[PK-2-3] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 2就労を目指す高次脳機能障害者が課題指向型の作業に取り組むことによるアウェアネスの変化
複線経路等至性アプローチによる分析
【はじめに】
高次脳機能障害の特徴として気づき(awareness:アウェアネス)の障害がある(山鳥,2007).自己の能力に適度な認識が得られなければ,必要な援助,助言,支援を受け入れることが難しくなる.本研究は高次脳機能障害を有しながら就労支援施設を利用している者を対象に課題指向型のプログラム実施後のインタビューからアウェアネスの変化過程を質的研究法である複線経路等至性アプローチ(Trajectory Equifinality Approach,以下:TEA)(サトウ2006)を用いてそのプロセスを明らかにすることを目的に実施した.
【方法】
本研究の対象は高次脳機能障害と診断されており就労を目的としたサービスを利用している者で研究参加に同意が得られた者とした.研究参加者に関連する課題指向型の作業を中心としたプログラムを10回実施し,毎回のプログラム終了後にインタビューガイドを用いて作業の振り返りを中心に聴取した.聴取したデータは逐語録化し,時間経過を含めて分析できる質的研究法であるTEAを分析方法として用いた.また量的データについてもアウェアネスの変化のプロセスの参考とするためプログラムの事前事後で評価した.評価項目はCOPM, AMPS, ACQ-OP,MoCA-J, GSES,EQ-5D-5Lを実施した.なお本研究はA大学倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
最終的な研究協力者は9名(男性6名,女性3名,平均40.4歳).発症からの経過は平均4.6年であった. 本研究に参加した9名の参加者のすべての逐語録を荒川ら(2013)のTEAを用いた分析法に沿って統合的なTEAを描き,アウェアネスの変化のプロセスを描いた.本研究のTEAではすべての協力者が就労支援施設を利用中であることから,必須通過点(OPP)として【仕事をするために技能を高めたい】,【就労支援施設の利用】とした.前期,中期,後期のそれぞれで分岐点を【作業活動への取り組み】,とした.最終的な等至点として『アウェアネスに応じた援助を受け就労を目指す』が描かれた.等至点の中には対象者のアウェアネスとプログラム中の援助の頻度に応じて,【予測的アウェアネスを得て自律して作業を行う】,【不十分なアウェアネスの状態で作業を行う】,【アウェアネスが得られず援助を得て作業を行う】の3つの等至点が含まれた.また,事前事後の量的データの比較ではEQ-5D-5Lの事前の自己評価と他者評価に有意差(Mann–Whitney U p<0.05)があったが,事後評価には有意差はみられなくなり,自己評価と他者評価の差異に減少がみられた,
【考察】
本研究は高次脳機能障害を有しながら就労支援施設を利用している者に課題指向型の作業を行うことによる,アウェアネスの変化過程について分析した.対象者は等至点『アウェアネスに応じた援助を受け就労を目指す』に至ることが明らかになった.中でも【アウェアネスが得られて自律して作業を行える】者は,課題そのものへの関心の強さや,プログラム中の失敗や成功に関する経験を保持し,次回のプログラム時に反映することができていた.Crosson(1989)は3ステップのアウェアネスの段階はステップアップをイメージできるが,人によってはその段階が変えられない者もいると述べている.本研究では疾患や症状,発症からの経過年数等異なる背景を有したものが研究に参加したため結果を一般化することは困難であるが,本研究で描かれたプロセスは対象者の状況に合わせた良い支援への一助になると考えられた.
高次脳機能障害の特徴として気づき(awareness:アウェアネス)の障害がある(山鳥,2007).自己の能力に適度な認識が得られなければ,必要な援助,助言,支援を受け入れることが難しくなる.本研究は高次脳機能障害を有しながら就労支援施設を利用している者を対象に課題指向型のプログラム実施後のインタビューからアウェアネスの変化過程を質的研究法である複線経路等至性アプローチ(Trajectory Equifinality Approach,以下:TEA)(サトウ2006)を用いてそのプロセスを明らかにすることを目的に実施した.
【方法】
本研究の対象は高次脳機能障害と診断されており就労を目的としたサービスを利用している者で研究参加に同意が得られた者とした.研究参加者に関連する課題指向型の作業を中心としたプログラムを10回実施し,毎回のプログラム終了後にインタビューガイドを用いて作業の振り返りを中心に聴取した.聴取したデータは逐語録化し,時間経過を含めて分析できる質的研究法であるTEAを分析方法として用いた.また量的データについてもアウェアネスの変化のプロセスの参考とするためプログラムの事前事後で評価した.評価項目はCOPM, AMPS, ACQ-OP,MoCA-J, GSES,EQ-5D-5Lを実施した.なお本研究はA大学倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
最終的な研究協力者は9名(男性6名,女性3名,平均40.4歳).発症からの経過は平均4.6年であった. 本研究に参加した9名の参加者のすべての逐語録を荒川ら(2013)のTEAを用いた分析法に沿って統合的なTEAを描き,アウェアネスの変化のプロセスを描いた.本研究のTEAではすべての協力者が就労支援施設を利用中であることから,必須通過点(OPP)として【仕事をするために技能を高めたい】,【就労支援施設の利用】とした.前期,中期,後期のそれぞれで分岐点を【作業活動への取り組み】,とした.最終的な等至点として『アウェアネスに応じた援助を受け就労を目指す』が描かれた.等至点の中には対象者のアウェアネスとプログラム中の援助の頻度に応じて,【予測的アウェアネスを得て自律して作業を行う】,【不十分なアウェアネスの状態で作業を行う】,【アウェアネスが得られず援助を得て作業を行う】の3つの等至点が含まれた.また,事前事後の量的データの比較ではEQ-5D-5Lの事前の自己評価と他者評価に有意差(Mann–Whitney U p<0.05)があったが,事後評価には有意差はみられなくなり,自己評価と他者評価の差異に減少がみられた,
【考察】
本研究は高次脳機能障害を有しながら就労支援施設を利用している者に課題指向型の作業を行うことによる,アウェアネスの変化過程について分析した.対象者は等至点『アウェアネスに応じた援助を受け就労を目指す』に至ることが明らかになった.中でも【アウェアネスが得られて自律して作業を行える】者は,課題そのものへの関心の強さや,プログラム中の失敗や成功に関する経験を保持し,次回のプログラム時に反映することができていた.Crosson(1989)は3ステップのアウェアネスの段階はステップアップをイメージできるが,人によってはその段階が変えられない者もいると述べている.本研究では疾患や症状,発症からの経過年数等異なる背景を有したものが研究に参加したため結果を一般化することは困難であるが,本研究で描かれたプロセスは対象者の状況に合わせた良い支援への一助になると考えられた.