[PJ-9-5] ポスター:高齢期 9高齢者が余暇活動を行う理由と認知機能の関係
【はじめに】
高齢者の健康増進における余暇活動が注目されている.高齢者の認知症発症にはMCIや臨床前段階といった発症前の生活習慣の影響が明らかとなっている.そこで我々は高齢者が普段行う余暇活動と認知機能との関係を調べるために横断調査を実施した.
【調査方法】
対象者は,老健を利用する高齢者であり,特異的な高次脳機能障害を有さず意思疎通が行え,自分の意思で移動が可能である者とした.対象者には倫理的配慮について説明を行い,同意を得た (本研究は弘前大学大学院保健学研究科倫理委員会の承認を得て実施した:2020-033).余暇活動の評価は,実施している活動項目数と,活動理由(楽しい,目的がある,安らぐ,理由はないが何となく行う,やりたくないが仕方なく行う)について調査した.全般的認知機能はMini-Mental state Examination(MMSE)を,注意機能は Trail Making Test Japanese(TMT-J)を,前頭葉機能はFrontal Assessment Battery(FAB)を,ADLはBIを用いて評価した.初回評価時の余暇活動と認知機能の関係を分析するために,Spearmanの順位相関係数を用いた.有意水準は5%ととした.
【結果】
対象者は男性15名,女性39名の計54名であり,平均年齢は82.0±7.4歳であった.余暇活動は平均4.0±1.9個実施していた.余暇活動の活動理由としては,「楽しい」は中央値2.0(1.6)個,「目的がある」は1.5(1.4)個,「安らぐ」は1.0(1.2)個,「理由はないがなんとなく」は1.0(1.0)個,「やりたくないが仕方なく」は0.1(0.4)個であった.MMSE得点は中央値25.5(四分位範囲9.0)点,FAB得点は12.0(4.0)点であった.TMT-Jは遂行の可否で3群に分類した.遂行の可否はTMT-Aは180秒,TMT-Bは300秒の制限時間内に実施できたかどうかで判断した.TMT-A・TMT-Bともに遂行できる者が10名,TMT-Aは遂行できるがTMT-Bは遂行できない者が20名,TMT-A・TMT-Bともに遂行できない者が24名であった.BI得点は90.0(20.0)点であった.
余暇活動と認知機能の関係を分析した結果,余暇活動の項目数の多寡においてMMSE (r = 0.37, p = 0.006),TMT-J (r = 0.37, p = 0.005),BI (r = 0.44, p = 0.001) と有意な相関関係を認めた.次に,活動理由においては,「楽しい」という理由で,MMSE (r = 0.38, p = 0.005),TMT-J (r = 0.41, p = 0.002),BI (r = 0.43, p = 0.001) と有意な相関関係を認めた.さらに「目的がある」という活動理由では,MMSE (r = 0.51, p = 0.000),TMT-J (r = 0.36, p = 0.007),BI (r = 0.42, p = 0.001)と有意な相関関係を認めた.
【考察】
本調査の結果より,余暇活動に取り組む項目数が多いほど,全般的認知機能,注意機能,ADLが高いことが明らかになった.また「楽しい」や「目的がある」といった活動理由が全般的認知機能,注意機能,ADLと相関関係を示したことから,これらの活動理由が余暇活動に主体的に取り組み,余暇活動の習慣化を促進し,心身機能の維持に寄与している可能性が示唆された.このことから,作業療法士は高齢者の健康増進を図る際に対象者の活動に対する認識や実施する動機に注意を配り支援をすることが重要である.
高齢者の健康増進における余暇活動が注目されている.高齢者の認知症発症にはMCIや臨床前段階といった発症前の生活習慣の影響が明らかとなっている.そこで我々は高齢者が普段行う余暇活動と認知機能との関係を調べるために横断調査を実施した.
【調査方法】
対象者は,老健を利用する高齢者であり,特異的な高次脳機能障害を有さず意思疎通が行え,自分の意思で移動が可能である者とした.対象者には倫理的配慮について説明を行い,同意を得た (本研究は弘前大学大学院保健学研究科倫理委員会の承認を得て実施した:2020-033).余暇活動の評価は,実施している活動項目数と,活動理由(楽しい,目的がある,安らぐ,理由はないが何となく行う,やりたくないが仕方なく行う)について調査した.全般的認知機能はMini-Mental state Examination(MMSE)を,注意機能は Trail Making Test Japanese(TMT-J)を,前頭葉機能はFrontal Assessment Battery(FAB)を,ADLはBIを用いて評価した.初回評価時の余暇活動と認知機能の関係を分析するために,Spearmanの順位相関係数を用いた.有意水準は5%ととした.
【結果】
対象者は男性15名,女性39名の計54名であり,平均年齢は82.0±7.4歳であった.余暇活動は平均4.0±1.9個実施していた.余暇活動の活動理由としては,「楽しい」は中央値2.0(1.6)個,「目的がある」は1.5(1.4)個,「安らぐ」は1.0(1.2)個,「理由はないがなんとなく」は1.0(1.0)個,「やりたくないが仕方なく」は0.1(0.4)個であった.MMSE得点は中央値25.5(四分位範囲9.0)点,FAB得点は12.0(4.0)点であった.TMT-Jは遂行の可否で3群に分類した.遂行の可否はTMT-Aは180秒,TMT-Bは300秒の制限時間内に実施できたかどうかで判断した.TMT-A・TMT-Bともに遂行できる者が10名,TMT-Aは遂行できるがTMT-Bは遂行できない者が20名,TMT-A・TMT-Bともに遂行できない者が24名であった.BI得点は90.0(20.0)点であった.
余暇活動と認知機能の関係を分析した結果,余暇活動の項目数の多寡においてMMSE (r = 0.37, p = 0.006),TMT-J (r = 0.37, p = 0.005),BI (r = 0.44, p = 0.001) と有意な相関関係を認めた.次に,活動理由においては,「楽しい」という理由で,MMSE (r = 0.38, p = 0.005),TMT-J (r = 0.41, p = 0.002),BI (r = 0.43, p = 0.001) と有意な相関関係を認めた.さらに「目的がある」という活動理由では,MMSE (r = 0.51, p = 0.000),TMT-J (r = 0.36, p = 0.007),BI (r = 0.42, p = 0.001)と有意な相関関係を認めた.
【考察】
本調査の結果より,余暇活動に取り組む項目数が多いほど,全般的認知機能,注意機能,ADLが高いことが明らかになった.また「楽しい」や「目的がある」といった活動理由が全般的認知機能,注意機能,ADLと相関関係を示したことから,これらの活動理由が余暇活動に主体的に取り組み,余暇活動の習慣化を促進し,心身機能の維持に寄与している可能性が示唆された.このことから,作業療法士は高齢者の健康増進を図る際に対象者の活動に対する認識や実施する動機に注意を配り支援をすることが重要である.