[PJ-2-2] ポスター:高齢期 2認知症重症度の違いによる意味のある活動時に着目すべき観察視点の探索
【はじめに】
中等度と重度の認知症の人に対する作業療法において,「意味のある活動」の効果の判断が難しく,その観察視点は明確にされていない.そこで,本研究の目的として中等度と重度の認知症の2群間で「意味のある活動」を実施する際に着目すべき観察視点の特徴を明らかにすることとした.本検討により,活動提供時の観察視点が明確となり,認知症ケアの質が向上に繋がり,意義があると考えた.
【方 法】
社会福祉法人あじろぎ会宇治病院(以下,宇治病院)入院中の中等度群8名,重度群7名の計15名の認知症の人を対象とした.対象者視点に立ち,活動がどの程度意義があるかということを観察から推定する評価法であるAssessment of quality of activities(活動の質評価法;以下,A-QOA)を用いて,「意味のある活動」時のA-QOAの21の観察項目と,A-QOAのprobit値(21の項目得点から連続変数化し1変数に統合した「活動の質」の効果指標)それぞれの2群間比較を実施した.また,probit値と認知機能の指標(Mini Mental State Examination-Japanese),BPSDの指標(Dementia Behavior Disturbance scale 短縮版(以下,DBD 13)),生活の質(QOL)の指標(EuroQol 5 dimensions 5-level proxy version(以下,EQ-5D-5L proxy))との相関関係の分析を実施した.統計解析はSPSS statistics ver.27.0を用いた.全ての統計学的検討の有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】
本研究は宇治病院「医の倫理」委員会,および神戸学院大学「人を対象とする生命科学・医学系倫理審査委員会」の承認を得て実施した.全ての参加者本人,家族双方に内容説明を文章および口頭にて行い, 署名を得て実施した.
【結 果】
2群間比較の結果,7項目で有意差を認めた.これらの中等度群の方が重度群より平均値が高値を示した.複雑な活動の遂行能力の低下や他者と強調したり感情共有したりする観察項目に有意差があり,一方で活動に注意を向け,持続して活動を行えるかという点には差が少なかった.probit値との相関分析において,DBD 13の項目得点ではアパシーに関する項目で有意な強い負の相関を示した.EQ-5D-5L proxyの項目得点では「普段の活動」(主に手段的日常生活活動(以下,IADL))において,probit値と中等度の負の相関を示した.
【考 察】
本研究の結果から,認知症の人は中等度から重度へ症状が進行するとともに,遂行機能や感情表出や他者とコミュニケーション能力が低下し易く,「意味のある活動」を行ってもそれらの要素は観察されにくくなることが示唆された.そのため,重度の認知症の人における活動時の着目すべき観察視点としては,「活動へ注意を向け,従事できているか」という点が重要と推察された.また,日常生活上でのIADL能力, 興味や発動性・活動性の低下は,意味のある活動を行う際の対象者の観察される反応に制限を与える要因となることが考えられた.
【研究の限界】
今回の検討では,コロナ禍の環境においてサンプルサイズが小さくなった.そのため,結果を安定させるためにもより多くの対象者の分析は必須と考える.また,今回の活動選択の条件として設定した「意味のある活動」は,人により異なるため,活動内容,選定方法,実施環境(人数,実施環境等)や性差等の詳細な限定は行なわなかった.今後より正確な調査を進めるためには実施環境の統一が必要と考える.
中等度と重度の認知症の人に対する作業療法において,「意味のある活動」の効果の判断が難しく,その観察視点は明確にされていない.そこで,本研究の目的として中等度と重度の認知症の2群間で「意味のある活動」を実施する際に着目すべき観察視点の特徴を明らかにすることとした.本検討により,活動提供時の観察視点が明確となり,認知症ケアの質が向上に繋がり,意義があると考えた.
【方 法】
社会福祉法人あじろぎ会宇治病院(以下,宇治病院)入院中の中等度群8名,重度群7名の計15名の認知症の人を対象とした.対象者視点に立ち,活動がどの程度意義があるかということを観察から推定する評価法であるAssessment of quality of activities(活動の質評価法;以下,A-QOA)を用いて,「意味のある活動」時のA-QOAの21の観察項目と,A-QOAのprobit値(21の項目得点から連続変数化し1変数に統合した「活動の質」の効果指標)それぞれの2群間比較を実施した.また,probit値と認知機能の指標(Mini Mental State Examination-Japanese),BPSDの指標(Dementia Behavior Disturbance scale 短縮版(以下,DBD 13)),生活の質(QOL)の指標(EuroQol 5 dimensions 5-level proxy version(以下,EQ-5D-5L proxy))との相関関係の分析を実施した.統計解析はSPSS statistics ver.27.0を用いた.全ての統計学的検討の有意水準は5%とした.
【倫理的配慮】
本研究は宇治病院「医の倫理」委員会,および神戸学院大学「人を対象とする生命科学・医学系倫理審査委員会」の承認を得て実施した.全ての参加者本人,家族双方に内容説明を文章および口頭にて行い, 署名を得て実施した.
【結 果】
2群間比較の結果,7項目で有意差を認めた.これらの中等度群の方が重度群より平均値が高値を示した.複雑な活動の遂行能力の低下や他者と強調したり感情共有したりする観察項目に有意差があり,一方で活動に注意を向け,持続して活動を行えるかという点には差が少なかった.probit値との相関分析において,DBD 13の項目得点ではアパシーに関する項目で有意な強い負の相関を示した.EQ-5D-5L proxyの項目得点では「普段の活動」(主に手段的日常生活活動(以下,IADL))において,probit値と中等度の負の相関を示した.
【考 察】
本研究の結果から,認知症の人は中等度から重度へ症状が進行するとともに,遂行機能や感情表出や他者とコミュニケーション能力が低下し易く,「意味のある活動」を行ってもそれらの要素は観察されにくくなることが示唆された.そのため,重度の認知症の人における活動時の着目すべき観察視点としては,「活動へ注意を向け,従事できているか」という点が重要と推察された.また,日常生活上でのIADL能力, 興味や発動性・活動性の低下は,意味のある活動を行う際の対象者の観察される反応に制限を与える要因となることが考えられた.
【研究の限界】
今回の検討では,コロナ禍の環境においてサンプルサイズが小さくなった.そのため,結果を安定させるためにもより多くの対象者の分析は必須と考える.また,今回の活動選択の条件として設定した「意味のある活動」は,人により異なるため,活動内容,選定方法,実施環境(人数,実施環境等)や性差等の詳細な限定は行なわなかった.今後より正確な調査を進めるためには実施環境の統一が必要と考える.