[PK-7-2] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 7認知症のある人の日常活動と尊厳を高める家族教室の効果(第2報)
【はじめに】近年,認知症カフェなど認知症のある人の介護家族の心理的支援を行う場は増えているが,介護の態度や技術を学ぶ場は決して多くない.そのため,我々は認知症のある人の日常活動の参加と尊厳を高めるための態度や技術を学ぶ家族教室を開催し,その効果を検証してきた.第55回日本作業療法学会では,その途中経過を第1報として報告したが,今回は本研究全体の結果を第2報として報告する.
【方法】参加者は介護に困り感をもつ家族18名(65.8±11.0歳,男性5名・女性13名)で,認知症のある人(以下,当事者)22名(配偶者2名・親17名・他3名)が介護の対象だった.本教室は公共施設の会議室で週1回90分全6回開催された.第1回は成果指標の測定と個人課題の特定,第2~5回は「尊厳あるケアの態度」「介護技術」「介護意欲」「認知症予防と地域資源」について講義し,日頃の介護の工夫や個人課題について討議・演習した.第6回は成果測定であり,指標にはZarit介護負担尺度,櫻井介護肯定感尺度,カナダ作業遂行測定(以下,COPM),日本語版NPIを用いた.分析ではデータ尺度に応じてt検定,Wilcoxonの符号付順位検定を使い分けた.本研究は県立広島大学倫理委員会の承認を得て実施した(第20MH016号).
【結果】COPMで特定された個人課題は,当事者が「散歩する」「体操や運動をする」「編物をする」「夜に寝る」ことや,介護家族が「感情的にならずに関わる」「妄想時に対処する」「自分の健康管理をする」ことなどであった.参加者は学んだ態度や技術を使って,当事者の体操や編み物など作業の習慣化や声掛けの工夫に取り組んだ.討議や演習の中で,「感謝を言えるようになった」など態度面,「知識と経験者の言葉の融合によって新しい世界が見えてきた」など意欲面,「編物ができるよう環境を整えた」など技術面が変化したことが語られた.当初,涙ながらに介護の辛さや当事者への憎しみを語る家族が数名いたが,終了時にはそのような様子は見られなくなった.成果指標の平均値の変化量(標準偏差,効果量,有意水準)では,日本語版NPIは-9.4点(12.7点,0.4,p<.01),COPM遂行度は+1.5点(1.8点,0.8,p<.01),COPM満足度は+1.2点(2.2点,0.6,p<.01)だった.日本語版NPIの下位項目では,興奮,うつ,不安,無関心と脱抑制の5項目が有意に低下した(p<.05).Zarit介護負担尺度は-4.8±11.6点,櫻井肯定感尺度は+0.7±3.3点変化したが有意差は認められなかった.但し,Zarit介護負担尺度の下位項目では,「18.介護を誰かに任せてしまいたいと思うことがある」など3項目の得点が有意に低下し,櫻井肯定感尺度では「10.介護をすることで学ぶことがたくさんある」の得点が有意に向上した(p<.05).
【考察】結果より,本家族教室には認知症のある人の日常活動の参加を促し,興奮や無関心など行動心理症状を軽減する効果があることが分かった.認知症のある人の作業に焦点を当てた訪問作業療法のメタ分析(Bennettら, 2019)では,BPSDの軽減に効果があることが示されているが,本研究の結果から作業に焦点を当てた介入は訪問のみならず,集団による家族教室でも同様の効果があることが示唆された.この要因を参加者の語りや,有意差のあった成果指標から考えると,少なからず参加者が介護の時間を大切にし,尊厳ある態度や介護技術を用いて日常活動を上手に援助するようになったことが奏功したと推察される.また,一方的に講義をするだけでなく,討議や演習を通して,参加者同士で介護の工夫を紹介し合ったり,気持ちや悩みを共有し合ったりする要素や,実際に習ったことを実践する宿題が含まれていたことも一因だと考える.
【方法】参加者は介護に困り感をもつ家族18名(65.8±11.0歳,男性5名・女性13名)で,認知症のある人(以下,当事者)22名(配偶者2名・親17名・他3名)が介護の対象だった.本教室は公共施設の会議室で週1回90分全6回開催された.第1回は成果指標の測定と個人課題の特定,第2~5回は「尊厳あるケアの態度」「介護技術」「介護意欲」「認知症予防と地域資源」について講義し,日頃の介護の工夫や個人課題について討議・演習した.第6回は成果測定であり,指標にはZarit介護負担尺度,櫻井介護肯定感尺度,カナダ作業遂行測定(以下,COPM),日本語版NPIを用いた.分析ではデータ尺度に応じてt検定,Wilcoxonの符号付順位検定を使い分けた.本研究は県立広島大学倫理委員会の承認を得て実施した(第20MH016号).
【結果】COPMで特定された個人課題は,当事者が「散歩する」「体操や運動をする」「編物をする」「夜に寝る」ことや,介護家族が「感情的にならずに関わる」「妄想時に対処する」「自分の健康管理をする」ことなどであった.参加者は学んだ態度や技術を使って,当事者の体操や編み物など作業の習慣化や声掛けの工夫に取り組んだ.討議や演習の中で,「感謝を言えるようになった」など態度面,「知識と経験者の言葉の融合によって新しい世界が見えてきた」など意欲面,「編物ができるよう環境を整えた」など技術面が変化したことが語られた.当初,涙ながらに介護の辛さや当事者への憎しみを語る家族が数名いたが,終了時にはそのような様子は見られなくなった.成果指標の平均値の変化量(標準偏差,効果量,有意水準)では,日本語版NPIは-9.4点(12.7点,0.4,p<.01),COPM遂行度は+1.5点(1.8点,0.8,p<.01),COPM満足度は+1.2点(2.2点,0.6,p<.01)だった.日本語版NPIの下位項目では,興奮,うつ,不安,無関心と脱抑制の5項目が有意に低下した(p<.05).Zarit介護負担尺度は-4.8±11.6点,櫻井肯定感尺度は+0.7±3.3点変化したが有意差は認められなかった.但し,Zarit介護負担尺度の下位項目では,「18.介護を誰かに任せてしまいたいと思うことがある」など3項目の得点が有意に低下し,櫻井肯定感尺度では「10.介護をすることで学ぶことがたくさんある」の得点が有意に向上した(p<.05).
【考察】結果より,本家族教室には認知症のある人の日常活動の参加を促し,興奮や無関心など行動心理症状を軽減する効果があることが分かった.認知症のある人の作業に焦点を当てた訪問作業療法のメタ分析(Bennettら, 2019)では,BPSDの軽減に効果があることが示されているが,本研究の結果から作業に焦点を当てた介入は訪問のみならず,集団による家族教室でも同様の効果があることが示唆された.この要因を参加者の語りや,有意差のあった成果指標から考えると,少なからず参加者が介護の時間を大切にし,尊厳ある態度や介護技術を用いて日常活動を上手に援助するようになったことが奏功したと推察される.また,一方的に講義をするだけでなく,討議や演習を通して,参加者同士で介護の工夫を紹介し合ったり,気持ちや悩みを共有し合ったりする要素や,実際に習ったことを実践する宿題が含まれていたことも一因だと考える.