[PJ-8-4] ポスター:高齢期 8絵画が与えた役割と対人交流への影響
MOHOSTに基づいた一事例の考察
【はじめに】認知症と表出の低下, 廃用性筋力低下を呈したA氏に, なじみの深い作業活動を用い, 作業療法を実施した. その結果, 役割の獲得と対人交流の機会が増加したため報告する. 尚, 本報告に際して事例に説明を行い, 同意を得た上で実施した.
【事例紹介】80歳代男性, 病前は施設入所されていた. 診断名は痙攣性てんかん重積後の廃用症候群. 急性期病院を経て12病日目に当院入院. 施設入所中より認知症があり, 転倒を繰り返しながらも, T-CANE自立していた. 入院時に誤嚥性肺炎となり, ベッド上介入の対応となった.
【作業療法初期評価】19病日目. HDS-R: 2点, MMT: 両上下肢2, やつれている様子であった. 対人交流は乏しく, 交流は単語レベルでの発話と首ふりにて行った. ADLは起居・移乗全介助, 座位保持は10分で疲労の訴えを認めた. FIM: 27点. また観察評価である人間作業モデルスクリーニングツール(以下, MOHOST)を用いて評価した. 総得点は47点で, 動機づけ(10点), 作業のパターン(6点), コミュニケーションと交流技能(7点), 処理技能(8点), 運動機能(6点), 環境(10点)であった. リハビリに対しては消極的であった.
【介入の基本方針】認知症や表出の低下があり, 目標共有は不十分であった. 介入の中で「俺には絵しかない」と発言があり, 絵を描く事に興味がある事が分かった. MOHOSTの結果より, 作業療法では作業パターン, コミュニケーションと交流技能に焦点を当て, 作業活動を用いながらアプローチをしていくこととした. また, 院内での活動的な生活が送れるよう, その都度環境設定を行うこととした.
【経過】〈絵の導入時期〉30病日~最初にOTRをデッサンで描いてもらった. すると「おじいさんの絵が描きやすい」との発言があった. そこでOTRの他の担当患者様にモデルの協力を得て, 人物画を継続した. 〈活動を継続する時期〉45病日~屋外へ行った際,「あの建築物描きたい」とあり, 描き始めた. 更に色鉛筆や絵の具を使用したいと本人から希望があり提供した. 完成した絵は, 他者との交流のきっかけ作りとして, 他者が見られる場所へOTRが掲示した. また, 「歩きたい」と希望があり, 絵とあわせて歩行練習を取り入れるようになった.〈OTRに絵を教える時期〉69病日~OTRが絵を教わる事を依頼すると快く了承して頂けた. A氏より写真を見ながらのデッサンが提案され, 絵を選び, 各々一枚ずつ描いていった. A氏は「光と影が大事」等のコツをOTRに逐一教えた. OTRの描いた絵に「光の捉え方が素晴らしい. 影を修正したら先生以上」とコメントした. 描いている際にはスタッフ, 他患も見に来られ, 交流する様子がみられた. また「自分の絵を褒められるのも嬉しいけど, あなたが褒められるともっと嬉しい」と発言があった.
【結果】95病日目. HDS-R: 17点, MMT: 両上下肢4, ADLは起居・移乗見守りFIM: 57点. MOHOST総得点75点で, 動機づけ(14点), 作業のパターン(11点), コミュニケーションと交流技能(14点), 処理技能(12点), 運動機能(11点), 環境(13点)であった.
【考察】竹原らは, 認知症を持つ高齢者に対して, 文脈に即した作業や役割を支援するOTを提供することが有効であるとしている. 今回の介入では, OTRに絵を教える「先生」という役割が形成され, OTRが褒められると先生としての喜びを感じている様子がみられた. また, この経験が人と関わる事に前向きな印象をA氏に持たせたと考えられた. その結果, スタッフや他患から声を掛けられる環境の中で, 対人交流が増加していき, 笑顔が見られるようになった. それに伴い, リハビリへの意欲や, 運動機能の改善がみられたと考えられた.
【事例紹介】80歳代男性, 病前は施設入所されていた. 診断名は痙攣性てんかん重積後の廃用症候群. 急性期病院を経て12病日目に当院入院. 施設入所中より認知症があり, 転倒を繰り返しながらも, T-CANE自立していた. 入院時に誤嚥性肺炎となり, ベッド上介入の対応となった.
【作業療法初期評価】19病日目. HDS-R: 2点, MMT: 両上下肢2, やつれている様子であった. 対人交流は乏しく, 交流は単語レベルでの発話と首ふりにて行った. ADLは起居・移乗全介助, 座位保持は10分で疲労の訴えを認めた. FIM: 27点. また観察評価である人間作業モデルスクリーニングツール(以下, MOHOST)を用いて評価した. 総得点は47点で, 動機づけ(10点), 作業のパターン(6点), コミュニケーションと交流技能(7点), 処理技能(8点), 運動機能(6点), 環境(10点)であった. リハビリに対しては消極的であった.
【介入の基本方針】認知症や表出の低下があり, 目標共有は不十分であった. 介入の中で「俺には絵しかない」と発言があり, 絵を描く事に興味がある事が分かった. MOHOSTの結果より, 作業療法では作業パターン, コミュニケーションと交流技能に焦点を当て, 作業活動を用いながらアプローチをしていくこととした. また, 院内での活動的な生活が送れるよう, その都度環境設定を行うこととした.
【経過】〈絵の導入時期〉30病日~最初にOTRをデッサンで描いてもらった. すると「おじいさんの絵が描きやすい」との発言があった. そこでOTRの他の担当患者様にモデルの協力を得て, 人物画を継続した. 〈活動を継続する時期〉45病日~屋外へ行った際,「あの建築物描きたい」とあり, 描き始めた. 更に色鉛筆や絵の具を使用したいと本人から希望があり提供した. 完成した絵は, 他者との交流のきっかけ作りとして, 他者が見られる場所へOTRが掲示した. また, 「歩きたい」と希望があり, 絵とあわせて歩行練習を取り入れるようになった.〈OTRに絵を教える時期〉69病日~OTRが絵を教わる事を依頼すると快く了承して頂けた. A氏より写真を見ながらのデッサンが提案され, 絵を選び, 各々一枚ずつ描いていった. A氏は「光と影が大事」等のコツをOTRに逐一教えた. OTRの描いた絵に「光の捉え方が素晴らしい. 影を修正したら先生以上」とコメントした. 描いている際にはスタッフ, 他患も見に来られ, 交流する様子がみられた. また「自分の絵を褒められるのも嬉しいけど, あなたが褒められるともっと嬉しい」と発言があった.
【結果】95病日目. HDS-R: 17点, MMT: 両上下肢4, ADLは起居・移乗見守りFIM: 57点. MOHOST総得点75点で, 動機づけ(14点), 作業のパターン(11点), コミュニケーションと交流技能(14点), 処理技能(12点), 運動機能(11点), 環境(13点)であった.
【考察】竹原らは, 認知症を持つ高齢者に対して, 文脈に即した作業や役割を支援するOTを提供することが有効であるとしている. 今回の介入では, OTRに絵を教える「先生」という役割が形成され, OTRが褒められると先生としての喜びを感じている様子がみられた. また, この経験が人と関わる事に前向きな印象をA氏に持たせたと考えられた. その結果, スタッフや他患から声を掛けられる環境の中で, 対人交流が増加していき, 笑顔が見られるようになった. それに伴い, リハビリへの意欲や, 運動機能の改善がみられたと考えられた.