第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

発達障害

[PI-8] ポスター:発達障害 8

2022年9月17日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PI-8-3] ポスター:発達障害 8乳幼児期における母子間の身体接触と母子関係との関連性の文献レビュー

畠山 久司12山西 葉子3伊藤 祐子3 (1東京保健医療専門職大学リハビリテーション学部 作業療法学科,2東京都立大学大学院人間健康科学研究科 作業療法科学域 博士前期課程,3東京都立大学大学院人間健康科学研究科 作業療法科学域)

【はじめに】発達初期の母子間の身体接触は,アタッチメントの形成や母子関係の構築のために非常に重要である.母子間の身体接触に焦点をあてた研究は,ベビーマッサージなどが代表として挙げられる.しかし,身体接触と言ってもその方法は多様であり,身体接触が母子関係に及ぼす効果に関しては十分に明らかになっていない.
【目的】本邦における,乳幼児期の母子間の身体接触を介した遊びや関わりと母子関係との関連性を包括的に調査することで,発達初期における母子間の身体接触の重要性を明らかにすることを目的とする.
【方法】本研究は,Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISM)声明に準拠し,母子間の身体接触を介した遊びや関わりと母子関係の関連性に関する文献レビューを実施した.文献検索データベースは,医学中央雑誌Web版,メディカルオンライン,CiNii Articlesを用い,1992〜2022年の30年間,原著論文を対象とした.検索対象の概念を,♯1親子間の身体接触を介した遊びや関わり,♯2親子,としANDで組み合わせ検索を行った.具体的な検索用語は,♯1は,(スキンシップ,タッチケア,抱っこ,身体接触,ふれあい,skin-to-skin contact,母子接触,皮膚接触,affectionate touch,感覚運動遊び,ふれあい遊び,じゃれつき,じゃれつき遊び,ベビーマッサージ,ベビーエクササイズ,ベビービクス),♯2は,(親子,母子)とした.包含基準は,対象地域が日本,乳幼児期の定型発達児を対象,身体接触を介した遊びや関わりと母子関係を調査したものとした.新生児期や低体重出生児が対象,質的研究は除外した.スクリーニング後,入手可能な文献を最終的な分析対象とした.対象文献から,母子間の身体接触を介した遊びや関わりと母子関係に関連する内容を抽出し分析した.
【結果】検索は2022年1月に行われ,合計で885編が該当した.最終的に29編が分析対象となり,52個の内容が抽出された.研究対象は,乳児21編,乳幼児4編,幼児4編であった.身体接触の分類は,ベビーマッサージ9編,タッチ4編,タッチケア・インファントマッサージは各3編,スキンシップ・くすぐり遊び・抱っこは各2編,手遊び・抱きしめる・ふれあい体操・ふれあい遊びは各1編であった.抽出した内容を,以下の6個のカテゴリーに分類した【括弧内は内容の個数を示す】.(1)育児協力が身体接触に及ぼす影響【2】,(2)母親自身の要因が身体接触に及ぼす影響【7】,(3)母親自身に与える影響【17】,(4)母子関係に与える影響【6】,(5)母親の児に対する感情に及ぼす影響【8】,(6)母親の育児に及ぼす影響【12】.各カテゴリーの概要を以下に示す.(1)育児協力者の存在が児との身体接触を増加させる.(2)母親の抑うつや育児ストレスが児との身体接触を減少させる.(3)母親の産後うつ・気分・不安・メンタルヘルスを改善させる,母親の生理的な変化を及ぼす.(4)アタッチメントを増大させる,母子相互交流を促進する.(5)児に対する肯定的感情の増大と否定的感情を減弱させる.(6)育児に対する不安やストレスを低下させる,育児自己効力感や育児に対する自己評価を向上させる.
【考察】母子間の身体接触を介した遊びや関わりの方法は多様であるが,母子関係,母親の児に対する感情,育児面など多面的に効果があることが明らかとなり,乳幼児期の母子間の身体接触の重要性が示された.しかし,本邦における先行研究は,乳児を対象としたものが多く,母子間の相互作用に着目した研究は少なかった.今後,幼児期を対象とした研究への拡大や,母子間の相互作用に着目した研究の発展が求められると考えられる.