[PJ-8-3] ポスター:高齢期 8認知症のある人の活動の質(Quality of Activities: QOA)を高めるプラクティスガイドの開発
【はじめに・研究目的】 認知症などがあり自らの意思を言語的に表出することが難しい場合,その人にとっての重要な活動や満足度を聴取することが困難になる.筆者らは,活動の質(Quality of Activities:以下 QOA とする)を数値化できることが認知症のある人の支援に有用と考え,観察により活動から引き出される本人への効果を調べられる,活動の質評価法(Assessment of Quality of Activities:以下 A-QOA とする)を開発してきた.本研究の目的は,A-QOAの点数というエビデンスに基づき,認知症のある人のQOAを高めるためのプラクティスガイドを開発することである.
【方法】 A-QOAの採点方法を習得した19名の作業療法士を研究協力者として,臨床でのA-QOA データの提供を依頼した.研究協力者1名に対し10名の認知症高齢者の2場面の活動の様子を A-QOA で評価してもらった.研究協力者には活動名,A-QOA 素点,QOA を高めた,または低めたと考える要因を自由記述で記入してもらった.自由記述に書かれている内容を意味ごとに分節化し,データのスライスを作成し,1 枚の付箋に1つのスライスを転記し,1枚のラベルとした.類似した意味を持つラベルを模造紙上に統合・集約し,カテゴリ化を行った.これらの分析は,質的研究経験のある著者3名で行った.その後,筆者4名の臨床での経験知を言語化し合い,QOAを高めるポイントを追加し,介入のプロセスに沿って整理した.なお,本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を得た上で行い,研究協力者を通じて,クライエント・家族にも同意を得た.
【結果】 18名の研究協力者からクライエント132 名,263 場面のデータが得られた.263 場面のうち,QOA を高めた,または低めたと考える要因が記されていたのは 227 場面であった.227 場面のデータから430枚のラベルが得られた.分析により以下の20のポイントに整理された.
1.活動を選択するためのポイント
1)興味・関心のある活動を選択する 2)心が動く活動を選択する 3)身体・認知機能に合った活動を選択する 4)能力に合わせて調整できる活動を選択する
2.選択した活動の質を高めるポイント
5)快適な環境にする 6)集中できる環境にする 7)活動しやすい姿勢になるように設定する 8)メンバー構成を考える 9)無理強いをしない 10)機能や関心に合わせた活動の準備を行う 11)活動の見通しを伝える 12)主体的に活動内容や方法を選択できるようにする 13)活動を行う手がかりを提供する 14)心が動く交流が促進されるように関わる 15)失敗しないような手掛かりを提供する 16)認められるような機会を作る 17)一人ひとりに目を配り適時個別に関わる
3.活動後のポイント
18)賞賛される機会を作る 19)発見したことを他スタッフや家族に伝える 20)生活の中にQOAの高い活動(方法)を組み込む
【考察】 クライエントの興味・関心を把握し,心身機能に合った活動を選択すること,活動中は,物的・人的環境に配慮し,安心して主体的に活動が行えるような関わりがQOAを高めることが明らかになった.また,活動後もクライエントが賞賛される機会を作り,他スタッフや家族と情報共有し,生活の中にQOAの高い活動を組み込むことが好循環を生み出すことが明らかになった.これらのポイントは,熟練作業療法士であれば自然に行っていることかもしれない.経験の浅い者は,これら一つ一つのポイントを振り返りクライエントに適応して考えていくことで,クライエントのQOAを高める援助が行えると考える.今後はこのプラクティスガイドを用いた介入研究を行い,ガイドの妥当性を検証していきたい.
(本研究は科研費18K10527の助成を受けたものである)
【方法】 A-QOAの採点方法を習得した19名の作業療法士を研究協力者として,臨床でのA-QOA データの提供を依頼した.研究協力者1名に対し10名の認知症高齢者の2場面の活動の様子を A-QOA で評価してもらった.研究協力者には活動名,A-QOA 素点,QOA を高めた,または低めたと考える要因を自由記述で記入してもらった.自由記述に書かれている内容を意味ごとに分節化し,データのスライスを作成し,1 枚の付箋に1つのスライスを転記し,1枚のラベルとした.類似した意味を持つラベルを模造紙上に統合・集約し,カテゴリ化を行った.これらの分析は,質的研究経験のある著者3名で行った.その後,筆者4名の臨床での経験知を言語化し合い,QOAを高めるポイントを追加し,介入のプロセスに沿って整理した.なお,本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を得た上で行い,研究協力者を通じて,クライエント・家族にも同意を得た.
【結果】 18名の研究協力者からクライエント132 名,263 場面のデータが得られた.263 場面のうち,QOA を高めた,または低めたと考える要因が記されていたのは 227 場面であった.227 場面のデータから430枚のラベルが得られた.分析により以下の20のポイントに整理された.
1.活動を選択するためのポイント
1)興味・関心のある活動を選択する 2)心が動く活動を選択する 3)身体・認知機能に合った活動を選択する 4)能力に合わせて調整できる活動を選択する
2.選択した活動の質を高めるポイント
5)快適な環境にする 6)集中できる環境にする 7)活動しやすい姿勢になるように設定する 8)メンバー構成を考える 9)無理強いをしない 10)機能や関心に合わせた活動の準備を行う 11)活動の見通しを伝える 12)主体的に活動内容や方法を選択できるようにする 13)活動を行う手がかりを提供する 14)心が動く交流が促進されるように関わる 15)失敗しないような手掛かりを提供する 16)認められるような機会を作る 17)一人ひとりに目を配り適時個別に関わる
3.活動後のポイント
18)賞賛される機会を作る 19)発見したことを他スタッフや家族に伝える 20)生活の中にQOAの高い活動(方法)を組み込む
【考察】 クライエントの興味・関心を把握し,心身機能に合った活動を選択すること,活動中は,物的・人的環境に配慮し,安心して主体的に活動が行えるような関わりがQOAを高めることが明らかになった.また,活動後もクライエントが賞賛される機会を作り,他スタッフや家族と情報共有し,生活の中にQOAの高い活動を組み込むことが好循環を生み出すことが明らかになった.これらのポイントは,熟練作業療法士であれば自然に行っていることかもしれない.経験の浅い者は,これら一つ一つのポイントを振り返りクライエントに適応して考えていくことで,クライエントのQOAを高める援助が行えると考える.今後はこのプラクティスガイドを用いた介入研究を行い,ガイドの妥当性を検証していきたい.
(本研究は科研費18K10527の助成を受けたものである)