第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-2] ポスター:発達障害 2

2022年9月16日(金) 13:00 〜 16:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PI-2-3] ポスター:発達障害 2幼児における問題行動と感覚処理特性および睡眠の構造的関連性の検討

倉澤 茂樹1丹葉 寛之2立山 清美3木村 大介4岩永 竜一郎5 (1福島県立医科大学保健科学部,2関西福祉科学大学保健医療学部,3大阪府立大学大学院総合リハビリテーション学研究科,4関西医療大学保健医療学部,5長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)

【はじめに】我々は第55回日本作業療法学会において,幼児の感覚処理特性および不適切な睡眠が問題行動に影響するとの知見を示した.今回,幼児の睡眠障害についてサブタイプごとに検討すべく,子どもの眠りの質問票(以下,JSQP)を用い解析をすすめたので報告する.
【目的】本研究は,幼児の感覚処理特性と不適切な睡眠が問題行動につながるとの仮説モデルを構築すること,さらに問題行動の様態(外向尺度・内向尺度)に分けて比較検討することを目的とした.
【方法】大阪府下の保育園と認定こども園(4事業所)に在籍する3歳以上6歳未満の幼児を対象とした.保育者の協力を得て保護者に本研究の説明書,同意書,同意撤回書,日本版感覚プロファイル短縮版(以下,SSP),JSQP,行動チェックリスト保護者用(以下,CBCL)を配布し,同意書の記入をもって研究参加の意思を確認した.解析方法は,因子分析(主因子法,直接オブリミン回転)によりSSPとJSQPの類似した変数を抽出し,変数の相互関係を把握した.その後,得られた因子および年齢・性別を変数に加え共分散構造分析によって仮説モデルを構築した.モデルの適合度はGoodness of Fit Index(GFI)およびRoot Mean Squares Error of Approximation(RMSEA)を採用し,標準化係数(以下,パス係数)を算出し,各変数間の関連性を確認した.さらにサブ解析として,問題行動である外向尺度(攻撃的行動など)と内向尺度(うつや不安など)を目的変数とし,各モデル内のパス係数から変数間の関連性を検討した.統計解析にはIBM社SPSS version27.0およびAmos 28.0を使用し,有意水準5%未満とした.なお,本研究は研究代表者の前所属先に設置されていた研究倫理委員会の承認を得て実施し,開示すべき利益相反する企業等はない.
【結果】依頼した602名のうち,229名より研究参加の同意が得られた(参加率38.0%).SSP・JSQP・CBCLの適応年齢外の34名,欠損値のあった16名,調査開始時に発達障害の診断がされた11名を除外し,168名を解析対象とした.因子分析では第1~4因子が抽出され,Kaiser-Meyer-Olkinの測度は0.718,バーレットの球面性検定はp<0.001であり,因子分析を適用することの妥当性が保証された.専門家会で協議し,第1因子「低反応」,第2因子「むずむず足症状」,第3因子「睡眠の問題」,第4因子「感覚過敏」とした.共分散構造分析において構築した仮説モデルの適合度はGFI=0.862,RMSEA=0.087と許容できる値を示した.「問題行動」に対して「低反応」「感覚過敏」「睡眠の問題」の直接効果が確認された(パス係数はそれぞれ,0.65,0.23,0.18).また,「感覚過敏」「睡眠の問題」は「低反応」を介し,「むずむず足症状」は「睡眠の問題」を介して「問題行動」に間接効果を認めた.外向尺度を目的変数としたモデル(GFI=0.882,RMSEA=0.080)では,外向尺度に対する「低反応」の直接効果は強められたが(パス係数,0.74),「感覚過敏」の直接効果はパス係数0.03と低く,有意差も認められなかった.一方,内向尺度を目的変数としたモデル(GFI=0.882,RMSEA=0.079)では,「感覚過敏」「低反応」「睡眠の問題」の直接効果が確認された(パス係数はそれぞれ,0.45,0.37,0.19).
【考察】幼児の感覚処理特性と不適切な睡眠が問題行動につながるとの仮説モデルの適合性が示された.外向尺度・内向尺度を目的変数としたモデルでは,注目すべきパス係数の差異が認められた.この知見は,うつや不安を示す幼児に対する感覚過敏や不適切な睡眠への介入の重要性を示している.