第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

精神障害

[PH-3] ポスター:精神障害 3

2022年9月16日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PH-3-4] ポスター:精神障害 3若年層を中心とした睡眠と反すうの関連

入眠困難(入眠障害)に着目して

福田 健一郎1日南 雅裕2沖 英一3 (1医療法人栄寿会 真珠園療養所,2医療法人成蹊会 佐世保北病院,3医療法人和仁会 和仁会病院)

<はじめに>
 反すう(反すう性思考)とは,物事を繰り返し考える傾向のことで,例えば,何らかの目的が阻害されたときになかなか解決策が見つからないと,解決策を考えるのでなく,目的そのものやそのときの感情について考えるようになり,それによって反すうが生じ,目的を諦めることができずに目的を達成する方法を見つけることができないと無力感に陥る(Martinら,1989).反すうには「ポジティブな反すう」と「ネガティブな反すう」とがあり,ネガティブな反すうはうつ状態との関連が強い(伊藤ら,2001).これまで抑うつの改善には思考の内容に着目した認知再構成法を主体とする認知行動療法が主流で,否定的認知の“内容”を中心的に取り上げ,ネガティブな反すうといえる否定的認知の“頻度”にはあまり注目してこなかったが,抑うつへの介入として否定的認知の頻度の重要性が伊藤(2004年)によって指摘されている.
 本邦において,昼過ぎから夜にかけて高抑うつ者は低抑うつ者よりも反すうをしやすいことが高野ら(2010年)によって示された.また,藤井ら(2008年)が410名の女子大生に対し行なった調査ではネガティブな反すう傾向は入眠までの時間に関係したと指摘した.入眠困難を主訴とする不眠症の有病率は15歳から25歳にかけて急激に増加する(Kayukawaら,1998)(Asaiら,2006).若年を調査した報告(福田ら,未発表)(kaneitaら,2006)でも入眠障害が多かったとしている.しかし,反すうと睡眠の関連について以降,本邦では報告が少なく,十分に明らかにされているとはいえない.これらのことから,今回,若年層の反すうと睡眠の関連,特に入眠困難(入眠障害)との関連について調査したので,報告する.
<対象および方法>
 対象はS専門学校の学生で,40歳以上を除外し同意が得られたのは219名であった.内訳は女性208名,男性11名で,平均年齢は19.8歳であった.
使用した尺度は「日本語版不眠重症度質問票(以下,ISI-J)」と「ネガティブな反すう尺度(以下,NRS)」である.
使用した統計処理ソフトはStat Viewで,Mann-WhitneyのU検定を用いた.
 なお,実施にあたっては対象者に口頭にて説明し回答をもって同意とした.また,当院倫理委員会の承認も得ている(2021年12月15日付).
<結果>
 ISI-Jは平均8.0点であった.うち,ISI-Jがカットオフ値10点を超えていたのは76名(34.7%)であった.「入眠困難がある」と答えた者は106名(48.4%)で,入眠困難が中等度以上は61名(27.9%)であった.NRSは平均34.5点であった.
 ISI-Jのカットオフ値で分けてNRSを比較したところ,有意差がみられた(P=0.0040).
また,入眠困難の中等度以上で比較すると,NRSに有意差がみられた(P=0.0051).
<考察>
 不眠状態とされるISI-Jがカットオフ値10点以上の者はネガティブ反すうの持続傾向が高いことが示唆された.特に,入眠困難が中等度以上の者はネガティブ反すうの持続傾向がみられたことから,ネガティブな反すうは入眠困難と関連することが示唆された.Wattsら(1994年)は入眠困難者は入眠時にネガティブな思考が生じるとし,Borkovec(1982年)も入眠困難者は不快な侵入的思考や過度でコントロールできない心配をする傾向が認められるとしており,入眠困難には入眠時の認知的問題が関連している可能性があると思われる.