第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-5] ポスター:発達障害 5

2022年9月17日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PI-5-2] ポスター:発達障害 5作業療法士と小学校の通級による指導を担当する教諭の連携の現状

作業療法士への質問紙調査

押野 修司1 (1埼玉県立大学保健医療福祉学部 作業療法学科)

【はじめに】
 小学校通常学級における発達障害児の存在により,指導の工夫はもとより,通級による指導(以下,通級)の充実,医療,保健,福祉等の機関との連携強化,教諭への発達障害に対する知識,指導技術の普及が教育機関に強く求められてきた(文部科学省,2012).さらに「初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド」(文部科学省,2020)が発刊され,外部専門家として作業療法士の職名が記載された.一方,小児を専門とする作業療法士は,学校適応支援に携わる者は少ないことが分かっている(助川・伊藤,2019).医療,保健,福祉等の機関との連携強化のためには,発達障害児を担当する作業療法士と通級担当の教諭との連携の現状と今後の方向性の把握は不可欠である.本研究は,作業療法士と小学校の通級を担当する教諭の連携の現状を明らかにし,今後の展開の方向性について示唆を得ることを目的に実施した.
【方法】
 対象は日本で小児作業療法を実施している作業療法士とし,調査期間は2022年1月17日から2月28日とした.調査項目は,研究協力者属性,通級に通っている児童の担当の有無,通級を担当する教諭との連携の有無,連絡手段,連携での困り事(自由記述),連携に対する意見(自由記述)等とし,郵送質問紙調査により2022年1月1日現在の状況を尋ねた.分析にはSPSSとKH Coderを用いた.なお,調査に際しては一般社団法人日本作業療法士協会の所定の手続きにより施設名簿使用の許可を得た.また,所属大学の研究倫理委員会の承認を得た(通知番号21071,2021-12-28).
【結果】
 日本全国の1054施設中345施設から回答が得られた(回収率32.7%).雇用形態は,常勤313人(90.7%),非常勤26人(7.5%),発達障害児経験年数は,10.9±9.1年であった.通級に通っている児童を,担当している188人(54.5%),担当していない157人(45.5%)
であった.通級を担当する教諭とは,連携している99人(28.7%),連携していない243人(70.4%)であった.通級に通っている児童を担当していて,通級を担当する教諭と連携している92人(48.9%),連携していない94人(50.0%)であった.施設種別と通級を担当する教諭との連携ありの件数は,病院17人(9.9%),診療所13人(7.6%),児童発達支援事業所38人(22.2%),医療型児童発達支援事業所3人(1.8%),放課後等デイサービス50人(29.2%),児童発達支援センター17人(9.9%),障害児入所施設6人(3.5%),その他(保育所等訪問支援事業等)27人(15.8%)であった.連絡手段は,電話67件(29.3%),担当者会議47件(20.5%),定期訪問39件(17.0%),文書38件(16.6%),メール5件(2.2%),FAX5件(2.2%),LINE1件(0.4%),その他27件(11.8%)であった.連携に関する困り事は,出現回数の最も多い順に「時間」,「先生」,「理解」などで, 具体的には,「先生が作業療法を理解するのに時間を要する」,「連絡したくてもお互いの時間帯が合わない」などがみられた.連携に関する意見は,出現回数の最も多い順に「連携」,「学校」,「支援」などで,「連携は不十分」,「連携は必要」,「連携により,良いかかわりができる」,「先生が連携を望んでいるか心配」等がみられた.
【考察】
 通級を担当する教諭と連携している作業療法士は3割弱と非常に少ないのは,福祉施設に所属する作業療法士が連携の中心で,学校関係者に作業療法士の存在や役割が知られていないこと,連絡する時間帯が合わないなどが影響していると考えられた.学校関係者の作業療法士の認知度を高める工夫や,連携に関する時間の確保などの環境整備が今後必要と考える.