[PJ-2-3] ポスター:高齢期 2笑顔の輪づくり笑顔交響楽団の取り組み
下手を楽しむ価値観の転換
【序論】
加齢による心身機能の低下や難治性の疾病は,高齢者の自己効力感の低下を招き,自主的な行動を阻害する要因となる.特に,進行性の難病においては,病状の進行によりさらに自己効力感の低下や自主的な行動が減少することを多く目にする.このことから,高齢者の自己効力感の低下および自発的な行動減少を阻止するには,心身機能の向上や難病の改善が必要と言えるが,現代医学においてこの両者を実現することは現実的ではない.そこで本件では,通所介護において下手を楽しむ価値観の転換を行い,音楽を用いた集団作業療法を実施し,その結果対象者の自己効力感の向上と自主的な行動を促すことができたので,事例として報告する.
【方法】
期間2019年12月から2020年12月.対象は,65歳以上の通所介護利用者8名(内訳;男性1名,女性7名,平均年齢82.75歳,介護度;要支援2:1名,要介護1:4名,要介護2:2名,要介護3:1名,障害高齢者の日常生活自立度;J1:1名,J2:4,A1:1名,A2:1名,認知症高齢者の日常生活自立度;自立:5名,Ⅰ:3名)とした.罹患疾患は,パーキンソン病,大腿骨近位部骨折,脳梗塞,糖尿病,及び廃用性機能低下症であった.各自楽器を用意し,課題曲と発表日をメンバー中心に決定し,毎日自宅で練習を行うこととした.失敗に対する意欲低下を予防するために,下手を楽しむ価値観の転換として「最低5回は間違えること.それが守れなければ笑顔交響楽団を退団してもらう」というルールを言い続けた.そして,集団作業療法に介入する作業療法士自身もケーナを毎日吹き練習を自宅で続け,その報告を適宜メンバーに行った.
なお本事例発表は所属法人の倫理審査委員会の承認を得た後に,対象者には口頭で説明を行い,同意を得た.
【結果】
8名中8名が新たな自発的な行動が見られた.8名中6名が初めて取り組む楽器を使い演奏するようになった.木琴,ハーモニカ,オカリナなど今まで挑戦したことのない楽器にチャレンジした.片麻痺を罹患している利用者は,キーボードを片手で演奏できるように練習に取り組むようになり,演奏をしやすいカスタネットを演奏するすがたが見られた.初めてハーモニカを演奏するようになった大腿骨近位部骨折の利用者は,練習して上達した楽器演奏で家族の誕生日に曲をプレゼントした.パーキンソン病を患う利用者は,友人から良い趣味を持ったと褒められたり,自らハーモニカを楽器店まで購入しに市中まで出かけた.8名全員が自宅での生活の中で自発的に練習に取り組むようになった.
【考察】
今回,下手を楽しむ価値観の転換として,上手よりも下手を楽しむところに価値があることを言い続けるよう介入した.上手に演奏するという価値観から下手でも楽しく演奏する事が素晴らしいという価値観を言い続けることによって,失敗に対する否定感情を減らすことができたのではないか.失敗がいけないという感情は,老化や疾病により衰える心身機能への自己否定と重なり,それを肯定的に捉えることで自己効力感が増したのではないかと考えられる.そして仲間で同じ価値観を共有し,音楽に取り組むことで,より精神的な支えが生まれ,自己効力感と自主的な行動を助長したと考えられる.
【まとめ】
笑顔交響楽団のメンバーから,「いずれはどこかに訪問演奏へいけるようになりたい」,前向きな声を聴くようになった.笑顔でつながる仲間が,音楽に取り組み,下手を楽しむ価値観の転換をすれば,高齢者の自己効力感と自主的な行動の向上への一助になる可能性が示唆された.
加齢による心身機能の低下や難治性の疾病は,高齢者の自己効力感の低下を招き,自主的な行動を阻害する要因となる.特に,進行性の難病においては,病状の進行によりさらに自己効力感の低下や自主的な行動が減少することを多く目にする.このことから,高齢者の自己効力感の低下および自発的な行動減少を阻止するには,心身機能の向上や難病の改善が必要と言えるが,現代医学においてこの両者を実現することは現実的ではない.そこで本件では,通所介護において下手を楽しむ価値観の転換を行い,音楽を用いた集団作業療法を実施し,その結果対象者の自己効力感の向上と自主的な行動を促すことができたので,事例として報告する.
【方法】
期間2019年12月から2020年12月.対象は,65歳以上の通所介護利用者8名(内訳;男性1名,女性7名,平均年齢82.75歳,介護度;要支援2:1名,要介護1:4名,要介護2:2名,要介護3:1名,障害高齢者の日常生活自立度;J1:1名,J2:4,A1:1名,A2:1名,認知症高齢者の日常生活自立度;自立:5名,Ⅰ:3名)とした.罹患疾患は,パーキンソン病,大腿骨近位部骨折,脳梗塞,糖尿病,及び廃用性機能低下症であった.各自楽器を用意し,課題曲と発表日をメンバー中心に決定し,毎日自宅で練習を行うこととした.失敗に対する意欲低下を予防するために,下手を楽しむ価値観の転換として「最低5回は間違えること.それが守れなければ笑顔交響楽団を退団してもらう」というルールを言い続けた.そして,集団作業療法に介入する作業療法士自身もケーナを毎日吹き練習を自宅で続け,その報告を適宜メンバーに行った.
なお本事例発表は所属法人の倫理審査委員会の承認を得た後に,対象者には口頭で説明を行い,同意を得た.
【結果】
8名中8名が新たな自発的な行動が見られた.8名中6名が初めて取り組む楽器を使い演奏するようになった.木琴,ハーモニカ,オカリナなど今まで挑戦したことのない楽器にチャレンジした.片麻痺を罹患している利用者は,キーボードを片手で演奏できるように練習に取り組むようになり,演奏をしやすいカスタネットを演奏するすがたが見られた.初めてハーモニカを演奏するようになった大腿骨近位部骨折の利用者は,練習して上達した楽器演奏で家族の誕生日に曲をプレゼントした.パーキンソン病を患う利用者は,友人から良い趣味を持ったと褒められたり,自らハーモニカを楽器店まで購入しに市中まで出かけた.8名全員が自宅での生活の中で自発的に練習に取り組むようになった.
【考察】
今回,下手を楽しむ価値観の転換として,上手よりも下手を楽しむところに価値があることを言い続けるよう介入した.上手に演奏するという価値観から下手でも楽しく演奏する事が素晴らしいという価値観を言い続けることによって,失敗に対する否定感情を減らすことができたのではないか.失敗がいけないという感情は,老化や疾病により衰える心身機能への自己否定と重なり,それを肯定的に捉えることで自己効力感が増したのではないかと考えられる.そして仲間で同じ価値観を共有し,音楽に取り組むことで,より精神的な支えが生まれ,自己効力感と自主的な行動を助長したと考えられる.
【まとめ】
笑顔交響楽団のメンバーから,「いずれはどこかに訪問演奏へいけるようになりたい」,前向きな声を聴くようになった.笑顔でつながる仲間が,音楽に取り組み,下手を楽しむ価値観の転換をすれば,高齢者の自己効力感と自主的な行動の向上への一助になる可能性が示唆された.