[PH-1-5] ポスター:精神障害 1アルコール依存症患者の再入院のリスクの予測
入退院を繰り返さないために
【はじめに】アルコール依存症からの回復には断酒が基礎とされる.しかし患者は入院治療を終えて退院をしても,退院後再び飲酒を繰り返し,再入院の道をたどる者が少なくない.またアルコール依存症は入退院を繰り返しながら重症化をして,病気から派生する生活障害に加えて,復職困難や家庭の崩壊を招きやすい疾患と言われている.患者を取り巻くさまざまな要因から,入退院の繰り返しに影響を及ぼすリスク要因を特定することは,断酒生活の支援につながると考えられる.
【目的】アルコール依存症患者が入退院を繰り返すリスク要因を明らかにし,再入院を予防するための援助のあり方を考察する.
【方法】大阪府のアルコール依存症専門病院に入院している患者49名(男=43;女=6)を対象に質問紙調査を実施した.質問紙には,入院回数,アルコール依存症と診断されてからの経過月数,家族構成,断酒会の参加を含め,13項目について尋ねた.入院回数については,1回から5回までは実数値,6回以上については「6回以上」として回答を求めた.
本研究は大阪河崎リハビリテーション大学の研究倫理委員会の承認を得た上で実施した.対象者には書面にて本研究の目的を説明し,同意を得た上で質問紙への回答を求めた.
【結果】入院回数の平均は2.48回(SD=1.86),依存症と診断されてからの経過月数の平均は68か月(SD=120.92;範囲=1-512か月)であった.家族構成については,単身者が26名,配偶者や親,子どもなど同居者のいる方が19名であった.経過月数と断酒会の参加を説明変数,入院回数を被説明変数として重回帰分析を実施した結果,経過月数が有意であり,診断後の経過月数が1か月長くなることで入院のリスクが1.64上昇することが示された(t= 3.94, p< .0001).断酒会への参加の有無は有意ではなかった(t= -1.17, p= .25).しかし,経過月数と断酒会への参加の交互作用がみられ,断酒会に参加している患者は,経過月数が1か月長くなることで入院のリスクが1.29下がることが示された(t= -3.27, p= .002).また,経過月数と家族構成を説明変数として重回帰分析を実施したところ,家族構成は有意傾向にとどまった (t= -1.83, p= .08 ).経過月数と家族構成の交互作用は有意ではなかった(t= 1.61, p= .12).
【考察】アルコール依存症と診断されてからの経過月数が長くなると入院リスクが上昇するという結果から,初回入院時の支援,患者との関わりの重要性が示唆された.また経過月数が長くても断酒会への参加が入院リスクを下げるという結果から,入退院を繰り返さないためには,断酒会等の自助グループへの早期の参加と長期の定着を図っていく必要性があると考えられる.断酒の継続における単身者への支援の困難さ(平原ら 2019)や,家族や婚姻の影響の大きさ(片岡ら 2009)についての報告がある一方,本研究では,家族構成が入院回数に及ぼす効果は有意傾向にとどまり,同居者がいるというだけでは再入院の予防に直接的な影響はないことが推察された.このことから,患者と同居する家族による病気や患者への理解の促進や,家族に対する支援および指導(家族教育)が,アルコール依存症患者の再入院に影響を及ぼすことが考えられる.
【目的】アルコール依存症患者が入退院を繰り返すリスク要因を明らかにし,再入院を予防するための援助のあり方を考察する.
【方法】大阪府のアルコール依存症専門病院に入院している患者49名(男=43;女=6)を対象に質問紙調査を実施した.質問紙には,入院回数,アルコール依存症と診断されてからの経過月数,家族構成,断酒会の参加を含め,13項目について尋ねた.入院回数については,1回から5回までは実数値,6回以上については「6回以上」として回答を求めた.
本研究は大阪河崎リハビリテーション大学の研究倫理委員会の承認を得た上で実施した.対象者には書面にて本研究の目的を説明し,同意を得た上で質問紙への回答を求めた.
【結果】入院回数の平均は2.48回(SD=1.86),依存症と診断されてからの経過月数の平均は68か月(SD=120.92;範囲=1-512か月)であった.家族構成については,単身者が26名,配偶者や親,子どもなど同居者のいる方が19名であった.経過月数と断酒会の参加を説明変数,入院回数を被説明変数として重回帰分析を実施した結果,経過月数が有意であり,診断後の経過月数が1か月長くなることで入院のリスクが1.64上昇することが示された(t= 3.94, p< .0001).断酒会への参加の有無は有意ではなかった(t= -1.17, p= .25).しかし,経過月数と断酒会への参加の交互作用がみられ,断酒会に参加している患者は,経過月数が1か月長くなることで入院のリスクが1.29下がることが示された(t= -3.27, p= .002).また,経過月数と家族構成を説明変数として重回帰分析を実施したところ,家族構成は有意傾向にとどまった (t= -1.83, p= .08 ).経過月数と家族構成の交互作用は有意ではなかった(t= 1.61, p= .12).
【考察】アルコール依存症と診断されてからの経過月数が長くなると入院リスクが上昇するという結果から,初回入院時の支援,患者との関わりの重要性が示唆された.また経過月数が長くても断酒会への参加が入院リスクを下げるという結果から,入退院を繰り返さないためには,断酒会等の自助グループへの早期の参加と長期の定着を図っていく必要性があると考えられる.断酒の継続における単身者への支援の困難さ(平原ら 2019)や,家族や婚姻の影響の大きさ(片岡ら 2009)についての報告がある一方,本研究では,家族構成が入院回数に及ぼす効果は有意傾向にとどまり,同居者がいるというだけでは再入院の予防に直接的な影響はないことが推察された.このことから,患者と同居する家族による病気や患者への理解の促進や,家族に対する支援および指導(家族教育)が,アルコール依存症患者の再入院に影響を及ぼすことが考えられる.