[PJ-9-4] ポスター:高齢期 9合意目標の達成に向けた過程を細分化して共有した訪問介入事例
【はじめに】今回,合意目標達成に向けた過程を細分化し,対象者,介護者と共有した上で環境調整を含めた家族指導,生活場面での実動作練習を中心に訪問介入した結果,日中のポータブルトイレ(以下,Pトイレ)使用が自立し,目標を達成した事例を経験したため経過を報告する.なお,本報告に際して本人から書面にて同意を得ている.
【事例紹介】対象者は70歳代の男性である.右被殻梗塞を発症し入院していたが,帰宅願望が強く入院継続困難となり51病日に自宅退院した.介護度は要介護5であり,73病日に訪問看護からのOTが週1回40分で開始された.主介護者の妻は乳がんの既往があった.自宅は未改修で段差の多い環境だった.
【初期評価】運動麻痺は重度で,機能的自立度評価表(以下,FIM)は46点(運動18点・認知28点)であり,尿便意はあるが排泄はオムツ内失禁であった.退院後は車いすが未導入で日常生活自立度はC1であった.カナダ作業遂行測定(以下,COPM)では「一人でトイレに行ける」が重要度5,遂行度1,満足度1で挙がった.妻からは「力のいる介護が大変」と話があった.
合意目標の形成時に妻より「本当にトイレを使用できるまで回復するのか寝たきりの現状からは想像がつかない」との不安が聞かれた.そこで,目標達成への過程を共有するため,段階的な短期目標(離床機会の獲得/練習でのPトイレ使用/下衣操作中等度介助/見守り/自立)及び焦点となる問題点を紙面で提示し,訪問毎にフィードバックや修正を行うこととした.妻からも「これなら見通しが立ちそう」と良好な反応が得られ,合意目標「日中Pトイレを一人で使用できる」を12週で設定した.
【経過】〈Pトイレの導入から動作練習実施まで〉 環境調整や実動作練習を中心に介入した.介入開始から3週目に起居動作見守り,移乗動作中等度介助となったため,Pトイレを導入した.しかし,起き上がる際に麻痺側下肢がPトイレに当たり,動作が困難となった.そのため,Pトイレの位置を調整し,麻痺側下肢を管理した起き上がりを自主練習課題とした.結果,4週目にはPトイレ設置時も起居動作が可能となった.一方で,移乗動作や下衣操作には介助を要しており,妻の負担や転倒の危険を考慮し,Pトイレの使用は練習場面に留めた.
〈生活場面での使用から自立に至るまで〉 6週目には自制内のフラツキはあるが下衣操作は自己にて行えるようになり,Pトイレ使用は見守りで可能と判断して本人と妻に提案した.しかし,妻からはフラツキによる転倒への不安が聞かれ,生活場面での実用には至らなかった.そこで,立位バランス練習と動作手順の見直し,妻主導の動作練習を通した家族指導を重点的に実施し,すぐに座れる環境での下衣操作を自主練習課題とした.結果,8週目に排便時のPトイレ見守りが定着した.12週目には動作の安定性を確認し,日中のPトイレ使用が自立となり合意目標を達成した.
【結果】FIMは91点(運動58点・認知33点)となった.日常生活自立度もA1になり,福祉車両で家族との外出機会も増加した.介護度は要介護3になった.COPMの「一人でトイレに行ける」は遂行度,満足度共に5点となった.本人からは「トイレで自信がついたからもっと外に出掛けたい」,妻からは「家で面倒を見る自信がついた」との言葉が聞かれた.
【考察】本事例ではOTと本人,妻で目標設定に対する乖離が見られていたが,目標達成に向けた過程を細分化して共有し,経時的なフォローを行ったことが,乖離を解消して目標の達成に向けた協同を促進することに繋がったと考える.今回の経験から対象者のみならず介護者を含めて合意目標を形成することの重要性を再認識した.
【事例紹介】対象者は70歳代の男性である.右被殻梗塞を発症し入院していたが,帰宅願望が強く入院継続困難となり51病日に自宅退院した.介護度は要介護5であり,73病日に訪問看護からのOTが週1回40分で開始された.主介護者の妻は乳がんの既往があった.自宅は未改修で段差の多い環境だった.
【初期評価】運動麻痺は重度で,機能的自立度評価表(以下,FIM)は46点(運動18点・認知28点)であり,尿便意はあるが排泄はオムツ内失禁であった.退院後は車いすが未導入で日常生活自立度はC1であった.カナダ作業遂行測定(以下,COPM)では「一人でトイレに行ける」が重要度5,遂行度1,満足度1で挙がった.妻からは「力のいる介護が大変」と話があった.
合意目標の形成時に妻より「本当にトイレを使用できるまで回復するのか寝たきりの現状からは想像がつかない」との不安が聞かれた.そこで,目標達成への過程を共有するため,段階的な短期目標(離床機会の獲得/練習でのPトイレ使用/下衣操作中等度介助/見守り/自立)及び焦点となる問題点を紙面で提示し,訪問毎にフィードバックや修正を行うこととした.妻からも「これなら見通しが立ちそう」と良好な反応が得られ,合意目標「日中Pトイレを一人で使用できる」を12週で設定した.
【経過】〈Pトイレの導入から動作練習実施まで〉 環境調整や実動作練習を中心に介入した.介入開始から3週目に起居動作見守り,移乗動作中等度介助となったため,Pトイレを導入した.しかし,起き上がる際に麻痺側下肢がPトイレに当たり,動作が困難となった.そのため,Pトイレの位置を調整し,麻痺側下肢を管理した起き上がりを自主練習課題とした.結果,4週目にはPトイレ設置時も起居動作が可能となった.一方で,移乗動作や下衣操作には介助を要しており,妻の負担や転倒の危険を考慮し,Pトイレの使用は練習場面に留めた.
〈生活場面での使用から自立に至るまで〉 6週目には自制内のフラツキはあるが下衣操作は自己にて行えるようになり,Pトイレ使用は見守りで可能と判断して本人と妻に提案した.しかし,妻からはフラツキによる転倒への不安が聞かれ,生活場面での実用には至らなかった.そこで,立位バランス練習と動作手順の見直し,妻主導の動作練習を通した家族指導を重点的に実施し,すぐに座れる環境での下衣操作を自主練習課題とした.結果,8週目に排便時のPトイレ見守りが定着した.12週目には動作の安定性を確認し,日中のPトイレ使用が自立となり合意目標を達成した.
【結果】FIMは91点(運動58点・認知33点)となった.日常生活自立度もA1になり,福祉車両で家族との外出機会も増加した.介護度は要介護3になった.COPMの「一人でトイレに行ける」は遂行度,満足度共に5点となった.本人からは「トイレで自信がついたからもっと外に出掛けたい」,妻からは「家で面倒を見る自信がついた」との言葉が聞かれた.
【考察】本事例ではOTと本人,妻で目標設定に対する乖離が見られていたが,目標達成に向けた過程を細分化して共有し,経時的なフォローを行ったことが,乖離を解消して目標の達成に向けた協同を促進することに繋がったと考える.今回の経験から対象者のみならず介護者を含めて合意目標を形成することの重要性を再認識した.