[PL-2-2] ポスター:援助機器 23Dプリンタによるスプリント作製と新たなスプリントの開発
【はじめに】
近年,3Dプリンタ技術は作業療法分野にも広く活用され,自助具やスプリント作製においては本学会でも報告されている.しかし,これらの報告については,新規性・話題性の要素も含まれ,実際に日々の臨床現場で継続的な活用できるのかは,検証が必要である.当院では2020年より3Dプリンタ技術を手外科等で使用されるスプリントに活用することができないかとシナノカメラ工業との共同研究を開始し検討してきた.本報告では,3Dプリンタによるスプリント作製,さらには新たなスプリント開発について述べていく.
【スプリント作製】
当院では年間300件のスプリント作製しており,このうち再作製が必要であったリウマチ性疾患へのリングスプリント,尺側偏位防止スプリント(硬性)と母指CM関節症の保存療法で使用するスプリントを3Dプリンタで作製した.使用機器はRaFaEl II Plus 150-HT,素材はナイロン12を使用した.
【結果】
当院OTによる3種類の作製時間は,リングスプリントで1指あたり10分未満,尺側偏位防止スプリントは変形の程度で幅があるが40分~60分,母指CM関節スプリントは20分である.一方で,3Dプリンタでは,作業に慣れているエンジニアが作製した結果,データ調整に30分,造形に2時間以上が必要であった.費用は1つあたり5000円以上であった.
【考察】
3Dプリンタで,3種類のスプリント作製した結果,共通課題に,作製時間と費用が挙げられた.この2点は,実臨床の中で,大きな障壁となり,現時点では導入・活用は難しいと思われた.しかし,尺側偏位防止スプリントは,OTが作製する場合,まったく同じスプリントを再作製する事は困難を極める.よって,3Dプリンタで再作製できることは,課題に挙げられた2点を解消することで期待できるのではと思われた.
【結論】
OTが作製するスプリントは,患者の手に合わせ,調整,修正が容易にでき,その場で装着,提供できる専門的な技術である.我々が対象とした上肢外科・リウマチ性疾患においてはOTが作製するスプリントが利便性は高く,現時点では臨床現場での3Dプリンタによるスプリント作製の導入・活用は難しいと思われた.
【今後の展望】
即座に対応・作製を求められる場合においては,従来通りOTが作製するスプリントが臨床向きと思われた.一方で,ユニバサールデザイン,手の大きさにある程度許容・作り置きができるスプリントを3Dプリンタ技術によって開発が可能でないかと考え,代表的なスプリントの1つに矢﨑考案のスパイダースプリント〝ムサシ〟を3Dプリンタで改良・作製した.その結果,形状記憶合金ワイヤーを手指伸展力に応じて,容易に取り換えることができる改良版スパイダースプリントの開発に至った.このように,手の個体差を問わず,作り置きが可能となるスプリントにおいては3Dプリンタによる作製が活用できると考え,引き続き,スプリント開発を進めていく予定である.
近年,3Dプリンタ技術は作業療法分野にも広く活用され,自助具やスプリント作製においては本学会でも報告されている.しかし,これらの報告については,新規性・話題性の要素も含まれ,実際に日々の臨床現場で継続的な活用できるのかは,検証が必要である.当院では2020年より3Dプリンタ技術を手外科等で使用されるスプリントに活用することができないかとシナノカメラ工業との共同研究を開始し検討してきた.本報告では,3Dプリンタによるスプリント作製,さらには新たなスプリント開発について述べていく.
【スプリント作製】
当院では年間300件のスプリント作製しており,このうち再作製が必要であったリウマチ性疾患へのリングスプリント,尺側偏位防止スプリント(硬性)と母指CM関節症の保存療法で使用するスプリントを3Dプリンタで作製した.使用機器はRaFaEl II Plus 150-HT,素材はナイロン12を使用した.
【結果】
当院OTによる3種類の作製時間は,リングスプリントで1指あたり10分未満,尺側偏位防止スプリントは変形の程度で幅があるが40分~60分,母指CM関節スプリントは20分である.一方で,3Dプリンタでは,作業に慣れているエンジニアが作製した結果,データ調整に30分,造形に2時間以上が必要であった.費用は1つあたり5000円以上であった.
【考察】
3Dプリンタで,3種類のスプリント作製した結果,共通課題に,作製時間と費用が挙げられた.この2点は,実臨床の中で,大きな障壁となり,現時点では導入・活用は難しいと思われた.しかし,尺側偏位防止スプリントは,OTが作製する場合,まったく同じスプリントを再作製する事は困難を極める.よって,3Dプリンタで再作製できることは,課題に挙げられた2点を解消することで期待できるのではと思われた.
【結論】
OTが作製するスプリントは,患者の手に合わせ,調整,修正が容易にでき,その場で装着,提供できる専門的な技術である.我々が対象とした上肢外科・リウマチ性疾患においてはOTが作製するスプリントが利便性は高く,現時点では臨床現場での3Dプリンタによるスプリント作製の導入・活用は難しいと思われた.
【今後の展望】
即座に対応・作製を求められる場合においては,従来通りOTが作製するスプリントが臨床向きと思われた.一方で,ユニバサールデザイン,手の大きさにある程度許容・作り置きができるスプリントを3Dプリンタ技術によって開発が可能でないかと考え,代表的なスプリントの1つに矢﨑考案のスパイダースプリント〝ムサシ〟を3Dプリンタで改良・作製した.その結果,形状記憶合金ワイヤーを手指伸展力に応じて,容易に取り換えることができる改良版スパイダースプリントの開発に至った.このように,手の個体差を問わず,作り置きが可能となるスプリントにおいては3Dプリンタによる作製が活用できると考え,引き続き,スプリント開発を進めていく予定である.