症で前院入院,その後在宅退院し浴槽跨ぎ動作に不安がありリハビリ希望で当院地域包括病棟へ入院となった.
【作業療法評価】HDS-R:27点,Barthel Index:90点であった. 身体機能に関しては,Short Physical Performance Battery7点でフレイルもみられた.6分間歩行テスト:300m(以下6MWST),加えて家屋評価行い浴槽の跨ぎ動作なども転倒リスクもあった.運動セルフエフィカシー尺度:15点,面接時「運動しなきゃと思ってますよ」等の発言は聞かれたが具体的な運動量に関しての意見はなく,週3回の通所リハビリ以外は週に何度か近くの駅まで買い物に行くことと家事をこなす程度でそれ以外はほとんどテレビを見て過ごしていると話された,骨折の際は2000歩歩くよう指示されており歩数計で記録は行っていたが0~800歩とばらつきも大きかった.
【作業療法介入・経過】自宅内で指示された運動量は確保されなかったが, 通所リハビリは通えていること,発言に危機感を抱いており準備期と判断された.転倒や身体機能の低下を自覚したことから活動量の増加が必要だと考えている一方で計画性は低く,日により意欲もムラがあり具体的なセルフケアのイメージも乏しかった.そこで資料を用いて低活動による有害事象についての説明と,今まで続けていた歩数計に加え記録表の記載,自主練習の指導を行いセルフモニタリングを促すこととした.SAPHO症候群の影響から疼痛の訴えや易疲労性もあり毎日の自主練習は厳しいとの発言も聞かれたため相談の上で記録だけは毎日行うこととした.また,運動の恩恵を感じ行動を強化できるよう段階的な歩行距離の延長や評価結果のフィードバックを行った.
【結果】自主練習は日によりムラがあったが歩数の記録は毎日行え,リハビリがない日も歩行練習は実施できていた.また,退院前になると「その(記録)表をください,壁に貼って毎日記録すれば続けられそうです」等の発言が聞かれた.また運動セルフエフィカシー尺度21点で前回と異なり「雨の日は外に行けないから運動します」等具体的な発言もあった.転倒予防に関してはバスボードの導入,動作練習,屋外歩行練習等を行い,歩行も6MWST:330mで改善もみられた.
【考察】自己効力感の高い反面,継続的な運動療法の意義について理解が乏しく自覚できていない事例に対して,運動を強化できるよう記録表を用い運動量を再評価してもらう自己の再評価や可能な目標設定を行う等の行動への働きかけを行い運動習慣の強化に繋がった.また,本事例においては成功経験が強化因子となってpros(恩恵)となり,退院後の前向きな発言と行動に繋がったと考えられる.本事例においてはこだわりが強く作業療法時に運動に関連した体験とTTMに即した介入を行うことで運動に関してポジティブな考えを得られたと考えられる.
【結語】内部障害のリスク因子を持つ対象者に対しては,ADL・IADLの改善を目標とした介入と共に地域生活に帰った際にセルフケアの向上を図れるよう行動変容を促すことが重要と考える.事例においては運動習慣の改善に繋がり肯定的な発言も聞かれたが,課題として生活活動の活動量改善に向け資料やMETs等を用いて説明したが十分な理解を得られることが出来なかった.