[PJ-9-2] ポスター:高齢期 9シングルケースABAリバーサルデザインを用いた重度認知症高齢者へのスヌーズレンの効果検証
【はじめに】認知症の人が,自らの意思で力を発揮するためには,環境調整が極めて重要になる.スヌーズレンは,認知症高齢者への非薬物介入として効果があると報告されており,感覚刺激に着目した環境調整の一つである.これまで筆者らは,重度認知症高齢者にスヌーズレンを行い,昨年は,実施記録をテキストマイニングで分析した.その結果,スヌーズレン場面では,認知症が重度でありながらも,作業療法士とともに自らの意思にもとづき,楽しみながら作業従事しており,環境調整としても有効であることを報告した.テキストマイニングは客観的な方法であるが,元のデータは実施者の主観的な記録に基づいたものである.そのため,重度認知症高齢者への環境調整としてのスヌーズレンの効果をより実証的に明らかにするために,重度認知症者のwell‐beingを測定するPositive Response Schedule(以下PRS)(T. Perrin, 1997)を用いて,行動観察を行った.その結果,有用な知見が得られたため報告する.
【方法】対象者は当施設に入居する80歳代,女性,HDS-R測定不可,BI 40点,日本版感覚プロファイル短縮版(SSP)104点(特に聴覚フィルタリング,視覚・聴覚過敏性で非常に高い),DBD13 14点であった.2021年12月~2022年1月の間,週1回スヌーズレンを実施した.そのうち3回ランダムにビデオ録画し,シングルケースABAリバーサルデザインを用いて分析した.スヌーズレン開始前をA1期,スヌーズレン実施中をB期,スヌーズレン終了後をA2期とした.ビデオ録画を各期開始から,20分ずつのビデオクリップに編集し, 2名の研究者で,録画画面を同時に評価した.PRSは,7つの従事要素と3つの感情要素から構成されており,各要素の出現頻度をカウントした.尚,本研究では,PRSを2点改変した.1点目はより精密に評価するために,測定単位を20秒から10秒に変更,2点目は,対象者の認知症の行動心理症状(BPSD)で怒りの表出が多いことを考慮し,感情要素項目の1つであるFear(恐れ)をAnger(怒り)に変更した. 2名の研究者のPRSスコアの平均一致率は98.46%であったため,研究者1名のデータを用いて折れ線グラフを作成した.統計解析にはSPSS Ver.22を使用し,χ二乗検定を行った.有意水準は0.05とした.本研究は研究者の所属機関の研究倫理委員会の承認(倫理R-元-11)を得ており,ご家族への説明と同意を得ている.
【結果】PRSの分析結果を以下に示す.従事要素スコアでは,3回ともB期,A2期とも,A1期と比較して有意に出現数が多かった(p<0.001).感情要素スコアの分析では. Happy(幸福感)の要素は3回とも,A1期は出現しなかった.B期とA2期は3回とも出現した. Anger(怒り)の要素は,B期とA2期は3回とも出現せず,A1期の1,2回目のみに出現した.
【考察】今回,シングルケースABAリバーサルデザインを用いて,分析を行った.研究者の評価者間一致率も,98%を超えるもので,信頼性が高いと考えられる.スヌーズレンでは,BPSDの一つであるAnger(怒り)がなくなり,Happy(幸福感)を得ることができた.そして,その感情は,実施後でも持続していた.理由としては,スヌーズレンによる作業従事の増大がある.作業従事が,健康とwell-beingに寄与するのは,作業療法士が共有する基本的信念である.また,スヌーズレンは,対象者に適切な聴覚フィルタリングと視覚・聴覚過敏性の改善をもたらしたと考えられる.これは,スヌーズレンがBPSDにも効果をもたらす可能性を示唆する.
【方法】対象者は当施設に入居する80歳代,女性,HDS-R測定不可,BI 40点,日本版感覚プロファイル短縮版(SSP)104点(特に聴覚フィルタリング,視覚・聴覚過敏性で非常に高い),DBD13 14点であった.2021年12月~2022年1月の間,週1回スヌーズレンを実施した.そのうち3回ランダムにビデオ録画し,シングルケースABAリバーサルデザインを用いて分析した.スヌーズレン開始前をA1期,スヌーズレン実施中をB期,スヌーズレン終了後をA2期とした.ビデオ録画を各期開始から,20分ずつのビデオクリップに編集し, 2名の研究者で,録画画面を同時に評価した.PRSは,7つの従事要素と3つの感情要素から構成されており,各要素の出現頻度をカウントした.尚,本研究では,PRSを2点改変した.1点目はより精密に評価するために,測定単位を20秒から10秒に変更,2点目は,対象者の認知症の行動心理症状(BPSD)で怒りの表出が多いことを考慮し,感情要素項目の1つであるFear(恐れ)をAnger(怒り)に変更した. 2名の研究者のPRSスコアの平均一致率は98.46%であったため,研究者1名のデータを用いて折れ線グラフを作成した.統計解析にはSPSS Ver.22を使用し,χ二乗検定を行った.有意水準は0.05とした.本研究は研究者の所属機関の研究倫理委員会の承認(倫理R-元-11)を得ており,ご家族への説明と同意を得ている.
【結果】PRSの分析結果を以下に示す.従事要素スコアでは,3回ともB期,A2期とも,A1期と比較して有意に出現数が多かった(p<0.001).感情要素スコアの分析では. Happy(幸福感)の要素は3回とも,A1期は出現しなかった.B期とA2期は3回とも出現した. Anger(怒り)の要素は,B期とA2期は3回とも出現せず,A1期の1,2回目のみに出現した.
【考察】今回,シングルケースABAリバーサルデザインを用いて,分析を行った.研究者の評価者間一致率も,98%を超えるもので,信頼性が高いと考えられる.スヌーズレンでは,BPSDの一つであるAnger(怒り)がなくなり,Happy(幸福感)を得ることができた.そして,その感情は,実施後でも持続していた.理由としては,スヌーズレンによる作業従事の増大がある.作業従事が,健康とwell-beingに寄与するのは,作業療法士が共有する基本的信念である.また,スヌーズレンは,対象者に適切な聴覚フィルタリングと視覚・聴覚過敏性の改善をもたらしたと考えられる.これは,スヌーズレンがBPSDにも効果をもたらす可能性を示唆する.