第56回日本作業療法学会

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ポスター

援助機器

[PL-1] ポスター:援助機器 1

Fri. Sep 16, 2022 12:00 PM - 1:00 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PL-1-4] ポスター:援助機器 1地域在住高齢者におけるICT活用状況と生活満足度の関係

宮寺 亮輔1古田 常人2村山 明彦2山口 智晴1 (1群馬医療福祉大学リハビリテーション学部 作業療法専攻,2群馬医療福祉大学リハビリテーション学部 理学療法専攻)

[はじめに] 高齢者のICT活用はコミュニケーションの増加や居場所と役割の形成などに繋がり,高齢者の意欲と生活満足度を向上する効果があると期待されている.地域在住高齢者に効果的にICT活用を普及させていくためには,ICT活用の実態に合わせた仕組みづくりが重要であるが,筆者の探索的文献レビュー(Miyadera, 2021)では,高齢者のICT活用状況とその利用背景を考察する報告が少ないことがわかっている.本研究では,高齢者のICT活用状況と生活満足度との関係を調査することを目的とする.[対象及び方法]対象は,研究の主旨を理解し同意を得た,ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が利用できる通信機器を持つ地域在住高齢者22名(76.2±5.6歳,男性11名,女性11名)であった.なお本研究は,群馬医療福祉大学倫理審査の承認を得て実施した(承認番号20A-15).調査は参加者が普段使用している通信機器で,Googleフォームで依頼し,回答の送信に至るまでの手順を対面でも説明した.調査項目は,性別,年齢等の基本属性に加えて,ICT活用状況の調査として使用機器,使用頻度,インターネットの利用目的,インターネットサービスの種類,機器操作に関する不安の程度について回答を得た.また,SNSを使ってどのような交流をしてみたいかの回答(選択式)も得た.さらに,生活満足度の評価として,WHOQOL5を用いた.ICT活用状況やSNS交流方法の希望の回答は単純集計を行い,ICT活用状況,操作不安感,WHOQOL5の関係分析にはPearson相関分析を用いた.統計学的解析ソフトはIBM Statistical Package for Social Science ver.23を使用し,統計処理における危険率は5%未満とした.[結果] ICT利用状況やSNS交流の希望に関する調査(人数割合)結果を示す.通信機器は,スマートフォン(90.9%),パソコン(27.2%)を使用しており,折り畳み式携帯電話やタブレット端末を使用する参加者はいなかった.機器の使用頻度は,「毎日少なくとも1回は利用」(77.2%),「週に少なくとも1回は利用」(18.1%)が占め,それ以下の頻度は1名のみであった.インターネットの利用サービスは,SNS(31.8%),電子メール(31.8%),個人のフォームページ・ブログ(22.7%)等が多く,インターネットの利用目的は連絡・情報交換(63.6%),情報入手(40.9%),商品・サービスの購入(31.8%)等が多くを占めた.操作不安感は「不安だ」(27.2%),「やや不安だ」(50.0%)が多くを占め,機器使用頻度と有意な負の相関がみられた(r=-0.431,p<0.05).SNS交流方法の希望は,「他者と余暇活動について会話(文章の送信)をする」(50.0%),「余暇活動の技術的な説明を聞く」(40.9%),「余暇活動で撮影した写真を配信する」(40.9%)等が多く,自身の知識や技能を他者に表出(講義や配信)することを希望するものは1名のみであった.WHOQOL5の総得点(14.6±3.2点)に関係があるものはなかったが,下位項目の「明るく楽しい気分で過ごせた」(3.9±1.1点)と機器使用頻度と中等度の相関がみられた(r=0.578,p<0.01).[考察]高齢者の機器の使用頻度は操作不安感と生活満足度に関係性が示唆された.通信機器の利用やSNSの交流に関して情報入手を主目的にする方が多いという高齢者のニーズを踏まえて,今後ICT活用の啓発方法を検討していく必要がある.