第56回日本作業療法学会

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ポスター

援助機器

[PL-1] ポスター:援助機器 1

Fri. Sep 16, 2022 12:00 PM - 1:00 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PL-1-2] ポスター:援助機器 1ADOCの活用状況に関するスコーピングレビュー

西川 可奈子1川口 悠子1友利 幸之介2 (1医療法人偕行会 偕行会リハビリテーション病院リハビリテーション部,2東京工科大学医療保健学部リハビリテーション学科作業療法専攻)

【はじめに】
対象者の生活やニーズに沿った目標設定により,個別性の高いリハビリテーションが促進される.その一方で,医療者と対象者間で目標が不一致となることもあるとの報告もあり,目標設定が容易ではないことが示唆される.2011年,本邦において目標設定のためのアプリである作業選択意思決定支援ソフト(Aid for Decision-making in Occupation Choice,以下ADOC)が開発された.ADOCは日常生活上の作業場面イラスト95項目の中から,対象者にとって重要な作業を対象者とOTがそれぞれ選び,協業しながら目標設定を行うiPad用アプリケーションソフトである.ADOCが開発されて10年経過し,小児版ADOCや,損傷手用のADOC,英語版も続いて開発され,論文・学会発表等でADOCを使用した報告は増えている.しかし,その研究状況や活用場面については集約されていない.今回,ADOCの活用状況について整理し,今後必要な研究ギャップを特定するために,今回スコーピングレビューを実施した.
【方法】
研究疑問は,①ADOCについてどのような研究がなされているのか,②臨床場面においてADOCはどのように用いられているのか(i.報告者の種別,ii.対象者の基本情報,iii.使用場所,iv.使用時期,v.使用方法,vi.共有した目標カテゴリーの種類),とした.本研究はスコーピングレビューのための報告ガイドライン日本語版:PRISMA-ScRに沿って実施した.検索ワードは「ADOC or"Aid for Decision-making in Occupation Choice"or作業選択意思決定支援ソフト」とし,Pubmed,google scholar,医中誌,医書.jpの4つの検索エンジンからタイトル・keyword・抄録のいずれかに検索ワードが含まれるものを抽出した(抽出日2021.12.16).その後,ハンドサーチで日本作業療法学会2010~2021,日本臨床作業療法学会2014~2021の抄録から検索ワードを含むものを抽出した.論文選択やデータの抽出は,2名が独立して実施し,意見が分かれた場合は3名以上で議論した.
【結果】
今回採用された文献数は174件であった.研究疑問①について,文献数(量的研究)は42件(学会抄録18件,論文24件),その中で開発関連研究6件の他,ランダム化比較試験やADOCによる目標設定可否の要因分析などが見られた.研究疑問②について,文献数(事例報告)は132件(学会抄録108件,論文24件)であった.i)報告者の種別:OT127件・PT5件,ii)対象者の年齢:59歳以下34件・60~79歳58件・80歳以上39件,対象疾患は脳血管疾患が61件と最も多く,ついで精神疾患17件であった.iii)使用場所:入院中の活用が104件と9割以上を占めていた.iv)使用時期:回復期病棟が58件と多かった.v)使用方法:目標設定実施後にその目標に基づいた介入や満足度変化まで記載されたものが53件,その他は目標設定と介入まで記載,残り目標設定のみ,対象者の希望の聴取のために使用されていた.vi)共有された目標:セルフケア107個,家庭生活86個,移動72個,趣味69個の順で多かった.
【結論】
過去10年間で172件の報告があったが,そのうち132件が事例報告であった.事例報告と比較すると調査研究,観察研究などの量的研究が少なく,今後の課題と認識する.また,約9割が入院中による活用であった.報告上,病院に勤務する作業療法士は6割とされており,今後地域での活用例,報告が期待される.