第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-3] ポスター:高齢期 3

2022年9月16日(金) 15:00 〜 16:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PJ-3-2] ポスター:高齢期 3介護予防自主グループ活動におけるハンドベル演奏の導入方法とその効果

丸山 桃子1 (1富士見市健康増進センター介護予防係)

【はじめに】近年,厚生労働省は介護予防への取り組みを重視しており,高齢者の生活の質の向上や生きがいの獲得を目指した取り組みを推進している.住民主体の通いの場である介護予防自主グループにおいてハンドベルを利用した事例を報告する.
【対象】自主グループは女性7名,平均年齢は78.9歳である.当センターの事業である介護予防教室の卒業生らで平成30年に結成した.毎週1回午前中に活動日を設け,体操中心の活動から始まり,翌年よりハンドベル演奏をプログラムに導入した.参加者のうち,音楽に関連する経験がない方は4名おり,あとの3名はコーラスや大正琴のサークル活動の経験があった.
【方法】使用するハンドベルは25本入りのものが2セット,合計50本.一拍を丸印で表したオリジナルのパート譜を作成.すべてのベルに番号を振り,パート譜に記載されている番号のベルを使用する.一人2~3本のベルを担当する.鳴らす部分はベルごとに色分けしてあり,色があるところで該当のベルを鳴らす.活動の効果および健康感の指標としてアンケートを実施した.
【倫理的配慮】参加者に対し,口頭および文書にて説明を行い,文書で同意を得た.
【結果】参加者で話し合いながらパートや号令係,録音係などの役割分担を決め,自分たちにとってより良く活動が進められるよう工夫しながら練習に取り組むようになった.オリジナルのパート譜により音楽の経験がなくても問題なく演奏することができた.パート譜においては,ルールを決めることで応用が利くようになり,新曲であっても自主的に練習に取り組むことができた.現在はレパートリーが10曲(ペチカ・しゃぼん玉・春の小川・さくら・故郷・星に願いを・あの町この町・赤とんぼ・朧月夜・上を向いて歩こう)になり,さらに新譜のリクエストの声が挙がるようになった.介護予防教室卒業生の交流会では,レパートリーから数曲の演奏を披露する機会を得た.アンケート結果より,参加者の自主グループ活動およびハンドベル演奏活動の満足度は,どちらも5段階評価で平均4.71であった.理由として,「楽しい」という意見が多くあった.また,全員がハンドベル演奏活動を通して自らの行動に変化を感じていると答えており,内容として「練習を通して助け合っていることを感じる」「新しいことへの挑戦」「刺激を受け一生懸命になる」「皆と合わせることで達成感を感じられる」という意見が得られた.また,身体機能面では「普段使っていない部分を使えている」,認知機能面では「皆の音を聞きながら頭も手も使うことで脳トレになっていると感じる」「新しいことに挑戦し頭を使えることに満足している」という意見が得られた.
【考察】このハンドベル演奏の導入方法は,音楽に関する知識や経験がなくても,楽しく取り組むことができる方法であるといえる.そして,その効果としては,自分の役割を持ち,他者と一つのものを作り上げていくという過程が達成感や満足感を生み,自己効力感を高めた結果,さらに新しいことに挑戦する意欲を向上させているといえる.アンケート結果より,全員が現在の活動に満足している傾向にある.自由回答から得られた証言からは,参加者にとってハンドベル演奏活動が身体機能面,認知機能面,精神機能面においてプラスの効果があるといえる.今後は,自主グループ活動にとどまらず,ボランティア活動等,新たな社会参加の場においてハンドベル演奏活動が生かせるよう提案していきたい.