[PJ-6-2] ポスター:高齢期 6地域在住要支援・要介護高齢者の肯定的な作業同一性を維持するための要因
【はじめに】
作業同一性とはクライアントが作業的存在として,自分が何者であり,将来どのようでありたいかという自己認識のことである(Kielhofner, 2008).高齢者が肯定的な作業同一性を形成・維持することは重要であると言えるが,そのための要因を調査した研究はない.本研究の目的は,縦断的量的データを用いて,肯定的な作業同一性を維持するための要因を明らかにすることである.
【方法】
1.対象と調査方法
対象は,男性16名,女性23名の計39名(82.5±5.8歳)であり,通所サービス利用者が34名(87.2%),訪問サービス利用者が5名(12.8%)であった.作業同一性の聴取には,地域在住の要支援・要介護高齢者を対象に開発された作業同一性質問紙(Occupational Identity Questionnaire;以下,OIQ)を用いた.OIQは「過去の認識」「現在の認識と将来への期待」「現状への満足感」の3因子14項目から構成され,4件法(全く思わない;1点,思わない;2点,そう思う;3点,とてもそう思う;4点)で評定する.その他には,Barthel Index(以下,BI),日本語版The 5-level EQ-5D version(以下,EQ-5D)を収集した.初回のデータ取得から約3ヵ月後に,同評価を再度実施した.
2.統計解析
3ヵ月後のOIQと初回のOIQ,BI,EQ-5Dの相関関係についてSpearmanの順位相関係数を算出した.次に,3ヵ月後のOIQの3因子を従属変数,初回のOIQの14項目を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った.統計解析には,IBM SPSS Statistics 25を使用し,有意水準は5%に設定した.なお,本研究は,筆頭演者の所属していた大学院における研究安全倫理審査委員会の承認(受理番号18093)を得て実施した.
【結果】
初回の結果は,OIQが43.0±4.9,BIが92.0±11.5,EQ-5Dが0.654±0.166,3ヵ月後のOIQが43.0±4.9,BIが91.2±13.7,EQ-5Dが0.657±0.175であった.相関がみられたのは,初回のOIQと3ヵ月後のOIQ(rs=0.530,p=0.01)のみであった.重回帰分析では,OIQの「過去の認識」は「何もないより,何かやることがあった方が良いと思う;以下,項目10」(p=0.012,β=0.398),「現在の認識と将来への期待」は,「今は若いときのようにはいかないが,よくやっていると思う;以下,項目6」(p=0.003,β=0.457),「現状への満足感」は項目6(p=0.003,β=0.470)において,有意な関連が示された.
【考察】
3ヵ月後のOIQと相関がみられたのは初回のOIQのみであった.中等度の正の相関がみられたことから,対象者の作業同一性は比較的安定していることが考えられる.3ヵ月後の作業同一性の因子には,項目6と項目10が影響していることがわかった.項目6は,個人的原因帰属に関する項目であり,個人的原因帰属が作業への動機づけだけではなく,作業的存在としての自己認識や現状への満足感にも影響することが考えられた.また項目10から,肯定的な過去の認識を促進するためには,対象者にとっての作業の必要性を高めることで可能になることが予測された.
作業同一性とはクライアントが作業的存在として,自分が何者であり,将来どのようでありたいかという自己認識のことである(Kielhofner, 2008).高齢者が肯定的な作業同一性を形成・維持することは重要であると言えるが,そのための要因を調査した研究はない.本研究の目的は,縦断的量的データを用いて,肯定的な作業同一性を維持するための要因を明らかにすることである.
【方法】
1.対象と調査方法
対象は,男性16名,女性23名の計39名(82.5±5.8歳)であり,通所サービス利用者が34名(87.2%),訪問サービス利用者が5名(12.8%)であった.作業同一性の聴取には,地域在住の要支援・要介護高齢者を対象に開発された作業同一性質問紙(Occupational Identity Questionnaire;以下,OIQ)を用いた.OIQは「過去の認識」「現在の認識と将来への期待」「現状への満足感」の3因子14項目から構成され,4件法(全く思わない;1点,思わない;2点,そう思う;3点,とてもそう思う;4点)で評定する.その他には,Barthel Index(以下,BI),日本語版The 5-level EQ-5D version(以下,EQ-5D)を収集した.初回のデータ取得から約3ヵ月後に,同評価を再度実施した.
2.統計解析
3ヵ月後のOIQと初回のOIQ,BI,EQ-5Dの相関関係についてSpearmanの順位相関係数を算出した.次に,3ヵ月後のOIQの3因子を従属変数,初回のOIQの14項目を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行った.統計解析には,IBM SPSS Statistics 25を使用し,有意水準は5%に設定した.なお,本研究は,筆頭演者の所属していた大学院における研究安全倫理審査委員会の承認(受理番号18093)を得て実施した.
【結果】
初回の結果は,OIQが43.0±4.9,BIが92.0±11.5,EQ-5Dが0.654±0.166,3ヵ月後のOIQが43.0±4.9,BIが91.2±13.7,EQ-5Dが0.657±0.175であった.相関がみられたのは,初回のOIQと3ヵ月後のOIQ(rs=0.530,p=0.01)のみであった.重回帰分析では,OIQの「過去の認識」は「何もないより,何かやることがあった方が良いと思う;以下,項目10」(p=0.012,β=0.398),「現在の認識と将来への期待」は,「今は若いときのようにはいかないが,よくやっていると思う;以下,項目6」(p=0.003,β=0.457),「現状への満足感」は項目6(p=0.003,β=0.470)において,有意な関連が示された.
【考察】
3ヵ月後のOIQと相関がみられたのは初回のOIQのみであった.中等度の正の相関がみられたことから,対象者の作業同一性は比較的安定していることが考えられる.3ヵ月後の作業同一性の因子には,項目6と項目10が影響していることがわかった.項目6は,個人的原因帰属に関する項目であり,個人的原因帰属が作業への動機づけだけではなく,作業的存在としての自己認識や現状への満足感にも影響することが考えられた.また項目10から,肯定的な過去の認識を促進するためには,対象者にとっての作業の必要性を高めることで可能になることが予測された.