[PH-8-4] ポスター:精神障害 8"聞くこと"がもたらした現実感
個別SST・OTを通して
【序論】今回,統合失調症のA氏が対人関係に悩み改善したいと希望,作業療法(以下OT)にて個別でのSST・OTを実施した結果,変化がみられたので報告する.尚,A氏と当院倫理委員会の承諾を得ている.
【症例】A氏30代男性.統合失調症.職歴あり.初発20代,陽性症状が出現し入退院を3度繰り返す.X年クロザリル導入目的で当院に任意入院,OT開始するが発熱により中断.X年+5カ月に服薬調整後OT再開となる.
【初期評価】A氏は「会話の仕方を忘れた」「話しかけるタイミングが分からない」「話す話題づくりをどうすればよいか分からない」等の悩みから,「他の人と話が出来るようになりたい」と希望.病棟生活では,他患に対し口調強く攻撃的で,病棟スタッフへは対人関係の質問をするも話題が頻繁に変わる事がある.作業療法士(以下OTR)は対人関係の再獲得・汎化をOT目標に,SSTの基本訓練モデルをA氏に合わせ一部変更,”話を聞く・話しかける・謝る・断る・世間話をする”の順に計画した.尚,感染症対策により集団のプログラムは避け個別にて実施予定.
【経過】SSTでは週2回,”話を聞く”を実施.A氏はOTRに質問をしようとせずに「某アーティスト(以下:U)が人を殺す場面を見てしまったから自分やOTRも狙われている」と事実と異なることを話すため,OTRはA氏と相談しSST中はテーマに集中する事を伝える.Uに関連することや病棟生活での困りごとなどテーマとは異なる話は,個別でOTRが聞く事(個別OT)とした.宿題はOTRが事前に病棟Nsに協力を依頼,資料を見ても良いことを伝えた.その後はテーマを順番に実施.”話しかける”ではA氏は相手の状況を確認せずに話しかけていたため,一言声をかけるように提案した.”謝る”では「前に口が悪かったりしたから謝りたい」と他者に攻撃的だった過去を反省,OTRが相手役で謝る練習をし,”世間話をする”は「毎回同じ話題もしんどいから・・」と言い,OTRが世間話関連の資料を渡しTVやご飯など毎回変化する内容にしてはと提案.その後もA氏はテーマをOTR,宿題をOTR・Nsと取り組み,予定のテーマを終えSSTは目標を達成したため修了とした.個別OTはA氏がOTRに声をかけ,ほぼ毎日実施.A氏はUに関連する事を話し,OTRは「意見は出せないけど聞く事は出来る」という旨を伝え否定も肯定もせず聞いた.そのやり取りが約1か月続いた後,A氏はUに関連する事は他患・病棟スタッフに理解してもらえず「話が続かない」「上手く話せない」とOTRに相談.OTRはSSTの”話を聞く・世間話をする”を試すよう提案した.その後,A氏は他者に趣味を聞き,話を続ける事ができたと言い,以降それを意識し会話している様子で,Uに関連する発言は徐々に減った.退院の方針が決まり,個別OTは注意サイン・クライシスプランの作成へ移行した.また,病棟生活では,「スタッフと趣味の話を出来るようになった」と言い,Uの殺人は「ニュースになってないから大丈夫」と自身で対処法を見つけた様子.A氏はOTRと出会うと「今いいですか」と話しかけ,「趣味は?」「好きなアニメは?」と話を続けるようになった.
【結果】X年+9カ月退院 個別SST28回 個別OT40回
初期評価から変化点のみ記載
ACIS/身体性:2.6→3点 情報の交換:2.2→3.4点 関係:1.1→2.8点
ケアアセスメントOT協会版第3版/3.5→4.0点
PANSS(陽性症状)/合計点:23→17点
【考察】OTRが聞くことで受容される経験となり,安心感の蓄積が信頼関係に繋がった.また,悩みをOTRに打ち明けたことで早期に現実感をもたらした.そして,SSTや個別OTに主体的に取り組み,生活場面に沿った体験を繰り返したことが対人関係に対する気づきになったと考える.
【症例】A氏30代男性.統合失調症.職歴あり.初発20代,陽性症状が出現し入退院を3度繰り返す.X年クロザリル導入目的で当院に任意入院,OT開始するが発熱により中断.X年+5カ月に服薬調整後OT再開となる.
【初期評価】A氏は「会話の仕方を忘れた」「話しかけるタイミングが分からない」「話す話題づくりをどうすればよいか分からない」等の悩みから,「他の人と話が出来るようになりたい」と希望.病棟生活では,他患に対し口調強く攻撃的で,病棟スタッフへは対人関係の質問をするも話題が頻繁に変わる事がある.作業療法士(以下OTR)は対人関係の再獲得・汎化をOT目標に,SSTの基本訓練モデルをA氏に合わせ一部変更,”話を聞く・話しかける・謝る・断る・世間話をする”の順に計画した.尚,感染症対策により集団のプログラムは避け個別にて実施予定.
【経過】SSTでは週2回,”話を聞く”を実施.A氏はOTRに質問をしようとせずに「某アーティスト(以下:U)が人を殺す場面を見てしまったから自分やOTRも狙われている」と事実と異なることを話すため,OTRはA氏と相談しSST中はテーマに集中する事を伝える.Uに関連することや病棟生活での困りごとなどテーマとは異なる話は,個別でOTRが聞く事(個別OT)とした.宿題はOTRが事前に病棟Nsに協力を依頼,資料を見ても良いことを伝えた.その後はテーマを順番に実施.”話しかける”ではA氏は相手の状況を確認せずに話しかけていたため,一言声をかけるように提案した.”謝る”では「前に口が悪かったりしたから謝りたい」と他者に攻撃的だった過去を反省,OTRが相手役で謝る練習をし,”世間話をする”は「毎回同じ話題もしんどいから・・」と言い,OTRが世間話関連の資料を渡しTVやご飯など毎回変化する内容にしてはと提案.その後もA氏はテーマをOTR,宿題をOTR・Nsと取り組み,予定のテーマを終えSSTは目標を達成したため修了とした.個別OTはA氏がOTRに声をかけ,ほぼ毎日実施.A氏はUに関連する事を話し,OTRは「意見は出せないけど聞く事は出来る」という旨を伝え否定も肯定もせず聞いた.そのやり取りが約1か月続いた後,A氏はUに関連する事は他患・病棟スタッフに理解してもらえず「話が続かない」「上手く話せない」とOTRに相談.OTRはSSTの”話を聞く・世間話をする”を試すよう提案した.その後,A氏は他者に趣味を聞き,話を続ける事ができたと言い,以降それを意識し会話している様子で,Uに関連する発言は徐々に減った.退院の方針が決まり,個別OTは注意サイン・クライシスプランの作成へ移行した.また,病棟生活では,「スタッフと趣味の話を出来るようになった」と言い,Uの殺人は「ニュースになってないから大丈夫」と自身で対処法を見つけた様子.A氏はOTRと出会うと「今いいですか」と話しかけ,「趣味は?」「好きなアニメは?」と話を続けるようになった.
【結果】X年+9カ月退院 個別SST28回 個別OT40回
初期評価から変化点のみ記載
ACIS/身体性:2.6→3点 情報の交換:2.2→3.4点 関係:1.1→2.8点
ケアアセスメントOT協会版第3版/3.5→4.0点
PANSS(陽性症状)/合計点:23→17点
【考察】OTRが聞くことで受容される経験となり,安心感の蓄積が信頼関係に繋がった.また,悩みをOTRに打ち明けたことで早期に現実感をもたらした.そして,SSTや個別OTに主体的に取り組み,生活場面に沿った体験を繰り返したことが対人関係に対する気づきになったと考える.