[PK-7-3] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 7認知症がある高齢女性の自宅における家事動作の再獲得に向けた作業療法
【はじめに】
転倒により,第4腰椎圧迫骨折を呈したA氏を担当した.本人のneedsは自宅内役割の再獲得,家族のneedsは活動量向上である.作業療法では,自宅内役割である家事動作の再獲得に向けた動作指導や,タイムスケジュール表を作成し,転倒予防に向けた自主練習や活動量向上を促した.結果,時間管理の獲得や自発的な行動が増大して活動量が向上し,家事動作の再獲得に至った.
【事例紹介】
80代前半の女性で,X年Y月の入浴時に2回転倒,翌日にも再度転倒し,体動困難となり救急受診し同日入院,受傷から10日後に回復期リハビリテーション病棟に入棟となった.
家族構成は夫,息子家族の6人暮らしで,入院前ADLとIADLは自立し,10時から各日でお風呂掃除,昼食の準備や片付け,17時の炊飯を行うこと以外はベッド臥床傾向であった.また,既往歴にパーキンソン病,うつ病があることから,頻回の転倒,周囲への興味関心の低下,活動量低下を認めた.外出の機会は少なく,週2回のデイケアと時々夫と近くの喫茶店に行くことのみであった.本報告にあたり本人と家族の同意を得ている.
【作業療法評価と計画】
初期評価(Y+10日)は,Manual Muscle Test上肢左右4下肢左右3~4,握力右21.9kg左18.5kg,Timed up&go test(以下TUG)15.02秒,Hoen&Yahrの重症度分類Ⅱ度,Functional Independence Measure(以下FIM)65点であった.改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-R)7点,Geriatric Depression Scale-15(以下GDS)13点と認知機能の低下,うつ状態を認め,意欲の低下がみられた.また,訓練時間以外はベッド臥床が多く,更衣,食事の誘導など促しが必要であった.楽しみや作業の提供目的に認知症高齢者の絵カード評価法を行ったところ,食事準備や片付け,掃除,散歩など入院前に行っていたことを重要と答え,役割の獲得の要求が強く,家族からの労いにやりがいを感じていた.
退院後の生活を見据えた際,院内での活動量が少ないことや生活習慣が構築できていないことが問題であることから,タイムスケジュール表を活用し,自発的に訓練や食事の準備ができること,活動量向上に向けた軽負荷の自主練習ができることを目標とした.プログラムとして,自宅で主に行っていた家事動作の再獲得に向けた訓練を中心に介入した.
【経過と結果】
介入初期は,自主練習方法や実施忘れもあったため,訓練時に担当者と共同で行い,自室内にカレンダーを配置してシールでの印付けを促した.開始1週間で時間管理ができ,朝夜の更衣,食事前の義歯装着や食堂への移動,訓練前にトイレを済ませ準備して待機することが可能となった.また,退院後に夫と運動を一緒にしたいという希望もあり,約束した時間以外でも意欲的に自主練習に取り組み,4週後には他患者に運動を教える場面が見られるほど活動の機会が増えた.介入後期は,自宅生活における役割の習慣化を目的にお風呂掃除,食事準備や片付け,炊飯の他に使用した物品の拭き掃除などを提供した.
最終評価(Y+50日)ではTUG11.71秒,HDS-R19点,GDS10点,FIM92点と改善がみられた.特にGDSでは生活の満足感や幸福感の向上,無力さの低下に変化を認めた.
【考察】
入院中より退院後の生活を見据え,受傷前の生活スタイルに応じたスケジュール管理を行うことで活動量が向上し他患者との交流の機会が増えた.また,作業療法場面でも役割として家事動作を提供したことが動機づけとなり,心身機能や生活能力の改善に至り,好転的な行動変容へと繋がったと考えられる.
転倒により,第4腰椎圧迫骨折を呈したA氏を担当した.本人のneedsは自宅内役割の再獲得,家族のneedsは活動量向上である.作業療法では,自宅内役割である家事動作の再獲得に向けた動作指導や,タイムスケジュール表を作成し,転倒予防に向けた自主練習や活動量向上を促した.結果,時間管理の獲得や自発的な行動が増大して活動量が向上し,家事動作の再獲得に至った.
【事例紹介】
80代前半の女性で,X年Y月の入浴時に2回転倒,翌日にも再度転倒し,体動困難となり救急受診し同日入院,受傷から10日後に回復期リハビリテーション病棟に入棟となった.
家族構成は夫,息子家族の6人暮らしで,入院前ADLとIADLは自立し,10時から各日でお風呂掃除,昼食の準備や片付け,17時の炊飯を行うこと以外はベッド臥床傾向であった.また,既往歴にパーキンソン病,うつ病があることから,頻回の転倒,周囲への興味関心の低下,活動量低下を認めた.外出の機会は少なく,週2回のデイケアと時々夫と近くの喫茶店に行くことのみであった.本報告にあたり本人と家族の同意を得ている.
【作業療法評価と計画】
初期評価(Y+10日)は,Manual Muscle Test上肢左右4下肢左右3~4,握力右21.9kg左18.5kg,Timed up&go test(以下TUG)15.02秒,Hoen&Yahrの重症度分類Ⅱ度,Functional Independence Measure(以下FIM)65点であった.改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS-R)7点,Geriatric Depression Scale-15(以下GDS)13点と認知機能の低下,うつ状態を認め,意欲の低下がみられた.また,訓練時間以外はベッド臥床が多く,更衣,食事の誘導など促しが必要であった.楽しみや作業の提供目的に認知症高齢者の絵カード評価法を行ったところ,食事準備や片付け,掃除,散歩など入院前に行っていたことを重要と答え,役割の獲得の要求が強く,家族からの労いにやりがいを感じていた.
退院後の生活を見据えた際,院内での活動量が少ないことや生活習慣が構築できていないことが問題であることから,タイムスケジュール表を活用し,自発的に訓練や食事の準備ができること,活動量向上に向けた軽負荷の自主練習ができることを目標とした.プログラムとして,自宅で主に行っていた家事動作の再獲得に向けた訓練を中心に介入した.
【経過と結果】
介入初期は,自主練習方法や実施忘れもあったため,訓練時に担当者と共同で行い,自室内にカレンダーを配置してシールでの印付けを促した.開始1週間で時間管理ができ,朝夜の更衣,食事前の義歯装着や食堂への移動,訓練前にトイレを済ませ準備して待機することが可能となった.また,退院後に夫と運動を一緒にしたいという希望もあり,約束した時間以外でも意欲的に自主練習に取り組み,4週後には他患者に運動を教える場面が見られるほど活動の機会が増えた.介入後期は,自宅生活における役割の習慣化を目的にお風呂掃除,食事準備や片付け,炊飯の他に使用した物品の拭き掃除などを提供した.
最終評価(Y+50日)ではTUG11.71秒,HDS-R19点,GDS10点,FIM92点と改善がみられた.特にGDSでは生活の満足感や幸福感の向上,無力さの低下に変化を認めた.
【考察】
入院中より退院後の生活を見据え,受傷前の生活スタイルに応じたスケジュール管理を行うことで活動量が向上し他患者との交流の機会が増えた.また,作業療法場面でも役割として家事動作を提供したことが動機づけとなり,心身機能や生活能力の改善に至り,好転的な行動変容へと繋がったと考えられる.