第56回日本作業療法学会

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ポスター

高齢期

[PJ-8] ポスター:高齢期 8

Sat. Sep 17, 2022 2:30 PM - 3:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PJ-8-5] ポスター:高齢期 8睡眠障害のある認知症高齢者の睡眠の特徴抽出

ベッドセンサーシステムと自己組織化マップ(SOM)を用いて

鈴木 朝香2上村 智子1 (1信州大学大学院総合医理工学研究科,2信州大学大学院総合医理工学研究科(博士課程))

【はじめに】認知障害のある高齢者の睡眠障害には,概日リズム睡眠―覚醒障害,レム睡眠行動障害,せん妄など様々な原因があり,状態も多様であるため,対象者ごとに状態を把握したケアの提供が難しく,しばしば対応に苦慮する.そして,睡眠ポリグラフィや装着型アクチグラフィといった従来の睡眠測定法では,対象者への負担が高く,計測が難しいといった課題がある.この課題解決に資する動向として,近年,非侵襲・非拘束で睡眠状態を把握するベッドセンサーシステムが施設入所者の見守り支援ツールとして普及しており,対象者の負担なく夜間睡眠の状態を把握することが可能になってきた.さらに演者らの研究によって,ベッドセンサーシステムで測定したデータを多次元の特徴量をもつデータを二次元マップにプロットし,マップ上の距離でデータの類似度を示す,自己組織化マップ(self-organizing map, SOM)で分析すれば,対象者ごとに,通常の睡眠か通常とは異なる睡眠かを弁別する可能性が示されている.
【目的】睡眠障害のある認知症高齢者の睡眠特徴の抽出に,ベッドセンサーシステムで計測したデータをSOMで分析する手法が有用であるかを調べるために,本研究では,睡眠障害のある認知症高齢者と,障害のない認知症高齢者の夜間睡眠の計測を行い,結果を比較した.
【方法】介護老人保健施設の入所者で,認知障害があり,ベッドセンサーシステム(眠りSCAN®,パラマウント社)を2か月間連続で使った人を対象とし,2ヵ月分のデータを解析した.被検者の毎晩の総睡眠時間,睡眠潜時,中途覚醒時間,離床回数を比較した.被検者間の比較には,対応のないt検定を用いた.分析にはSPSS ver.27を用い,有意水準はp<.05とした.さらに,この4変数でSOMを作成し,被検者ごとに日ごとの睡眠状態の変動を調べた.SOM作成には R Studio ver.2021.9.2.382を用いた.対象者属性として,年齢,性別,認知症高齢者の生活自立度を調べ,睡眠障害の有無は,NPI-NHの夜間行動で判定した.本研究は信州大学医倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】80歳代後半の女性(A)と70歳代前半の女性(B)の夜間睡眠を比較した.認知症高齢者の生活自立度はAがⅢ,BがⅡbであった.睡眠障害はAでは一晩に1回以上の頻度であり,Bはなしであった.睡眠時間の平均はAが199.37±96.52分,Bが648.67±57.43分,睡眠潜時は順に50.56±40.35分と12.43±10.86分,中途覚醒時間は264.37±120.23分と53.97±50.47分,離床回数は3.13±1.78回と0.37±0.87回であり,Aの方が睡眠時間や睡眠潜時が長く,中途覚醒時間が長く,離床回数が多かった(全指標でp<.01).SOMによれば,Aの方がデータのクラスター形成が不良で,日によって睡眠状態に高い変動があることが示された.
【考察】本研究では,ベッドセンサーシステムで睡眠状態を計測し,SOMでデータ分析することで,睡眠障害のある認知症高齢者では,障害のない認知症高齢者に比べて,総睡眠時間,睡眠潜時,中途覚醒時間,離床回数が不良であることに加えて,日ごとの睡眠状態の変動が高いといった事例があることが明らかになった.今回は2事例だけの比較であったが,今後は,事例を増やして,睡眠障害のある認知症高齢者の睡眠の特徴抽出に,本法が有用かを検証したいと考えている.