第56回日本作業療法学会

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ポスター

精神障害

[PH-8] ポスター:精神障害 8

Sat. Sep 17, 2022 2:30 PM - 3:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PH-8-3] ポスター:精神障害 8入院中の個別作業療法は統合失調症患者の社会機能を改善する:5年間のフォローアップ研究

島田 岳1小林 正義2稲垣 佑輔3下岡 佑子4石原 郁代5 (1医療法人清泰会メンタルサポートそよかぜ病院,2信州大学大学院医学系研究科,3長野県立こころの医療センター駒ヶ根,4社会医療法人栗山会飯田病院,5医療法人愛生会松岡病院)

目的:統合失調症治療の主目標は,社会機能の改善である.我々は,統合失調症患者の転帰を改善するための個別作業療法(IOT)プログラムを開発した.入院中の通常治療である集団作業療法(GOT)にIOTを追加した介入が,認知機能と内発的動機づけを改善させ,退院後の再入院率を低下させることを検証した.本研究では,退院から5年間のフォローアップ調査により,入院中のIOTの社会機能に対する長期的効果を評価した.
方法:本研究では,統合失調症の新規入院患者をGOT+IOT群またはGOTのみ群にランダムに割付けた多施設共同臨床試験に続いて,退院後から5年間の前向き調査を実施した.フォローアップ期間中,全対象者は各施設での通常治療を受けた.主要アウトカムは,ベースラインから退院5年後のフォローアップまでの社会機能評価尺度(SFS)の変化であった.その他のアウトカムには,人口統計的情報,認知機能(BACS,SCoRS),内発的動機づけ(IMI),全般的機能(GAF),精神症状(PANSS),治療満足度(CSQ-8)を含めた.本研究は当該施設の倫理委員会の承認を得た.
結果:ランダム化された136人のうち,102人(年齢42.55[SD=10.54]歳,男性52.94%,入院回数5.19[SD=10.10]回,GOT+IOT群47.06%)が退院から5年後のフォローアップを完了した.反復測定混合モデルにおいて,GOT+IOT群では,GOTのみ群と比較して,ベースラインからフォローアップの間に, SFS におけるひきこもり( F=16.48 , p<0.001 , ηp2=0.098 ) , 対人関係(F=14.84,p<0.001,ηp2=0.092),社会参加(F=23.33,p<0.001,ηp2=0.134),娯楽(F=14.48,p<0.001,ηp2=0.030),自立(能力)(F=8.42,p=0.005,ηp2=0.046),合計(F=23.87,p<0.001,ηp2=0.124)の有意な改善がみられた.多変量重回帰分析では,作業療法の種別(GOT+IOT群またはGOTのみ群)は,SFSのひきこもり,対人関係,社会参加,合計と有意に関連していた.また,SFS合計には,入院から作業療法開始までの期間(β=-0.18,95%CI=-0.98--0.01,p=0.046),作業療法の種別(β=0.21,95%CI=1.17-17.93,p=0.026),BACS 運動( β=0.22 , 95%CI=0.73-5.82 , p=0.012 ) , BACS 遂行機能( β=0.22 , 95%CI=0.71-7.12,p=0.017),IMI興味/楽しみ(β=0.21,95%CI=0.10-1.30,p=0.023)が有意に関連していた.
結論:本研究は,統合失調症の入院治療において,GOTにIOTを追加すると,GOTのみと比較して,退院から5年後の複数の社会機能領域が改善されることが示され,社会機能を改善するIOTの長期的効果に関する根拠を提供する.また,入院早期からのIOTを含めた認知機能と内発的動機づけの改善を促進させる累積的介入は,退院後の社会機能の改善に有益であることが示唆された.