[PL-2-3] ポスター:援助機器 2座面の種類と上肢操作課題が筋活動開始時間に与える影響
はじめに
上肢のリーチ動作などの随意運動には主動作筋の活動に先行した予測的姿勢制御(Anticipatory Postural Adjustments:APA)が確認されることが報告されており,この出現には運動速度や個々の運動戦略が影響している可能性がある.我々はこれまでに,可動する座面を用い単純リーチ課題中のAPAを測定し,可動する座面は体幹の安定性に寄与しAPAが確認されないことを示した.しかし,ADLを想定した上肢操作中のAPAについては十分な見解はなく,検証していく必要があると考えている.本研究では標準座面と前傾座面を用い,操作課題中の体幹および下肢のAPA出現について明らかにすることを目的としている.
方法
1.研究対象:平均年齢23.4±4.1歳の健常成人10名とした.平均身長165.5cm±5.2cm,体重は平均61.4kg±9.1kg,性別に関しては男女5名ずつであった.対象者の利き手に関しては,右利き9名,左利き1名であった.
2.機器と課題:筋電図はテレマイオDTS EM-801(ノラクソン社)を使用した.上肢操作課題で主動作筋として活動すると思われる三角筋前部の他,僧帽筋上部,外腹斜筋,腰部脊柱起立筋,大腿直筋,外側広筋,腓腹筋外側頭とした.課題は,STEFを参考に,500gのペットボトルを前後,左右に1分間出来るだけ早く移動させる課題とした.反対側上肢は体側に垂らした.
3.座面と実験条件:標準座面
座面条件として,座面後傾角度は標準的な椅子と前傾座面を用いた.前傾座面とした座面条件では座面角度15°前傾とした.テーブル高は後部座面高さに座高の1/3を足した高さであった.
4.データ分析:対象者に両座面で操作課題を行った際の筋活動開始のタイミングと移動回数を測定した.筋活動のタイミングは,主動作筋である右三角筋前部線維の活動開始時間を0secとしたときの他の筋活動開始時間について算出し,それぞれ1回目の上肢操作に先行して活動が見られた部位ごとに人数を比較した.
本研究は本学倫理委員会での承認を得て実施した(承認番号24-2-33).
結果と考察
操作課題の成績では,標準座面得点は63.4±11.3,前傾座面得点は62.1±8.3であった.前後移動課題においては,標準座面得点は80.9±15.5,前傾座面得点は81.4±12.4であった.健常成人を対象としており,座面間,課題の方向間に大きな違いが無かった可能性がある.操作課題中の上肢動作に先行する筋活動は,頸部,体幹,下肢近位,下肢遠位の4つの部位に分けて出現人数を観察した.その結果,左右課題では,標準座面では上肢に先行する筋活動は体幹で多く見られた(6名).前傾座面では左右課題で下肢遠位での筋活動を示す人数が多かった(10名).前後課題においても標準座面では体幹筋の筋活動を示す人数は多い(9名)が前傾座面では筋肉間に大きな違いがみられなかった.このように,特に前傾座面では,左右課題において上肢動作に先行する下肢筋活動が出現する傾向が確認された.このことは,前傾という不安定要素を含む設定において,特に左右への重心動揺を減らす目的で体幹を安定させていたことが関与していると考える.
このように,各座面でのAPAは,座面傾斜と課題に伴う重心動揺方向によって異なる可能性が示された.
上肢のリーチ動作などの随意運動には主動作筋の活動に先行した予測的姿勢制御(Anticipatory Postural Adjustments:APA)が確認されることが報告されており,この出現には運動速度や個々の運動戦略が影響している可能性がある.我々はこれまでに,可動する座面を用い単純リーチ課題中のAPAを測定し,可動する座面は体幹の安定性に寄与しAPAが確認されないことを示した.しかし,ADLを想定した上肢操作中のAPAについては十分な見解はなく,検証していく必要があると考えている.本研究では標準座面と前傾座面を用い,操作課題中の体幹および下肢のAPA出現について明らかにすることを目的としている.
方法
1.研究対象:平均年齢23.4±4.1歳の健常成人10名とした.平均身長165.5cm±5.2cm,体重は平均61.4kg±9.1kg,性別に関しては男女5名ずつであった.対象者の利き手に関しては,右利き9名,左利き1名であった.
2.機器と課題:筋電図はテレマイオDTS EM-801(ノラクソン社)を使用した.上肢操作課題で主動作筋として活動すると思われる三角筋前部の他,僧帽筋上部,外腹斜筋,腰部脊柱起立筋,大腿直筋,外側広筋,腓腹筋外側頭とした.課題は,STEFを参考に,500gのペットボトルを前後,左右に1分間出来るだけ早く移動させる課題とした.反対側上肢は体側に垂らした.
3.座面と実験条件:標準座面
座面条件として,座面後傾角度は標準的な椅子と前傾座面を用いた.前傾座面とした座面条件では座面角度15°前傾とした.テーブル高は後部座面高さに座高の1/3を足した高さであった.
4.データ分析:対象者に両座面で操作課題を行った際の筋活動開始のタイミングと移動回数を測定した.筋活動のタイミングは,主動作筋である右三角筋前部線維の活動開始時間を0secとしたときの他の筋活動開始時間について算出し,それぞれ1回目の上肢操作に先行して活動が見られた部位ごとに人数を比較した.
本研究は本学倫理委員会での承認を得て実施した(承認番号24-2-33).
結果と考察
操作課題の成績では,標準座面得点は63.4±11.3,前傾座面得点は62.1±8.3であった.前後移動課題においては,標準座面得点は80.9±15.5,前傾座面得点は81.4±12.4であった.健常成人を対象としており,座面間,課題の方向間に大きな違いが無かった可能性がある.操作課題中の上肢動作に先行する筋活動は,頸部,体幹,下肢近位,下肢遠位の4つの部位に分けて出現人数を観察した.その結果,左右課題では,標準座面では上肢に先行する筋活動は体幹で多く見られた(6名).前傾座面では左右課題で下肢遠位での筋活動を示す人数が多かった(10名).前後課題においても標準座面では体幹筋の筋活動を示す人数は多い(9名)が前傾座面では筋肉間に大きな違いがみられなかった.このように,特に前傾座面では,左右課題において上肢動作に先行する下肢筋活動が出現する傾向が確認された.このことは,前傾という不安定要素を含む設定において,特に左右への重心動揺を減らす目的で体幹を安定させていたことが関与していると考える.
このように,各座面でのAPAは,座面傾斜と課題に伴う重心動揺方向によって異なる可能性が示された.