[PL-4] ポスター:援助機器 4

[PL-4-1] ポスター：援助機器 4片手で折りたたみ傘を巻き留める自助具の改良点を明確にするために

^○藤田 鈴乃¹坪 凌太²片石 彩季³柳生 祥希⁴藤嶋 聖子⁵ (1総合リハビリ美保野病院リハビリテーション科,2メディカルコート八戸西病院リハビリテーション科,3公益財団法人いわてリハビリテーションセンターリハビリテーション科,4厚生病院リハビリテーション科,5東北メディカル学院作業療法学科)

【はじめに】我々は，第55回日本作業療法学会で折り畳み傘を片手のみで巻き留める自助具を考案し実用化の可能性があることを発表した．その後，自助具を改良し3症例に使用してもらった．今回の目的は，動作分析や聴取した意見等を参考にStrengths-Weaknesses-Opportunities-Threats analysis（以下，SWOT分析）を行い，実用化に向けてのさらなる改良点を明確にすることである．
【対象と方法】対象は，脳血管障害片麻痺を呈するデイケア利用者3名（男性2名，女性1名）．麻痺側は左が2名，右が1名でBrunnstrom recovery stageは，3名とも上肢2，手指3，下肢は3が1名，4が1名，5が1名だった．いずれも重度の感覚障害や課題遂行に必要な理解力に問題はなかった．施設の倫理審査委員会で承認の上，目的及び趣旨を十分に説明し同意を得た．自助具は縦8.0㎝，横8.5㎝に切ったプラスチック板を使用し，下方2.0cmを彎曲させ傘を巻き留めるための傘置き場を作った．上方には傘を巻き留める紐（以下，ネームバンド）を挟む2.0cmの切込みを入れ，彎曲部には手持ち部分（以下，手元）についているストラップを掛ける切込みを作った．後方には吸盤を取り付けた．実験課題は，自助具を使用して折りたたみ傘を巻き留めることとし，自助具の使用方法は次のAからGとした．A自助具をガラス戸へ張り付ける．B傘を閉じて中棒を縮める．Cストラップを彎曲部の切込みに掛ける．Dネームバンドを上方の切込みに挟める．Eストラップを外す．F手元を回しながら傘生地を巻き傘置き場へ置く．Gネームバンドを切込みから外して留める．課題は，十分に練習を行った後2回の実施とし，終了後に自助具について意見を聴取した．動作画像は，iPhone（11，128GB，Apple）で記録，保存し，動作を分析した．また，自助具のさらなる改良点を明確にするために動作分析や聴取した意見等からSWOT分析及びクロスSWOT分析を行った．
【結果】自助具の使用方法CからEの手順がわかりにくいという意見があったが，全対象者ともFからGでは傘生地を細く巻くことができ，ネームバンドを一度で巻き留めることが可能だった．SWOT分析及びクロスSWOT分析から，今後の解決策として「自助具の切込み部や傘置き場に写真を貼り手順が見えるようにする」，「手順を減らした自助具を作製することによりさらに持ち運びしやすい大きさにする」，「天気が急変しても簡単に使用できることをPRする」，「手順を減らした自助具を作製する」のプランを挙げた．
【考察】通常，折りたたみ傘を巻き留める動作は，傘を操作する手と操作の状況に応じ力をコントロールしながら固定する手の両手動作で行うものである．傘生地を細く巻くことやネームバンドを一度で巻き留めることが可能だったことは，ネームバンドを挟む切込みや傘置き場が操作の状況に応じ力をコントロールしながら固定する手の役割を担ったものと推察する．SWOT分析及びクロスSWOT分析から，手順を減らした自助具を作製することが共通したプランとして挙がったことは，このプランが実用化に向けての優先度が高いものと推察する．以上のことから，ネームバンドを挟む切込みや傘置き場を活かしながら手順を減らした自助具を作製することが，実用化に向けてのさらなる改良点だと示唆する．今後はさらに改良を重ねた自助具で，自助具の片付けまでも含めた一連の動作で検討を重ねていく．