[PJ-2-4] ポスター:高齢期 2排泄介助を一人介助で行うために必要な立位保持時間とその関連要因
【はじめに】
トイレでの排泄は,在宅復帰と関連性が高く,対象者の尊厳にも関わる重要な作業である.そこで,オムツ使用者に対して,トイレでの排泄が行えるように訓練を行う場合が多々ある.しかし,立位保持が可能となり,トイレでの排泄が可能と評価した場合でも,介助者側が下衣操作・清拭を含めた介助が1人で行えないことが理由で,オムツ内排泄となることがある.この原因は,排泄介助を1人で行う場合に必要とする立位保持時間の認識が,職種の違いやその他の要因で異なるのではないかと考えた.
【目的】
本研究は,トイレでの排泄介助を1人で行う場合に必要とする立位保持時間の認識と関連する要因を明らかにすることを目的とした.
【方法】
対象は当介護老人保健施設職員89名に無記名の質問紙調査を実施し,回答を得た78名(回収率87.6%)とした.質問内容は,職種・経験年数・性別・身長・介護経験の有無・定期的な排泄介助の有無・疼痛の有無の7項目に加え,「疾患を問わず,リハビリパンツと尿取りパットを使用しており,手すりを使用して立位保持できる方に対して,介助者1人で安全に排泄介助が行えると思う立位保持時間」を自由記載で取得した.統計解析は①リハビリ専門職,看護師,介護福祉士,その他の職種(事務,相談員,薬剤師,管理栄養士)の職種間の比較を,一元配置分散分析を用い,その後の検定にはBonferroni法を用いて検討した.そして,看護師と介護福祉士において,②経験年数の違いについては,経験年数10年未満と10年以上の2群に分けて対応のないt検定,③その他の要因との関連性については対応のないt検定を用いて検討した.統計学的有意水準は5%未満とした.なお,本研究は併設病院倫理委員会の承認を得て実施し,質問紙に説明文を添付し回答をもって同意とした.
【結果】
リハビリ専門職8名,看護師13名,介護福祉士48名,その他の職種9名から回答を得た.その他の職種(116.1±96.4秒)が他の3職種と比べ,有意に認識している立位保持時間が長かった(P<0.05)(リハビリ専門職:46.3±25.0秒,看護師:40.0±27.9秒,介護福祉士:33.1±28.7秒).次いで,看護師と介護福祉士において,経験年数10年未満(25.1±18.6秒)と10年以上(37.3±32.2秒)の2群間では有意な違いは認められず,疼痛有り群(38.4±31.7秒)は疼痛無し群(24.6±13.5秒)より有意に認識している立位保持時間が長かった(P<0.05).
【考察】
川口沙織ら(2020)は,トイレ介助が可能となる立位保持時間は30〜35秒と報告している.本研究でも,リハビリ専門職,看護師,介護福祉士の3職種の平均値が33〜46秒となり,職種に関わらず概ね30秒以上の立位保持時間が必要になると考えられた.しかし,平均値の標準偏差が大きかったことから,一律に30秒以上と目標値を設定するのではなく,介護施設においても介助者の認識を確認し,それに合わせた訓練を行う必要性があると考えた.特に本研究では,疼痛の有無で有意差を認めたことから,疼痛を有する介助者の場合は,目標値を長めに設定するなど,主となる介助者の健康状態も考慮した目標を立てることが重要と考えた.最後に,排泄介助に関わる経験が少ないその他の職員は,3職種と比べ認識している立位保持時間が有意に長かった.介護施設職員であっても専門職と大きな違いを認めたため,在宅介護の場合は,介助者の健康状態や介護経験の有無の把握が,より重要な評価項目になる可能性がある.
トイレでの排泄は,在宅復帰と関連性が高く,対象者の尊厳にも関わる重要な作業である.そこで,オムツ使用者に対して,トイレでの排泄が行えるように訓練を行う場合が多々ある.しかし,立位保持が可能となり,トイレでの排泄が可能と評価した場合でも,介助者側が下衣操作・清拭を含めた介助が1人で行えないことが理由で,オムツ内排泄となることがある.この原因は,排泄介助を1人で行う場合に必要とする立位保持時間の認識が,職種の違いやその他の要因で異なるのではないかと考えた.
【目的】
本研究は,トイレでの排泄介助を1人で行う場合に必要とする立位保持時間の認識と関連する要因を明らかにすることを目的とした.
【方法】
対象は当介護老人保健施設職員89名に無記名の質問紙調査を実施し,回答を得た78名(回収率87.6%)とした.質問内容は,職種・経験年数・性別・身長・介護経験の有無・定期的な排泄介助の有無・疼痛の有無の7項目に加え,「疾患を問わず,リハビリパンツと尿取りパットを使用しており,手すりを使用して立位保持できる方に対して,介助者1人で安全に排泄介助が行えると思う立位保持時間」を自由記載で取得した.統計解析は①リハビリ専門職,看護師,介護福祉士,その他の職種(事務,相談員,薬剤師,管理栄養士)の職種間の比較を,一元配置分散分析を用い,その後の検定にはBonferroni法を用いて検討した.そして,看護師と介護福祉士において,②経験年数の違いについては,経験年数10年未満と10年以上の2群に分けて対応のないt検定,③その他の要因との関連性については対応のないt検定を用いて検討した.統計学的有意水準は5%未満とした.なお,本研究は併設病院倫理委員会の承認を得て実施し,質問紙に説明文を添付し回答をもって同意とした.
【結果】
リハビリ専門職8名,看護師13名,介護福祉士48名,その他の職種9名から回答を得た.その他の職種(116.1±96.4秒)が他の3職種と比べ,有意に認識している立位保持時間が長かった(P<0.05)(リハビリ専門職:46.3±25.0秒,看護師:40.0±27.9秒,介護福祉士:33.1±28.7秒).次いで,看護師と介護福祉士において,経験年数10年未満(25.1±18.6秒)と10年以上(37.3±32.2秒)の2群間では有意な違いは認められず,疼痛有り群(38.4±31.7秒)は疼痛無し群(24.6±13.5秒)より有意に認識している立位保持時間が長かった(P<0.05).
【考察】
川口沙織ら(2020)は,トイレ介助が可能となる立位保持時間は30〜35秒と報告している.本研究でも,リハビリ専門職,看護師,介護福祉士の3職種の平均値が33〜46秒となり,職種に関わらず概ね30秒以上の立位保持時間が必要になると考えられた.しかし,平均値の標準偏差が大きかったことから,一律に30秒以上と目標値を設定するのではなく,介護施設においても介助者の認識を確認し,それに合わせた訓練を行う必要性があると考えた.特に本研究では,疼痛の有無で有意差を認めたことから,疼痛を有する介助者の場合は,目標値を長めに設定するなど,主となる介助者の健康状態も考慮した目標を立てることが重要と考えた.最後に,排泄介助に関わる経験が少ないその他の職員は,3職種と比べ認識している立位保持時間が有意に長かった.介護施設職員であっても専門職と大きな違いを認めたため,在宅介護の場合は,介助者の健康状態や介護経験の有無の把握が,より重要な評価項目になる可能性がある.