[PK-2-5] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 2高次脳機能障害者の長期就労を支えるものは何か?
就労継続に関する認識・価値観についての質的研究
【序論】高次脳機能障害者の就労継続には個人的要因や機能的要因など様々な要因が明らかとなっているが,決定的に重要な要因はないのが現状である.要因を探るよりも,長期就労に成功している高次脳機能障害者が実際に就労継続のためにどのように考えて行動し,支えられ,何を目的に働いているのかといった認識や価値観について明らかにすることは,今後の高次脳機能障害者の就労支援において重要な視座が得られると考える.そこで本研究の目的は働く高次脳機能障害者の就労継続に関する認識や価値観を明らかにすることとした.
【方法】対象は勤続3年以上の働く高次脳機能障害者5名とした.データ収集方法は,半構造化面接によるインタビューを実施し,その内容を逐語録として作成した.分析方法は,「事例−コード・マトリックス」による質的データ分析技法(佐藤2008)を用いた.第1に,インタビューから得られた逐語録を精読し,就労継続の認識や価値観に関する語りを抽出した.第2に,語りの内容を要約し,分析の最小単位としての定性的コードをつける作業を行った.第3に,類似性のある定性的コードをより抽象度の高い焦点的コードとして整理した.第4に,縦軸を個別事例,横軸を焦点的コードとして対象者の発言内容をまとめた「事例–コード・マトリックス」を作成し,焦点的コード同士の関係性を考慮しながら概念的カテゴリーを抽出した.最後に概念的カテゴリーをもとに概念モデル化を図った.以下,概念的カテゴリーを<>,焦点的コードを【】で示す.なお,本研究は,筑波大学人間系研究倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】分析の結果,30の定性的コード,17の焦点的コードが抽出された.そして,<職業準備性>,<ワークモチベーション>,<個人因子>,<職場環境因子>,<個人−職場因子>,<仕事内容因子>,<外部支援因子>の7つが概念的カテゴリーとして生成された.就労継続のためには,その土台として,【コミュニケーションスキル】や【自己管理能力】といった<職業準備性>がまず重要という認識であった.その上で,それぞれ明確に<ワークモチベーション>があり,それを【プライベートの充実】や【合理的配慮の存在】,【上司との信頼関係】,【自己肯定感を高められる仕事】などの多様な因子が支えているという認識であった.また,<ワークモチベーション>の存在が就労継続に重要という点では共通しているが,その内容は金銭的なモチベーションだけでなく,家族やパートナー,社会貢献のためといった,それぞれ異なる非金銭的モチベーションが存在していることが明らかとなった.そして上司によるダブルチェックや口頭だけでなく紙面でのやり取りなど高次脳機能障害者に特徴的な【合理的配慮の存在】も明らかとなった.
【考察】今回,ワークモチベーションは就労継続において重要という点では共通していたが,その内容はそれぞれ全く異なるものであり,ワークモチベーションの個別性を念頭においた支援が重要である.また,障害特性に合わせた合理的配慮が行われているケースも見受けられた.そのためには,支援のレールから逸れることがないよう,診断した医療機関と就労支援機関の連携が特に求められる.また,高次脳機能障害の場合,他の障害に比べて周囲の理解を得るのが難しいだけでなく,自分自身の病識も乏しいことが特徴の一つでもあり,自己理解の促進に繋がる当事者会に参加することは働く上で重要であると考える.
【方法】対象は勤続3年以上の働く高次脳機能障害者5名とした.データ収集方法は,半構造化面接によるインタビューを実施し,その内容を逐語録として作成した.分析方法は,「事例−コード・マトリックス」による質的データ分析技法(佐藤2008)を用いた.第1に,インタビューから得られた逐語録を精読し,就労継続の認識や価値観に関する語りを抽出した.第2に,語りの内容を要約し,分析の最小単位としての定性的コードをつける作業を行った.第3に,類似性のある定性的コードをより抽象度の高い焦点的コードとして整理した.第4に,縦軸を個別事例,横軸を焦点的コードとして対象者の発言内容をまとめた「事例–コード・マトリックス」を作成し,焦点的コード同士の関係性を考慮しながら概念的カテゴリーを抽出した.最後に概念的カテゴリーをもとに概念モデル化を図った.以下,概念的カテゴリーを<>,焦点的コードを【】で示す.なお,本研究は,筑波大学人間系研究倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】分析の結果,30の定性的コード,17の焦点的コードが抽出された.そして,<職業準備性>,<ワークモチベーション>,<個人因子>,<職場環境因子>,<個人−職場因子>,<仕事内容因子>,<外部支援因子>の7つが概念的カテゴリーとして生成された.就労継続のためには,その土台として,【コミュニケーションスキル】や【自己管理能力】といった<職業準備性>がまず重要という認識であった.その上で,それぞれ明確に<ワークモチベーション>があり,それを【プライベートの充実】や【合理的配慮の存在】,【上司との信頼関係】,【自己肯定感を高められる仕事】などの多様な因子が支えているという認識であった.また,<ワークモチベーション>の存在が就労継続に重要という点では共通しているが,その内容は金銭的なモチベーションだけでなく,家族やパートナー,社会貢献のためといった,それぞれ異なる非金銭的モチベーションが存在していることが明らかとなった.そして上司によるダブルチェックや口頭だけでなく紙面でのやり取りなど高次脳機能障害者に特徴的な【合理的配慮の存在】も明らかとなった.
【考察】今回,ワークモチベーションは就労継続において重要という点では共通していたが,その内容はそれぞれ全く異なるものであり,ワークモチベーションの個別性を念頭においた支援が重要である.また,障害特性に合わせた合理的配慮が行われているケースも見受けられた.そのためには,支援のレールから逸れることがないよう,診断した医療機関と就労支援機関の連携が特に求められる.また,高次脳機能障害の場合,他の障害に比べて周囲の理解を得るのが難しいだけでなく,自分自身の病識も乏しいことが特徴の一つでもあり,自己理解の促進に繋がる当事者会に参加することは働く上で重要であると考える.