第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-1] ポスター:発達障害 1

2022年9月16日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PI-1-2] ポスター:発達障害 1放課後等デイサービスにおける重要な他者に焦点化したCognitively Oriented to daily Occupational Performance(CO-OP)の実践

鈴木 哲理12 (1放課後等デイサービスアトリエあいだっく川崎,2昭和大学大学院保健医療学研究科博士後期課程)

【背景・目的】
 発達性協調運動障害に対するエビデンスとして,活動/参加志向的アプローチ,具体的にはCognitively Oriented to daily Occupational Performance; CO-OPなどが知られている(Blank et al, 2019).CO-OPは2回のみの介入での効果の報告(塩津, 2019)や,保護者などの「重要な他者」による実践例も報告されており(Polatajko & Mandich, 2004; Chan, 2007),作業療法士による介入が少ない状況であっても効果が期待できる.しかしながら,本邦の放課後等デイサービスにおける,これらの介入形態に関する知見はまだ少ない.そこで本報告の目的は,放課後等デイサービスにおける,重要な他者に焦点を当てたCO-OPの実践を通じて,CO-OPの臨床有用性を検討することである.なお本報告における,利益相反関連事項はない.
【方法】
1. 対象児
 対象児は放課後等デイサービスを利用しており,自閉症スペクトラム障害の診断のある,不器用さが疑われる小学校低学年の児童であった.本報告はヘルシンキ宣言に基づき,保護者に対して,口頭および書面で承諾を得ている.
2. 使用評価
 対象児の主観的な作業遂行をCanadian Occupational Performance Measure; COPM (Law et al, 2014)で評価した.COPMで選択した作業について,作業遂行の質をPerformance Quality Rating Scale; PQRS(Martini et al, 2015)で評価した.PQRSにはPQRS-GとPQRS-ODの2種類があるが,本報告ではPQRS-Gを採用した.またCO-OPの目的である般化と転移については,観察評価をもとに検討した.
3. 介入プロトコル
 介入期間は2ヶ月間で,計7回,各1時間で実施された.介入に関与したのは担当作業療法士1名および,重要な他者である活動担当スタッフ1名(児童発達支援管理責任者)であった.活動担当スタッフは,担当作業療法士からCO-OPに関するレクチャーとスーパーバイズを受けた者であった.塩津(2019)による報告を参考に,作業療法士が1回目,4回目,7回目のみに介入し,それ以外の介入は活動担当スタッフが行った.1回目と7回目の介入では作業療法士がCOPMとPQRSを実施し,1回目と4回目の介入では,対象児と認知ストラテジーの確認を行った.それ以外の介入については,作業療法士と密に連携を図った上で,活動担当スタッフが実施した.介入では対象児がCOPMで選択した「工作」について,発見した認知ストラテジーをもとに,ハサミやテープの使い方などの工作スキルに関する訓練を実施した.
【結果および考察】
 COPMの遂行度の平均点は初回評価時3.7点,最終評価時6.7点で,3.0点の変化がみられた.COPMの満足度の平均点は初回評価時5.3点,最終評価時7.0点で,1.3点の変化が見られた.PQRSは初回評価時3点,最終評価時6点で,3点の変化が見られた.また最終介入時には訓練中扱わなかった「定規を使って展開図の線を引く」という,工作スキルへの近位転移と考えられる場面も確認された.
 先行研究よりCOPMは2点の変化(Law et al, 2014),PQRSは3点の変化(Martini et al, 2015)があれば真の変化があったと考えられている.本報告では,満足度以外の評価指標において変化量を上回っていため,重要な他者によるCO-OPの介入には一定程度の効果があったことが示唆される.CO-OPの介入効果のエビデンス構築のために,今後もさらなる検証が必要である.