[PK-4-3] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 4脳損傷患者における自動車運転評価後の安全運転相談に関する実態調査
【はじめに】
日本作業療法士協会によると,作業療法士が自動車運転評価や支援に携わる機会は増加傾向にあり,専門職としての役割が期待されている.その一方で,道路交通法で定められる「一定の病気」に罹患した者は自動車運転の再開を希望する際には都道府県の運転免許センターで安全運転相談を受ける必要があるが,医療者が曖昧な判断で運転を許可や黙認,あるいは禁止していることが問題とされている.特に脳損傷患者の場合,外見では判断できない高次脳機能障害を有していることが多いために,運転に関する問題が見過ごされることや手続きが曖昧になっているケースが少なくない.
【目的】
当センターにおける自動車運転評価後の実態を明らかにし,安全な自動車運転再開のために必要な作業療法士の役割を検討すること.
【対象】
2020年4月〜2021年3月の期間に当センターにて自動車運転評価を受けた脳損傷患者77名を対象とした.選択基準は,年齢・性別は問わず医師から脳損傷(脳血管障害,外傷性脳損傷,低酸素脳症,脳炎,脳腫瘍)と診断されている者とした.除外基準は自記式アンケートに回答できない者とした.
【方法】
自動車運転評価は,作業療法士が神経心理学的検査及びドライビングシミュレーター評価を行い,その評価結果に基づき医学的な見地から自動車運転再開の可能性について主治医が説明を行った.自動車運転評価後約1年を目安に郵送による自記式アンケートを実施した.アンケートの調査項目は「安全運転相談の有無」「手続きに関する不明点の有無」「運転継続の有無」「運転をやめた理由」「運転を継続していた場合,運転中の危険体験の有無・内容」とした.尚,本研究は倫理審査委員会の承認を得ており,対象者には文書による同意を得た.
【結果】
郵送アンケートは77名中,2名が宛先不明で返送され35名が回答なしであり,40名の回答が得られ回収率53.3%であった(男性36名,女性4名,年齢54.10±12.19).安全運転相談を受けたと回答した者は18名であり,そのうち12名が運転を継続していた.安全運転相談を受けていないと回答した者は21名で,そのうち14名が運転を継続していた.手続きに関する不明点があると回答した者は8名で,そのうち医療機関で説明を受ける機会がなかったことを指摘した者が2名いた.運転を継続している26名のうち7名が運転中にヒヤリとした体験をしたと報告したが,違反・事故の報告はなかった.主治医が運転を控えるべきと判断した5名は全例運転を中断し医師の指示を遵守していた.
【考察】
医療機関における運転可能性に関する指示は遵守されているものの,安全運転相談を受けずに自動車運転を再開している者が14名(35%)存在した.このことから一定の病気に罹患した者が自動車運転再開するための手続きは一般的に浸透しているとは言えず,医療機関において適切なタイミングで情報提供を行う必要性が示唆された.医学的に,法的に安全な自動車運転再開を支援するために,作業療法士は対象者の自動車運転に関する評価のみならず,関連する道路交通法や自動車運転再開までに必要な具体的な手続きの説明などの系統だった教育機会の提供を行う役割を担い,運転免許センターとの綿密な連携強化を図っていくことが求められると考える.
日本作業療法士協会によると,作業療法士が自動車運転評価や支援に携わる機会は増加傾向にあり,専門職としての役割が期待されている.その一方で,道路交通法で定められる「一定の病気」に罹患した者は自動車運転の再開を希望する際には都道府県の運転免許センターで安全運転相談を受ける必要があるが,医療者が曖昧な判断で運転を許可や黙認,あるいは禁止していることが問題とされている.特に脳損傷患者の場合,外見では判断できない高次脳機能障害を有していることが多いために,運転に関する問題が見過ごされることや手続きが曖昧になっているケースが少なくない.
【目的】
当センターにおける自動車運転評価後の実態を明らかにし,安全な自動車運転再開のために必要な作業療法士の役割を検討すること.
【対象】
2020年4月〜2021年3月の期間に当センターにて自動車運転評価を受けた脳損傷患者77名を対象とした.選択基準は,年齢・性別は問わず医師から脳損傷(脳血管障害,外傷性脳損傷,低酸素脳症,脳炎,脳腫瘍)と診断されている者とした.除外基準は自記式アンケートに回答できない者とした.
【方法】
自動車運転評価は,作業療法士が神経心理学的検査及びドライビングシミュレーター評価を行い,その評価結果に基づき医学的な見地から自動車運転再開の可能性について主治医が説明を行った.自動車運転評価後約1年を目安に郵送による自記式アンケートを実施した.アンケートの調査項目は「安全運転相談の有無」「手続きに関する不明点の有無」「運転継続の有無」「運転をやめた理由」「運転を継続していた場合,運転中の危険体験の有無・内容」とした.尚,本研究は倫理審査委員会の承認を得ており,対象者には文書による同意を得た.
【結果】
郵送アンケートは77名中,2名が宛先不明で返送され35名が回答なしであり,40名の回答が得られ回収率53.3%であった(男性36名,女性4名,年齢54.10±12.19).安全運転相談を受けたと回答した者は18名であり,そのうち12名が運転を継続していた.安全運転相談を受けていないと回答した者は21名で,そのうち14名が運転を継続していた.手続きに関する不明点があると回答した者は8名で,そのうち医療機関で説明を受ける機会がなかったことを指摘した者が2名いた.運転を継続している26名のうち7名が運転中にヒヤリとした体験をしたと報告したが,違反・事故の報告はなかった.主治医が運転を控えるべきと判断した5名は全例運転を中断し医師の指示を遵守していた.
【考察】
医療機関における運転可能性に関する指示は遵守されているものの,安全運転相談を受けずに自動車運転を再開している者が14名(35%)存在した.このことから一定の病気に罹患した者が自動車運転再開するための手続きは一般的に浸透しているとは言えず,医療機関において適切なタイミングで情報提供を行う必要性が示唆された.医学的に,法的に安全な自動車運転再開を支援するために,作業療法士は対象者の自動車運転に関する評価のみならず,関連する道路交通法や自動車運転再開までに必要な具体的な手続きの説明などの系統だった教育機会の提供を行う役割を担い,運転免許センターとの綿密な連携強化を図っていくことが求められると考える.